大塚労務管理事務所   お問合わせ先
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ホットニュース
《2010年》
[9月]
2010年9月1日

 読売新聞 労基署処分取消し 自殺男性の労災認定

 愛知、労災審査官

[7月]
2010年7月3日  下野新聞 実習生「過労死」認定へ 外国人では全国初 
 茨城・鹿嶋労基署
[5月]
2010年5月28日  読売新聞 障害等級 顔の傷 男女差は違憲 
 京都府地裁判決「合理的理由ない」
2010年5月26日  読売新聞 過労死、社長らに賠償命令
 京都地裁 元飲食店員側へ7800万円
[4月]
2010年4月18日  読売新聞心臓障害を考慮、労災死認定控訴審判決
 過労、健常者基準にせず
2010年4月16日  読売新聞 運転手の自殺労災認定審査官労基署処分取消し 宮城
[2月]
2010年2月17日  読売新聞 元支配人に1億9000万賠償
[1月]
2010年1月20日  読売新聞 24年前の教え子に刺殺される 「公務災害」を認定 甲府地裁
2010年1月19日  読売新聞 マクドナルト勤務 過労死に労災認定 東京地裁
2010年1月13日  下野新聞 同居息子 労働者と認定 甲府地裁 国の労災不支給取消し
《2009年》
[9月]
2009年9月10日  下野新聞 福井地裁 じん肺で自殺は労災 補償の不支給取り消す
[7月]
2009年7月28日  精神障害等の業務上外の判断基準指針の改正
 具体的出来事に違法行為の強要やひどい嫌がらせなどを追加
[3月]
2009年3月17日  退職者に対する規約型企業年金の給付減額
 減額がやむを得ないほどの経営悪化認めがたい
《2008年》
[11月]
2008年11月6日  08年版 最近の重要労働判例
[10月]
2008年10月2日  読売新聞 悪性リンパ腫 原発労災 厚労省 被爆との因果関係認定へ
[9月]
2008年9月25日  労働基準広報 自殺と上司の執拗な叱責との因果関係認める
 松山地裁・過労自殺で前田道路に3100万円の賠償命令
2008年9月17日  労働基準広報 自殺と上司の執拗な叱責との因果関係認める
 松山地裁・過労自殺で前田道路に3100万円の賠償命令
2008年9月14日  労働基準広報 自殺と上司の執拗な叱責との因果関係認める
 松山地裁・過労自殺で前田道路に3100万円の賠償命令
[8月]
2008年8月11日  労働基準広報 自殺と上司の執拗な叱責との因果関係認める
 松山地裁・過労自殺で前田道路に3100万円の賠償命令
[7月]
2008年7月18日  読売新聞 契約店長の過労死認定 すかいらーく 月80時間残業で年収200万
[6月]
2008年6月20日  下野新聞 海外出張の自殺 労災認定 「過重労働でうつ発症」
2008年6月7日  『ご注意・夏場の熱中症』
特別企画 熱中症予防対策の決め手
作業計画を十分に検討しこまめな職場巡視を心がけよう
2008年6月3日  労働基準広報 原油高・円高が7割超の企業の収益を圧迫
 厚労省・緊急ヒアリング結果まとめる
2008年6月1日  労働基準広報 睡眠時間に配慮し時間管理・走行管理を強化
 交通労災防止のガイドラインが改正
[5月]
特集W 労災  様々な状況での対応について 情報追加しました!
特集W 労災  特集W 様々な状況での対応について
2008年5月30日  労働基準広報より 行政不服審査法
2008年5月29日  労働基準広報より 青山商事 残業代に関する対応
2008年5月23日  海外出張での事例
[2月]
2008年2月18日  特集 労災V
《2007年》
[12月]
特集U 労災  特集U 〜労災保険給付のポイント〜
[11月]
特集 労災  特集 〜状況別・業務上災害認定のポイント〜
 
【2010年5月】
10.9.1 読売新聞 労基署処分取消し 自殺男性の労災認定
     愛知、労災審査官

 舘岩 木賊街道沿いの「蕎麦畑」

 

 加工食品会社(本社・東京)名古屋営業所の男性社員(当時49歳)の自殺について、愛知労働者災害補償審査官が、遺族の労災申請を認めなかった労働基準監督署の処分を取消し、労災と認める決定をしたことが31日、わかった。労基署が労災認定しなかった場合、各都道府県にある労働局の労働者災害補償審査官に審査を申し立てることができるが、遺族側代理人の弁護士によると、同審査官が労基署の処分を取消すのは珍しいという。
 弁護士によると、男性は2005年春、同営業所内の配置換えで担当地区や商品が替わったうえ、過重な販売ノルマを課せられた。自殺した同年9月には、前月より370万円多い1070万円のノルマがあり、自殺直前の4か月間の休日・時間外労働時間は約70時間〜約130時間に及んだ。

【2010年7月】
 下野新聞 実習生「過労死」認定へ 外国人では全国初 茨城・鹿嶋労基署
 外国人研修・技能実習制度で来日し、実習生として金属加工会社フジ電化工業(茨城県潮来市)で働いていた中国人の蒋曉東さん=当時(31)=が2008年に死亡したことについて、鹿嶋労働基準監督署は2日までに、違法な長時間労働による「過労死」と判断して労災と認定する方針を固めた。

 外国人研修生問題弁護士連絡会によると、外国人実習生を過労死として労災認定するのは初めて。発展途上国への技術移転などを目的とした同制度をめぐっては、最低賃金以下での労働や暴力などの不正行為が多発。制度の在り方があらためて問われそうだ。
 遺族側が昨年8月、死亡は長時間労働が原因だとして同労基署に労災申請していた。
 同労基署によると、男性は05年に研修生として来日し、同社の金属部品メッキ処理工場で勤務。08年6月、心不全により社宅で死亡した。亡くなる直前の1か月の残業時間は100時間を超えた。
 遺族代理人によると、男性は実習生になった2年目以降、残業は月約150時間に上り、休みは月2日ほどだけだった。
 同労基署は、長時間労働のほか残業代の不払いなどがあったとして、労働基準法違反の疑いで2日、同社と男性社長(66)を書類送検した。
 社長は共同通信の取材に「忙しいラインだったので、ほかの研修生を加えて交替制にしようと申し出たら、1人でやらせてくれと言っていた。健康診断でも問題はなかった」と話した。

 

    緑が美しい!!

【2010年5月】
10.5.28 読売新聞 障害等級 顔の傷 男女差は違憲
     京都府地裁判決「合理的理由ない」

 梅雨の花「アジサイ」

 

 顔などに大きな傷跡が残った労働災害の補償で、女性よりも男性が低い障害等級とする国の基準は法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、勤務先で大やけどをした京都府の男性(35歳)が障害等級に基づく等級の認定の取り消しを国に求めた訴訟の判決が27日、京都地裁であった。滝華聡之裁判長は「性別による差別的な取扱いに合意的理由はない」と国の基準を違憲と判断、認定の取り消しを命じた。
 原告側弁護団によると、障害等級の男女差を違憲とした司法判断は初めて。
 判決によると、男性は金属精錬会社に勤めていた1995年、金属の溶解作業中に溶けた銅が飛んで顔や胸などにやけどし、大きな跡が残った。2004年、労働基準監督署から、胸などに追った傷と合わせて障害等級11級と認定された。
 障害等級表では、顔などに大きな傷が残った場合、男性は12級、女性は精神的苦痛が大きいとして5等級上の7級になる。給付金は12級は年間賃金の半分弱(156日分)を一時金で受けるだけだが、7級は3分の1強(131日分)を年金として受給できる。
 滝華裁判長は判決で「社会通念上は、容貌の障害による影響に男女差があるとされ、等級の男女差に根拠がないとはいえない」とした。一方で、女性の方が顔などの障害のために就労機会を制約されるなどとした国側の主張は「具体的根拠に乏しい」と退け、「障害等級表では、年齢や職種、利き腕など障害の程度を決定する要素となっていないのに、性別だけ大きな差を設けるのは不合理で、憲法14条に違反する」と述べた。
 厚生労働省の話「今後の対応については関係省庁と協議して決定する。」

 読売新聞 過労死、社長らに賠償命令
 京都地裁 元飲食店員側へ7800万円
 全国チェーンの飲食店「日本海庄や」石山駅店(大津市)で勤務していた吹上元康さん(当時24歳)が急死したのは過重な労働を強いられたことが原因として、両親が経営会社「大庄」(東京)と平辰社長ら役員4人に慰謝料など約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。大島真一裁判長は「生命、健康を損なわないよう配慮すべき義務を怠った」として、同社と4人に対し、約7800万円の支払いを命じた。
 原告側の弁護士によると、過労死を巡る訴訟で、大手企業の役員の賠償責任を認めた司法判断は初めてという。
 判決によると、吹上さんは2007年4月に入社後、石山駅店に配属されたが、同8月11日未明、自宅で就寝中に急性心不全で死亡。死亡まで4か月間の時間外労働は月平均100時間以上で、過労死の認定基準(月80時間超)を上回り、08年12月に労災認定された。
 大島裁判長は、同社が当時、時間外労働が月80時間に満たない場合は基本給から不足分を控除すると規定していたと指摘。「長時間労働を前提としており、こうした勤務体制を維持したことは役員にも重大な過失がある」と述べた。
 閉廷後に記者会見した母の隆子さん(55)は「従業員が過労死した企業には公表義務を課すなど、社会全体で厳しい目を向けて監視していく必要があると感じた」と語った。
 大庄広報室は「まだ判決が届いておらずコメントできないが、今後は内容を十分に検討して対応する」としている。
 

  木賊(とくさ)の新緑

【2010年4月】
10.4.16. 読売新聞心臓障害を考慮、労災死認定控訴審判決
      過労、健常者基準にせず

     芝桜

 

 心臓に機能障害を持つ夫が死亡したのは、勤務先での過重な業務が原因として、妻が国を相手取り、労災を認めなかった労働基準監督署の処分取消しを求めた訴訟の控訴審判決が16日、名古屋高裁であった。
 高田健一裁判長は「障害者であることを前提に仕事をしていた場合、本人の状況が判断基準となるべきだ」と述べ、訴えを棄却した1審・名古屋地裁判決を取消し、労災を認める判決を言い渡した。
 遺族側代理人の水野幹男弁護士は「健常者を基準とするのではなく、障害や身体能力を考慮して労災との因果関係を認めた判決は初めてではないか」と話している。
 訴えていたのは、小池勝則さん(当時37歳)の妻友子さん(40)。
 判決などによると小池さんは1997年に慢性心不全を発症。2000年11月、身体障害者枠で家電量販店「マツヤデンキ」に就職した。愛知県豊川市の店舗で販売担当をしていたが、同年12月、致死性不整脈により自宅で死去。友子さんは01年11月に豊橋労基署に労災認定を申請したが認められず、05年に提訴した。
 厚生労働省は、過労死の労災認定基準として時間外や休日労働が「月45時間」を超えないよう通知しており、認定訴訟でもこれが基準となる場合が多い。小池さんの時間外労働は月33時間で、1審は「過重とは言えない」と判断した。
 高田裁判長は「主治医は立ち仕事は無理だと伝え、店側も当初は残業をさせない方針だった。死亡直前の約10日間は残業が1時間半から2時間半に達し、過重労働だった」と指摘した。
 豊橋労基署は「判決内容を検討し、労働局とも協議して対応を決めたい」とコメントした。

10.4.16.読売新聞 運転手の自殺労災認定審査官労基署処分取消し 宮城

    シダレ桜の林

 

 2008年9月に自殺した宮城県塩釜市のトラック運転手に対し、宮城労働者災害補償保険審査官が、労災補償の不支給を決めた仙台労働基準監督署の処分を取消し、業務でうつ病にかかり自殺した労災と認定したことがわかった。決定は8日付。同労基署は近く支給を決める。
 労災認定されたのは、早坂勇希さん(当時41歳)。宮城労働局などによると、早坂さんは01年から同県大衡村の運送会社で働いていたが、08年2月から深夜勤務や車中での仮眠が増えた。同8月頃にうつ病になり、翌月に運送会社の駐車場で自殺した。労災審査官は、時間外労働が月100時間前後だったことなどを重視。宮城労働局は「労災審査官が改めて労働時間を調査した結果」としている。

【2010年2月】
10.2.17 読売新聞 元支配人に1億9000万賠償
 長時間勤務による過労で意識不明の寝たきり状態になったとして、鹿児島県鹿屋市の元ファミリーレストラン支配人松元洋人さん(35)と両親が、店を経営する康正産業(鹿児島市、肥田木康正社長)に約3億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、鹿児島地裁であった。山之内紀行裁判長は、介護費用や慰謝料など約1億9000万円と、未払いの給与約730万円の支払いを命じた。
 判決によると、松元さんは2003年9月から鹿屋市内の店で支配人を務め、残業代が支給されない「名ばかりの管理職」として、接客や仕入れ、パートの募集など休日返上で働いたが、04年11月10日未明に心臓発作を起こし、低酸素脳症で意識不明となった。
 

   左から黒い雲が・・・

【2010年1月】
10.1.20. 読売新聞 24年前の教え子に刺殺される 「公務災害」を認定
      甲府地裁

 だんごが焼ける間にビール、酒で寒さを凌ぐ

 

 山梨県笛吹市で2006年3月、24年前の教え子の男(46)に自宅近くで刺殺された県立山梨高校定時制教諭岩間友次さん(当時59歳)の妻常美さん(55)が、事件が公務災害と認められないのは不当として、地方公務員災害補償基金(東京)を相手取り、処分の取り消しを求めた訴訟の判決が19日、甲府地裁であった。太田武聖裁判長は「公務と本件災害には相当因果関係が認められる」とし、処分を取り消した。
 判決では、高校時代に妄想を抱き、卒業後もつきまとってきた男に岩間さんが対応したことなども公務といえるとした。殺人罪などに問われた男は08年3月、懲役8年の判決が確定している。常美さんは06年9月、同基金山梨県支部に公務災害認定を請求したが、認められなかった。審査請求、再審査請求も棄却され、08年12月に提訴していた。
 常美さんは「夫が、卒業した生徒とも真剣に向き合って指導してきたことが認められて本当によかった」と話した。同基金訟務課は「判決内容を検討して対応を考える」としている。

10.1.19 読売新聞 マクドナルト勤務 過労死に労災認定 東京地裁
 日本マクドナルト(東京)に勤務していた長男(当時25歳)が急逝心機能不全で死亡したのは過重な業務が原因として、母親が、遺族補償給付などを支給しない処分を取消すよう国に求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。渡辺弘裁判長は、「業務の過重な負担により病気を発症し死亡した」と述べて労災を認定し、不支給処分を取り消した。
 判決によると、長男は1999年4月に同社に入社し、2000年6月から、川崎市内の店舗に勤務。同年11月7日正午から翌8日午前5時半まで働いた後、正午から再び出勤したが間もなく倒れ、死亡した。判決は「同社の業務形態は不規則なもので、正社員はサービス残業が常態化していた」と指摘。病気を発症するまでの6カ月間で、自宅でのパソコン作業を含め時間外労働が80時間を超えた月が相当あったと認定した。
 

     男 鹿 山

10.1.13 下野新聞 同居息子 労働者と認定 甲府地裁 国の労災不支給取消し

    本格的な雪景色

 

 個人事業主の父と同居し、左官業に従事する男性が労災保険法上の労働者にあたるかどうかが争われた訴訟の判決で、甲府地裁は12日、男性を同法上の労働者と認め、療養・休業補償を給付しなかった国の処分を違法として取り消した.
 男性側弁護士によると、同居の親族の労働者性が争われたのは極めて珍しい。
 山梨県北杜市の左官業中村正範さん(30)が国に対し不支給処分の取り消しを求めていた。
 判決によると、中村さんは2006年9月23日、住宅塗装作業中に2階から転落して腰の骨などを折り、甲府労働基準監督署に療養・休業補償の給付を申請。同監督署は中村さんは労働者と認められないとして不支給とした。当時、中村さんは両親と同居しながら、父が営む「中村左官工業」で兄や数人のアルバイトとともに働いていた。
 大田武聖裁判長は判決理由で、同法上の労働者と認められるかどうかは、使用者への従属性を重視するべきだと指摘。中村さんが現場を1人で任されることは原則としてなく、父か兄と作業する際はいずれかの指示を受けていたとして「使用者である父の従属下で労務を提供する関係だったことは明らか」と述べた。

【2009年9月】
09.9.10. 下野新聞 福井地裁 じん肺で自殺は労災 補償の不支給取り消す
 じん肺と認定された夫が、闘病中に「うつ病」となり、自殺したのは労災に当たるとして、福井県大野市の女性(82)が遺族補償給付金を不支給とした労働基準監督署の処分取消しを求めた訴訟の判決が9日、福井地裁であり、坪井宣幸裁判長は「自殺は業務に起因する」として女性の訴えを認め、処分を取り消した。
 じん肺と認定された患者が闘病生活から「うつ病」となり、自殺まで至った因果関係が裁判で認められたのは極めて異例。
 坪井裁判長は判決理由で「(女性の夫は)じん肺の病状の進行、死に近づきつつあるという不安や恐怖を具体的に認識していた」と指摘。心理的負荷は相当程度に重く、「うつ病」を発症させる程度に過重であったとした。
 

    夏の花 向日葵

09.7.28 精神障害等の業務上外の判断基準指針の改正
     具体的出来事に違法行為の強要やひどい嫌がらせなどを追加

町内の盆踊り お囃子の待機風景

 

 厚生労働省はこのほど、業務による心理的負荷が原因で精神障害を発病したり、それにより自殺した場合の労災保険の業務上外の判断についての指針「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(平11.9.14. 基発第544号)を改正した。今回の改正では、業務による心理的負荷の強度の評価に用いる「職場における心理的負荷表」について、評価対象となる具体的出来事として、「違法行為を強要された」「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」など、12項目が追加されている。

 

 労働環境の急激な変化に対応し見直し
 精神障害等に係る労災保険の業務上外の判断については、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(以下「判断基準」という)により、(1)対象疾病に該当する精神障害を発病していること(2)発病前6か月間に、客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある「業務による強度の心理的負荷」が認められること(3)業務以外の心理的負荷によりその精神障害が発病したと認められないこと――のすべてを満たす場合に、業務上の疾病と取り扱うこととされている。
 そして、(2)の「業務による強度の心理的負荷」については、発病前6か月間に、心理的負荷を伴うどのような出来事があったかなどについて、「職場における心理的負荷評価表」(判断指針別表1、13から5ページ参照)を用いて、その強度を判断することになっている(精神障害等に係る業務上認定の具体的方法については8〜9ページ囲み参照)。
 今回の改正は、平成11年度の判断指針策定以降、労働環境の急激な変化などにより、業務の集中化による心理的負荷、職場でのひどいいじめによる心理的負荷など、新たな心理的負荷が生ずる出来事が認識され、指針策定時の評価表に示されている「具体的出来事」への当てはめが困難な事案が増えていることをうけてのもの。

 評価対象の具体的出来事に12項目追加
 主な改正点は、別表1の「(1)平均的な心理的負荷の強度」(13、14ページ参照)に係る具体的出来事について、@違法行為を強要された(強度U) A自分の関係する仕事で多額の損失を出した(強度U) B顧客や取引先から無理な注文を受けた(強度U) C達成困難なノルマが課された(強度U) D研修、会議等の参加を強要された(強度T) E大きな説明会や公式の場での発表を強いられた(強度T) F上司が不在になることにより、その代行を任された(強度T) G早期退職制度の対象となった(強度T) H複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった(強度U) I同一事業場内での所属部署が統廃合された(強度T) J担当でない業務として非正規社員のマネージメント、教育を行った(強度T) Kひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた(強度V)――の12項目を追加し、計43項目としている。
 この追加のほか、従来の具体的出来事に係る心理的負荷をより適切に評価するために、必要な修正もおこなわれている。

 

 

 町内の各班から続々と踊り手が

   お囃子開始

 

 「親が重い病気やケガをした」を追加
 また、別表1の「(3)(1)の出来事後の状況が持続する程度を検討する視点(「総合評価」を行う際の視点)」(15ページ参照)は、これまで、「(3)(1)の出来事に伴う変化等を検討する視点」とされていたものを改正したもので、これまでの「出来事に伴う問題、変化への対処等」に加え、より的確に評価するため、「持続する状況を検討する際の着眼事項例」を追加する形に改められたもの。
 さらに、判断指針別表2「職場以外の心理的負荷評価表」(16ページ参照)についても、新たな具体的出来事として、「親が重い病気やケガをした」(強度U)が追加されている。
 このほか、判断指針で対象となる精神障害とされている「ICD-10第X章『精神および行動の障害』分類」の名称の修正も行われている。(11ページ参照)
 そこで、ここでは、主な改正点について、新たに追加された具体的出来事12項目の内容を中心にみてみる。

大人も子供も楽しみにしていた夏祭り

 

 1 新たに追加された具体的出来事12項目
 (1)「違法行為を強要された」(13ページ別表1 「出来事の累計」のA:強度U)
 (1)の違法行為の強要については、通達では、食品偽装、賞味期限の改ざん、欠陥製品の製造等、法令に違反する行為を強要された場合などの心理的負荷を評価する項目で、いわゆるコンプライアンス違反もこの項目で評価している。
 (2)「自分の関係する仕事で多額の損失を出した」(同A:強度U)
 通達では、金融機関における株取引による損失など、自分のミスによらない多額の損失を出した場合の心理的負荷を評価する項目とされている。なお、自分の重大な仕事上のミスで多額の損失を出した場合は、既存の「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」(今回改正で一部修正)の項目(強度V)で評価することになる。
 (3)「顧客や取引先から無理な注文を受けた」(同2:強度U)
 (3)は、顧客等の立場は強くなっている現在の社会情勢を反映して発生する顧客や取引先から無理な注文を受けた時点における心理的負荷を評価する項目。「顧客や取引先からクレームを受けた」という結果だけでなく、それに至る以前の心理的負荷を評価するもの。

 会議参加や公式の場での発表の強要も

 (4)「達成困難なノルマが課された」(同A:強度U)
 納期、工期、売上目標など会社の中に存在する様々なノルマについて、ノルマが課された時点における心理的負荷を評価する項目、前記(3)の項目と同様、「ノルマが達成できなかった」という結果だけでなく、それに至る以前に心理的負荷を評価することとされている。
 (5)「研修、会議等の参加を強要された」(同A:強度U)
 この項目は、担当業務と研修、会議等の内容との関連など客観的事実により強要と言えるかを着眼点として、研修や会議等の参加を強要された心理的負荷を評価することとされている。
 (6)「大きな説明会や公式の場での発表を強いられた」(同A:強度T)
 
(6)については、発表を強いられた心理的負荷を評価する項目とされている。
 (7)「上司が不在になることにより、その代行を任された」(同A:強度T)
 
上司が不在となり、本来業務と併せて上司が行っていた業務の代行を任された場合の心理的負荷を評価する項目。代行期間の長短にかかわらず、本来業務と併せて上司が行っていた業務の代行を任された場合に評価するもので、期間の長短については、同別表「(2)心理的負荷の強度を修正する視点」により、評価を行うこととされている。
 (8)「早期退職制度の対象となった」(同C:強度T)
 
(8)は、早期退職制度の対象となった場合の心理的負荷を評価する項目。なお、例えば、形式的には希望退職の形をとっていても、事実上退職の強要がある場合には、既存の具体的出来事である「退職を強要された」(強度V)により評価することになる。
 (9)「複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」(同D:強度U)
 
(9)については、それまで複数名で担当していた業務を組織再編等により1人で担当することになった場合の心理的負荷を評価する項目。仕事の責任や、役割、立場などの困難性のほか、他に相談する相手がいなくなったという点を評価するものとされている。

 

  子供会のみなさんも

  こちらは女の子達

 

 ひどい嫌がらせやいじめなども評価
 (10)「同一事業場内での所属部署が統廃合された」(同D:強度T)
 
同一事業場内で組織再編等により部課などが統廃合された場合の心理的負荷を評価する項目。職場における労働密度が過密となったことや仕事の責任・役割・立場などが困難となったことのきっかけを評価することとされている。
 (11)「担当ではない業務として非正規社員のマネージメント、教育を行った」(同D:強度T)
 
自分の属するラインに非正規社員が配置され、課長・係長など管理する立場にある者以外の者が、これら非正規社員のマネージメント、教育を行った場合の心理的負荷を評価する項目とされている。
 (12)「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(同E:強度V)
 
ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた場合の心理的負荷について評価する項目。
 なお、上司からのいじめについては、これまで、既存の具体的出来事である「上司とのトラブルがあった」(強度U)で心理的負荷の評価を行っていたが、出来事の類型「E対人関係トラブル」中の他の具体的出来事に該当する事案であっても、その内容・程度が業務指導の範囲を逸脱し、人格や人間性を否定するような言動が認められる場合には、「ひどい嫌がらせ、いじめ」等に該当することとし、この項目で評価することとされたもの。

 2 既存の具体的出来事のうち修正された7項目
 
今回の改正では、別表第1の「(1)平均的な心理的負荷の強度」に係る具体的出来事について、前記12項目を追加したほか、従来の具体的出来事に係る心理的負荷をより適切に評価するために、必要な修正も行われている。
 既存の具体的出来事のうち修正された7項目は(1)〜(6)の7項目となっている。

 明確に評価するため客観的な表記に
 (1)「重度の病気やケガをした」(別表第1「出来事の類型」の@)
 この項目は、従来は、「大きな病気やケガをした」とされていたが、評価する出来事をより明確にするため、客観的な表記とされたもの。
 (2)「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」(同A)
 
これは、「会社にとって重大な仕事上のミスをした」とされていたものを、重大なミスの程度をより明確にするために改められたもの。
 (3)「顧客や取引先からクレームを受けた」(同A)
 この項目は、既存の「顧客とのトラブルがあった」を修正したもので、「クレームを受けた」という心理的負荷を評価する項目。
 なお、「クレームを受けた」とは、例えば、受注後納品までの過程において相手方の要望に応えることができず苦情を受けた場合等の心理的負荷を評価するもので、クレームを受けたという結果に至る以前の心理的負荷については、新規追加項目の前記(3)の「顧客や取引先から無理な注文を受けた」により評価するとされている。

 

  いよいよ踊り出しました。

グランドゴルフのみなさん

 

 部下とのトラブルは負荷の強度を修正

 (4) 「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」及び「勤務・拘束時間が長時間化する出来事が生じた」(同B)
 (4)は、改正前は、それぞれ、「仕事内容・仕事量の大きな変化があった」、「勤務・拘束時間が長時間化した」とされていたもの。これらの改正は、仕事内容・仕事量の変化、或いは勤務・拘束時間が長時間化するきっかけとなった状況の事柄を出来事として捉えることにより、長時間化等の契機となった時点が明らかとなり、その後の状況が持続する程度について、より適切に評価するために修正されたもの。

 (5)「非正規社員であるとの理由等により、仕事上の差別、不利益取扱いを受けた」(同C)
  これまで、「仕事上の差別、不利益取扱いを受けた」とされていた項目について、非正規社員の増加を踏まえ、不利益の取扱いの例示を行ったもの。これまでと同様に、幅広く仕事上の差別、不利益による心理的負荷を評価する項目であることに変わりはない。
 

お囃子もますます乗ってます!

消防のみなさん暑いのにご苦労様です。

 

 (6)「部下とのトラブルがあった」(同E、心理的負荷の強度の修正)
 
(6)については、直接の上下関係の中で、職種、経験等によっては、部下との確執等が生じ上司が孤立するという、従来にはあまりなかった新たな心理的負荷が生じていることから、平均的な心理的負荷の強度が、これまでの強度TからUに修正されている。

09.3.17 退職者に対する規約型企業年金の給付減額
     減額がやむを得ないほどの経営悪化認めがたい

 お宿の雪除ツリー

 

 事件の概要
 1 Xら(N株式会社ほかグループ会社67社)は、従前、適格退職年金制度を運用していたが、平成14年4月1日に確定給付企業年金法(以下「法」という)が施行されたことから、厚生労働大臣の認証を受けて、平成16年4月1日に規約型企業年金であるN年金グループ規約型年金を創設し、制度移行した。
 2 平成17年9月13日、Xらは、厚生労働大臣に対し、本件企業年金の予定利率2.0%から1.3%に引き下げる必要があるとした上で、すでにその給付を受けている受給権者等についても、定率の給付利率(7.0%または4.5%)及び、据置利率(5.5%または3.0%)を廃止し、給付利率及び据置利率を10年国債の表面利率を基準として計算した変動利率とするキャッシュバランス制度(以下「本制度」という)の導入等を内容とする規約変更の承認申請を行った。
 3 これに対して、厚生労働大臣は、本規約の変更が法5条1項5号、法施行令4条2号にいう「受給権者等に対する給付の額を減額する場合」に該当し、規約変更の承認要件である「実施事業所の経営の状況が悪化したことにより給付の額を減額することがやむを得ないこと」(法施行規則5条2号:以下「2号要件」)、及び「給付の額を減額しなければ、掛け金の額が大幅に上昇し、事業主が掛け金を拠出することが困難となると見込まれることから、給付の額を減額することがやむを得ないこと(法施行規則5条3号:以下3号要件)」のいずれも満たさないとして、平成18年2月10日、本件処分の取り消しを求めて行政訴訟を提起した。

 事件の争点
 減額に理由要件を課すことは不合理か
  法施行規則5条2号、及び3号の各用件が法5条1項5号、法施行令4条2号による委任の趣旨に反し、無効か。
 (Xらの主張)
 受給権者等の3分の2以上の同意及び事業者が受給権者等のうち企業者に対して特別一時金を支給する措置により、受給権者が給付減額により被る経済的不利益は実質的に解消されるから受給権者の保護は手続き要件のみで十分であること、法が確定給付企業年金の終了要件として被用者年金被保険者等の過半数を代表する者等の同意という手続き要件のみ充足すれば足りることと比較し、規約変更による給付減額の場合に理由要件を要求することは不合理である。
 (Y(被控訴人=国)の主張)
 特別一時金を支給しても受給権者は資産運用のリスクを負い経済的不利益が解消されないこと、立法の経緯から特別一時金支給による給付減額を正当化できないこと、事業者は掛金の損金算入等税法上優遇策を享受しており、受給権保護の法の趣旨からすれば、理由要件を課すことは不合理とはいえず、法5条1項5号及び法施行令4条2号の委任の範囲を逸脱しない。
 「給付の額を減額する場合」に当たるか
  本件申請にかかる規約変更は、法施行令4条2号、規則5条但書、規則6条1項2号の「給付の額を減額する場合」に該当するか。
 (Xらの主張)
 本件規約変更で導入予定の本制度は、国債の利回り等の客観的指標の動向に連動し給付利率等が変動するものであるため、給付減額となるか否かを機械的な給付利率等の比較で判断できない。また、本制度は、実質的に長期的安定的な企業年金制度の維持を可能とするものであり、加入者等はかかる利益を享受し、しかも年金原資に対する付利部分のみが変動するものであるから、加入者等にとって不利益となる制度ではない。したがって、本制度の導入は、法施行令4条2号、規則5条但書、規則6条1項2号の給付減額には該当しない。
 (Yの主張)
 確定給付企業年金の規約変更が給付減額に該当するかは、定量的な基準を設けて判断する必要があるところ、法令解釈通知(平成14年発第0329008号厚生労働省年金局長通知、平成15年発第0530001号厚生労働省年金局長通知等「確定給付企業年金法並びにこれに基づく政令及び省令について(法令解釈)」)に従い、将来支払われる年金の給付額の現在価値を給付設計の変更前後で比較し、変更後に総給付額が減少する場合、一部の加入者または受給権者等の給付価値が給付設計の変更後に減少する場合、加入者または各受給権者等の最低積立基準額が給付設計の変更後に減少する場合のいずれかに該当すると判断すべきである。その際、将来の変動に不確実性を伴う指標の見込値の設定に際して恣意性を排除し、統一的な取扱いを定めるためには、当該指標の中期的な実績値を基にした指標を適用し、加入者等が不利益を被る蓋然性の高低を測ることが合理的であるから、上記の総給付現価、または最低積立基準額は、法令解釈通知が定める基準に従い、当該指標の直近5年間の実績値の平均値を当該指標の見込額として計算すべきであるとし、本件の場合、給付減額に該当することは明らかである。
 

 宿泊したホテルの玄関

部屋から見える夕暮れの富士山

 

 制度維持困難なほどの経営状況の悪化か
 3
 本件申請にかかる規約変更は、同法施行規則5条2号の要件を満たすか。
 (Xらの主張)
 そもそも、手続き要件及び理由要件は一般に自社年金において、給付減額の必要性と給付減額の相当性によってその有効性を判断するいわゆる「自社年金の不利益変更法理」について規定したものであり、2号要件の「実施事業所の経営の状況が悪化したこと」は、給付減額の必要性に関する要件を定めたものであり、著しい経営等の悪化まで意味するものではなく、制度の設計当初から見直しまでの財務内容の推移、経営環境の変化、経営改善及びその実施経緯、将来見通しなど、財務上の数値に反映されない要因を含めて総合考慮し、従来の給付水準を維持することが適当ではなく、見直しの経緯として合理性が認められる程度に経営の状況が悪化したと認められれば足りる。
 また、「給付の額を減額することがやむを得ないこと」とは、「給付減額の相当性」に関する要件を定めたものと考えられ、その際、規則6条1項が定める手続き要件を充足したことを、最大限に尊重すべきである。
 本制度は本件適格退職年金の加入者と受給権者との均衡を保つためのものであり、固定的給付利率のうち市場金利に比べて高額な付利部分のみを変動させるに過ぎず受給権者の生活に深刻な影響を与えるものではなく、原告等は受給権者等に対し十分な説明を行い、同意撤回の機会を与えた上で同意を取得しており、受給権者等の同意が法定の3分の2を超える86.7%に達していることからすれば、給付減額の相当性要件である「給付を減額することがやむを得ない。」に該当する。
 2号要件は、近い将来に予測される経営状況の悪化の程度と減額対象者が受給権者か、未だ受給権を取得していない現職の加入者かという処分時の事情を総合考慮して判断すべきであり、受給権者等の給付減額が許容されるのは、実施事業所が現に債務超過状態の場合や、実施事業所の当期純利益が連続して赤字である場合等年金制度の維持が困難なほど著しく経営状況が悪化している場合に限られる。むしろ法令は手続き要件と別個に理由要件を定めており、「実施事業所の経営状況が悪化したこと」を原因として「給付減額がやむを得ない」といえるかを判断すべきである。
 掛け金上昇により拠出困難と見込まれるか
  本件申請にかかる規約変更は、同法施行規則5条3号の要件を満たすか
 (Xらの主張)
 3号要件は、「自社年金の不利益変更法理」の給付減額の必要性に関する要件であると考えられ、事業主による掛け金の拠出が困難になると見込まれるため、従来の給付水準を維持することが適当ではなくその見直しに合理性が認められる程度の掛け金額の上昇が認められれば足り、Xらが制度導入を決定した平成15年の再計算時点において、仮に制度導入をしなかった場合の掛け金の推移から、事業主の掛金拠出が困難となるかを判断すべきである。
 (Yの主張)
 3号要件は、過去の掛け金額の実績及び将来の掛金額の見込、掛金額の上昇要因、給付の減額幅、給付減額を回避する方策の検討状況等、処分時の事情を総合的に判断されるべきであり、受給権者等の給付減額は、年金制度廃止の事態を回避する事前の策として給付額減額がやむを得ないと認められる場合に限られる。

 解説 厚生労働大臣の不承認処分取り消しを請求
 1
 規約変更の理由要件の有効性等が争われた初めての裁判例
 本件は、規約変更申請を不承認とした厚生労働大臣の処分の当否が問題となったものであり、規約変更にかかる理由要件の有効性、及び老犬該当性が争われたはじめての裁判例として異議があるが、キャッシュバランス制度の導入の是非や立法の経緯や受給権者保護を重視して理由要件に厳格さを要求したことについては、年金制度を長期的安定的に運営する必要性において、議論の余地がある。
 経営悪化、掛金拠出困難等に該当するか
 2 各適用法令の関係について
 @
  法6条1項によると、規約の変更は厚生労働大臣の承認が原則的要件であるとし、法6条2項によれば、規約変更申請は、実施事業所に使用される被用者年金被保険者の過半数労働組合、または当該被用者年金被保険者の過半数の代表者の同意を要件とする。
 A  厚生労働大臣が法6条1項の規約変更を承認するためには、法5条1項各号の要件の充足が必要である(法6条4項、5条1項。)
 B  本件で問題となる法5条1項5号(「その他の政令で定める要件」)は規約の変更承認要件を政令に委任しており、法施行令4条2項は加入者及び加入者であった者の確定給付企業年金の給付額の減額を内容とする規約変更をする場合には、「厚生労働省令で定める理由」(理由要件)がある場合に、「厚生労働省令で定める手続」(手続き要件)を経て行うと規定する。
 C  上記理由要件として、規則5条但書では、同条2号要件、または3号要件を定める。
 D  上記手続き要件として、規則6条1項1号は、規約の変更につき、加入者の3分の1以上で組織する労働組合がある場合はその同意(同1号イ)、または、加入者の3分の2以上の同意(同1号ロ)のいずれかの同意を得ることを定め、さらに受給権者等の給付額を減額する場合には、給付減額について受給権者の3分の2以上の同意を得るとともに(規則6条1項2号イ)、受給権者等のうち希望者に対し、特別一時金の支給その他の必要措置を講ずるように定める(同2号ロ)。
 E  本件の規約変更については、2号要件、或いは3号要件に該当するか、及び両要件定める規則5条2号、3号が同法3条1項5号、施行令4条2号の委任の趣旨に反する過剰規制かが問題となった。
 

 河口湖のケーブルに乗りカチカチ山からの富士山

 露天風呂の壁に何故か「一生感動」?

 

 判決の要旨
 一審(東京地方裁判所 平成19年10月19日判決)
 争点1について
 @  既に具体的に発生した受給権について給付減額を実施する規約の変更については、「企業の自主性、労使の合意のみに委ねるのではなく、加入者等の受給権保護のために必要な定めを置くことは法の趣旨に沿う」。また、事業主の積立義務(法59条、63条)「を規定しても容易に規約を変更することが可能とすれば、受給権者保護を図ることはできないのであって、法施行令4条2項は、このような趣旨を踏まえ、『事業の計測が困難となることその他の厚生労働省で定める理由がある場合』という要件をおいたものと思われる。」そして施行令4条2号の委任を受けて定められた規則5条2号及び3号の内容は、「施行令4条2号の内容をより具体化したものであって、文言上は施行令4条2号の委任を逸脱したとは見受けられない。」
 A  立法経緯として、給付減額の要件につき、厚生年金基金の取扱いを基本的に踏襲し、政省令で基金設立許可の基準通知が定める要件と同様の要件を定めた設定を置くことが想定され、手続き要件のみならず、2号要件、3号要件と同様の理由要件が詳細に定められていた。
 B  特別一時金措置だけでは給付減額による受給権者等の経済的不利益は解消しがたい。
 C  確かに法は、確定給付企業年金制度の終了につき過半数代表組合の同意等を要件とし理由要件を課していないが、その趣旨は、一般に給付額の減額を含めて企業年金制度の終了回避の方策を尽くしてもこれを回避できないときに行われるものであり、労使の最終的合意により企業年金制度終了を選択するならばこれに委ねるものであると解されるところ、企業年金存続中の給付額の減額は、その個別的な内容如何によっては、既に退職した受給権者と現職従業員との間の利害、或いは受給権者内部での利害が対立することが十分あり得るのであり、手続要件だけでは受給権者の保護が不可能であることから、各趣旨目的に応じた用件が設けられたのは当然であり、給付額減額の場合にのみ理由要件を課しても何ら不合理ではない。したがって、規則5条2号、及び3号の要件を定めることは法の委任及び施工令の再委任の範囲を超えるものではない。

 争点2について
 @
  「給付利率や据置利率の引き下げによる結果、受給権者等が受け取る給付額が現実に減額となるのであれば、それがたとえ少数の受給権者等に関するものであったとしても、『給付の額を減額する』という要件に該当する。」
 A  「本件規約変更によって、…本件処分時に現行の7.0%の給付利率が適用される受給権者にとって、…現状維持又は給付減額のいずれかとならざるを得ない。…」すなわち、「例えば直近5年間(平成13年から17年)の10年国債の表面利率の3年平均に0.5%を加えた率(指標)の平均値は約1.98%であり、本件申請時の指標の予測値として平成17年度及び18年度が1.7%、平成19年度が2.0%、平成20年度が3.2%との見通しであったことが認められる。そうすると、給付利率につき経過措置を考慮しても、本件申請に係る経過措置を考慮しても、本件申請に係る規約変更によって、給付利率が大幅に引き下げられることは確実であった。…以上によれば、本件申請に係る規約変更は施行令4条2号、規則5条但書、規則6条1項2号に定める『給付の額を減額する』に該当する。」
 争点3について
  「…立法過程における議論等を踏まえて…2号要件が設けられたものと解される。そして、…受給権者等については、現役の加入者と異なり、既に受給権が具体的に発生し年金が生活の基盤の一部となっていること、加入者であれば雇用の確保や給与等の水準の改善等で給付減額分の利益の回復が可能であるのに対し、受給権者の場合にはこれが期待できないことに鑑みれば、…受給権者等に対する給付減額が許容されるためには単に経営が悪化しさえすれば足りるというのではなく、母体企業の経営状況の悪化などにより企業年金を廃止する自体が迫っている状況下でこれを避けるための事前の策として「給付の額を減額することがやむを得ない」と認められる場合に限られると解するのが相当である。」
  「Xは、約1000億円前後の当期利益を継続的に計上し、約600億円程度の配当を実施していたものであるから、本件処分時において、『経営の状況が悪化した』とは到底認められず」、企業年金制度を廃止する事前の策として『給付の額を変更することがやむを得ない』とはいえず」、2号要件を満たさない。
 

 夕食の会場、仲居さんがとても親切でした!

 鮑の踊り焼き 絶品です。

 

 争点4について
 @
  前述した立法経緯を踏まえるならば、「予定利率を2.0%から1.3%に引き下げることにより生ずる年約168億円の掛金上昇額(平成17年度から21年度までの単年度平均)は、平成17年度の業績予測に基づく数値と比べても十分に利益の中から拠出可能であり、また平成14年度、15年度、16年度の利益もこの掛金上昇額を相当程度上回っており、このようなXにおける収益の傾向が、上記の掛金上昇が続く平成21年度までの間に大幅に減益となり、掛金額が上昇したとしても、『事業主が掛金を拠出するのが困難になると見込まれる』ものであったとは到底認めることはできない。」「なお、…本件企業年金における実際の運用利回りは、平成15年度が9.3%、平成16年度が5.2%いずれも時価利回り。平成17年度は17.12%であって、上記の引き下げ前の予定利率である2.0%はもとより、本件適格退職年金を実施していた平成15年の引下げ前の予定利率3.0%をもはるかに上回る利率で推移して」おり、「上記の予定利率の引き下げは、実際の利回りを踏まえて行われたものとは到底認められ」ず、予定利率の引き下げを行う合理的な理由が」なく3号要件を満たすとは到底認められない。

 結論 原告の請求をすべて棄却した。
 控訴審(東京高等裁判所 平成20年7月9日判決)

 一審判決を一部追加し、控訴人Xらの控訴すべてを棄却し一審判決を維持した。主な追加部分を記載する。
 争点1について
 「確定給付企業年金に係る給付、掛金及び積立金について税法上の措置(法92条、法附則19条〜34条)があること」も考慮すれば、事業主が確定給付企業年金制度を容易に終了させるとはいえないとした。
 争点2について
 一審の判決理由に同じ
 争点3について
 Xらが規則6条1項の手続き要件の充足を2号要件該当性判断の際に、最大限尊重すべきと主張したのに対し、理由要件該当性を判断する上で、規則6条の手続き要件をもってかえることは、法の趣旨及び規則5条と6条の関係の独立性を損なうとし、2号要件の定義についても一審判決を維持してXの経営の状況がそれほど悪化したとは認められないとした。
 争点4について
 給付減額(給付水準の引下げ)の場合には客観的な合理性や相当性が必要であり、本件はいずれも認められないとした。
 

霊峰太鼓お演奏がありました。

【2008年9月】
08.11.7 08年版 最近の重要労働判例
 QC活動は労働時間で心臓死は業務上
 豊田労基署長事件(平19・11・30  名古屋地裁)

 ●事件のあらまし
 
工場内の詰所において、交代勤務の申し送り事項を記入中に、脳血管疾患及び虚血性心疾患を発症し、意識を失って病院に搬送され、心肺停止状態となってその後死亡した労働者の妻が、死亡は業務に起因するとして、労災保険の療養補償給付、遺族補償年金及び葬祭料を請求したところ不支給処分とされた。
 妻はその後、労災保険審査官に審査を請求したが、棄却され、労働保険審査会も、3カ月以上経過しても裁決を出さなかったことから、各処分の取り消しを求めて訴えたもの。

 

   紅葉も終わり冬支度

 枯葉がまだ少し残っている。

 

 判決は、パソコンによる労働時間の記録については「Bが通常の処理方法で必要と認められるであろう作業時間を想定して入力したものであって、作業に費やした実際の時間を示すものではなくこれにAが確認印を押捺した趣旨も同様のものと推認されるから、これらの点は実際の労働時間の認定資料としては直ちには採用できない」として認めず、在社時間数から、法定労働時間数と休憩時間を多めに1時間30分控除して算出した106時間45分を時間外労働として認定した。
 その上で、Aの業務状況について「過重なもので、本件発症の原因となるものであったから、上記素因等をその自然の経過を超えて増悪させ本件発症に至らせる要因となり得るものというべきである」として相当因果関係を認めた。
 争点となった「小集団活動」などについては、「創意工夫提案及びQCサークル活動は、本件事業主の事業活動に直接役立つ性質のものであり、また、交通安全活動もその運営上の利点があるものとして、いずれも本件事業主が育成・支援するものと推認され、これにかかわる作業は、労災認定の業務起因性を判断する際には、使用者の支配下における業務であると判断するのが相当である。EX会の活動については、これも本件事業主の事業活動に資する面があり、役員の紹介などといった一定の限度でその活動を支援していること、その組織が会社組織と複合する関係になることなどを考慮すると、懇親会等の行事への参加自体は別としても、役員として、その実施・運営に必要な準備を会社内で行う行為については上記と同様業務であると判断するのが相当である」と示した。なお、EX会″というのは、エキスパート(従前の班長の職制)が自動的に会員となる団体をいう。

 ●判決要旨
 
本件事業主は、Aの勤怠管理をBが残業時間等の所定事項をパソコンに入力することにより行っていたものであるが、パソコンに入力されたAの残業時間は、Bが、通常の処理方法で必要と認められるであろう作業時間を想定して入力したものであって、作業に費やした実際の時間を示すものではなく、これにAが確認印を押捺した趣旨も同様のものと推認されるから、これらの点は実際の労働時間の認定資料としては直ちには採用できないし、前記認定・判断を左右するものでもない。

 原告は、小集団活動が業務であり、これに要した時間を労働時間とすべきであると主張するが、具体的にいつどの程度の時間を要したのかは、ごく一部を除き明らかでなく、他方、被告は、一部を除きこれが業務ではなく、これに要した時間を労働時間とすべきではないと主張するが、同様に積極的にいつどの程度の時間を費やしたからこれを労働時間から控除すべきであると主張するものではない。また、仮に、これが前記認定の労働時間中に行われたとしても、前記のとおり上司であるBに管理され、その命令で業務に従事する可能性があった以上、労災認定上は、本来の業務の手待時間としてその労働時間性を肯定することが相当である。

 創意工夫提案及びQCサークル活動は、本件事業主の事業活動に直接役立つ性質のものであり、また、交通安全活動もその運営上の利点があるものとして、いずれも本件事業主が育成・支援するものと推認され、これにかかわる作業は、労災認定の業務起因性を判断する際には、使用者の支配下における業務であると判断するのが相当である。EX会の活動については、これも本件事業主の事業活動に資する面があり、役員の紹介などといった一定の限度でその活動を支援していること、その組織が会社組織と複合する関係にあることなどを考慮すると、懇親会等の行事への参加自体は別としても、役員として、その実施・運営に必要な準備を会社内で行う行為については上記と同様に業務であると判断するのが相当である。

 Aは、本件災害直前の平成14年2月9日に発生した不具合を処理するに際して、後工程のCLらから強い口調で叱責され、普段とは異なって、自らで事態を収拾できずに、Bに助けを求めるなどしたものであるところ、かかる本件災害直前の不具合対応は、普段の不具合対応との違いに照らせば、Aに対して、相当程度に強い精神的ストレスをもたらしたと推認できる。
 このように疲労の蓄積にとって最も重要な要因である労働時間に着目すると、発症前1カ月間に、1日5時間程度の時間外労働が継続し、発症前1カ月おおむね100時間を超える時間外労働が認められる場合には、特に著しい長時間労働に継続的に従事したものとして、業務と心室細動などの致死性不整脈を成因とする心臓突然死を含む心停止発症との関連性は強めるものであり、逆に休日が十分確保されている場合は、疲労は回復ないし回復傾向を示すものである。

 Aは、量的及び質的にも過重な業務に従事して疲労を蓄積させた上、本件災害直前において極度に強い精神的ストレスを受けたものと認められ、Aが従事した業務は、心室細動などの致死的不整脈を成因とする心臓突然死を含む心停止発症の原因となるものであったということができる。
 
 

 

   枯葉と笹の葉の緑

 里に降りて来た紅葉、銀杏

 

 職長業務あっても一人親方に労働者性ない
 藤沢労基署長事件(平19.6.28最一小判)
 ●事件のあらまし
 
 マンション建設現場で、大工として稼働していた者が、内装工事中に負傷した。労災保険の療養補償給付と休業補償給付を請求したところ、労災保険法上の労働者ではないので、支給しない旨の処分を受けた。そのため、その処分の取り消しを求めて争った事件。
 一審判決は、労災保険法の労働者の判断について、昭和60年12月19日付け労働基準法研究会報告「労働基準法の「労働者」の判断基準について」及び平成8年同研究会が労働契約法制部会労働者性検討専門部会による「建設業手間請け従業者についての労働者性の判断基準に関する報告」によって検討し、その結果、「原告がB木材の指揮命令を受けておらず、労働者性を認めることはできない」と判示した。
 二審判決も「控訴人ら内装大工は、自らの能力に応じて仕事の段取りを工夫し、短い日数で多くの報酬を得ることができ、さらに、報酬の配分についても仲間内で取り決めることが可能であったことが明らかである」として、「使用従属関係と労務提供に対する賃金の支払い関係のいずれについても、その存在を肯定することできず」として労働者性を否定した。
 本件最高判決も「上告人が職長の業務を行い、職長手当の支払を別途受けることとされていたその他所論の指摘する事実を考慮しても、上記の判断が左右されるものではない」として上告を棄却した。

 ●判決要旨
  
 上告人は、B木材からの求めに応じて上記工事に従事していたものであるが、仕事の内容について、仕上がりの画一性、均質性が求められることから、B木材から寸法、仕様等につきある程度細やかな指示を受けていたものの、具体的な工法や作業手順を選択することができた。
 上告人は、作業の安全確保や近隣住民に対する騒音、振動等への配慮から所定の作業時間に従って作業することを求められていたものの、事前にB木材の現場監督に連絡すれば、工期に遅れない限り、仕事を休んだり、所定の時刻より後に作業を開始したり所定の時刻前に作業を切り上げたりすることも自由であった。
  
 B木材と上告人の報酬の取り決めは、完全な出来高払いの方式が中心とされ、日当を支払う方式は、出来高払いの方式による仕事がないときに数日単位の仕事をするような場合に用いられていた。前記工事における出来高払いの方式による報酬について、上告人ら内装大工はB木材から提示された報酬の単価につき協議し、その額に同意した者が工事に従事することとなっていた。上告人は、いずれの方式の場合も、請求書によって報酬の請求をしていた。上告人の報酬は、B木材に従業員の給与よりも相当高額であった。
 上告人は、一般的に必要な大工道具一式を自ら所有し、これらを現場に持ち込んで使用しており、上告人がB木材の所有する工具を借りて使用していたのは、当該工事においてのみ使用する特殊な工具が必要な場合に限られていた。
 

 庭の「目薬の木」の紅葉

夜明け、道路予定地、整理され、残ったケヤキが淋しそう。

 

 上告人は、B木材の依頼により、職長会議に出席してその決定事項や連絡事項を他の大工に伝達するなどの職長の業務を行い、職長手当の支払いを別途受けることとされていたが、上記業務は、B木材の現場監督が不在の場合の代理として、B木材から上告人ら大工に対する指示を取り次いで調整を行うことを主な内容とするものであり、大工仲間の取りまとめ役や未熟な大工への指導を行うという役割を期待して上告人に依頼されたものであった。
 
 以上によれば、上告人は、前記工事に従事するに当たり、C工務店はもとより、B木材の指揮監督の下に労務を提供していたものと評価することはできず、B木材から上告人に支払われた報酬は、仕事の完成に対して支払われたものであって、労務の提供を対価として支払われたものとみることは困難であり、上告人の自己使用の道具の持込み使用状況、B木材に対する専属制の程度等に照らしても、上告人は労働基準法上の労働者に該当せず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。上告人が職長の業務を行い、職長手当の支払いを別途受け取ることとされていたことその他所論の指摘する事実を考慮しても、上記の判断が左右されるものではない。
 以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。

 酒気帯び運転で懲戒解雇有効
 ヤマト運輸事件(平19.8.27)
 ●事件のあらまし
 
セールスドライバーとして勤務していた原告は、業務終了後、飲酒により自家用車を運転していて、酒気帯び運転で検挙され、運転免許停止30日(講習受講により1日に短縮)、罰金20万円に処せられた。被告のマネージ社員就業規則第43条では、業務内、業務外を問わず飲酒運転及び酒気帯び運転をしたときは解雇する旨定められていた。さらに、退職金支給規定では、第6条で「懲戒解雇の場合は、就業規則第41条第7号に基づき退職手当を支給しない。ただし、事情によりその全額または一部を支給することがある」と定められていた。しかし、その後、緊急通達により「酒気帯び運転等の事後発覚は情状の処置が行われない」とする扱いを定めた。
 原告は、退職金は功労報償的性格も有するが、基本的な性格は賃金の後払いであり、不支給とするには労働者のそれまでの継続の功を抹消するほどの信義に反する行為でなければならず、酒気帯び運転は私的運転であり、懲戒解雇に該当せず、退職金の不支給にも当らないと主張した。
 判決は「原告は、大手運送業者の被告に長年にわたり勤続するセールスドライバーでありながら、業務終了後の飲酒により自家用車を運転中、酒気帯び運転で検挙されたこと…などからすると、その情状はよいとはいえず…懲戒解雇はやむを得ない」としたものの、退職金の不支給に関しては「長年の勤続の功労を全く失わせる程度の著しい背信的な事由とまでいえない」として、退職金の受給権を「原告が受給し得たはずの962万185円の3分の1である320万円を下ることはない」と判示した。
 

 ツタの紅葉。真赤です!

カラマツ街道!もうすぐ雪が?

 

 ●判決要旨
 従業員の職場外でされた行為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものであれば、規則の対象となり得ることは明らかであるし、また、企業は社会において活動するうえで、その社会的評価の低下毀損は、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれが強いので、その評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められる行為については、職場外でされたものであっても、なお広く企業秩序の維持確保のために、これを規制の対象とすることが許される場合もあるといえる(参照、最高裁昭和45年(オ)第1196号同49年2月28日第1小法廷判決・民集28巻1号66頁)。これを本件についてみるに、前記のように、被告が大手の貨物自動車運送業者であり、原告が被告のセールスドライバーであったことからすれば、被告は、交通事故の防止に努力し、事故につながりやすい飲酒・酒気帯び運転等の違反行為に対しては厳正に対処すべきことが求められる立場にあるといえる。したがって、このような違反行為があれば、社会から厳しい批判を受け、これが直ちに被告の社会的評価の低下に結びつき、企業の円滑な運営に支障をきたすおそれがあり、これは事故を発生させたり報道された場合、行為の反復継続等の場合に限らないといえる。このような被告の立場からすれば、所属のドライバーにつき、業務の内外を問うことなく、飲酒・酒気帯び運転に対して、懲戒解雇という最も重い処分をもって臨むという被告の就業規則の規定は、被告が社会において率先して交通事故の防止に努力するという企業姿勢を示すために必要なものとして肯定され得るものということができる。
 
 退職金は、賃金の後払いとしての性格を有し、企業が諸々の必要性から、一方的、恣意的に退職金請求権を剥奪したりすることはできない。このような見地からは、上記の退職金不支給とする定めは、退職する従業員に長年の継続の功労を全く失わせる程度の著しい背信的な事由が存在する場合に限り、退職金が支給されないとする趣旨と解すべきであり、その限度において適法というべきである。これを本件についてみると、原告は、大手運送業者の被告に長年にわたり勤続するセールスドライバーでありながら、業務終了後の飲酒により自家用車を運転中、酒気帯び運転で検挙されたこと、この行為は、平成17年4月当時は一審の口頭弁論終結時ほどは飲酒運転に対する社会の目が厳しくなかったとはいえ、なお社会から厳しい評価を受けるものであったこと、原告は処分をおそれて検挙の事実を直ちに報告しなかったこと、その挙げ句、検挙の4ヵ月半後の9月5日、運転記録証明の取得により原告の酒気帯び運転事実が発覚したことなどからすると、その情状はよいとはいえず、懲戒解雇はやむを得ないというべきである。
 しかしながら、他方、原告は他に懲戒処分を受けた経歴はうかがわれないこと、この時も酒気帯び運転の罪で罰金刑を受けたのみで、事故は起こしていないこと、反省文等から反省の様子も看てとれないわけではないことなどを考慮すると、原告の行為は、長年の功労を全く失わせる程度の著しい背信的な事由とまではいえないというべきである。したがって、就業規則の規定にかかわらず、原告は退職金請求権の一部を失わないと解される。

 そこで原告に支給されるべき退職金の額であるが、退職金が、功労報酬的な性格と賃金の後払いとしての性格を併有すること、被告の退職金規定においても同様であること、その他上記で検討した点や原告の継続期間その他いっさいの事情を考慮すると、少なくとも原告が受給し得たはずの962万0185円の約3分の1である320万円を下ることはないというべきである。
 なお、この金額は、労働審判において審判委員会が支払を命じた金額より多いが、調停の成立による解決を優先する労働審判と、本件訴訟における判断とは事情を異にするというべきである。
 

   山全体が紅葉 
 ただ、ただ、見とれるだけ

  塩原温泉近くの雑木林

 

 体調不良者を研修に参加させたのは違法
 NTT東日本事件(平18.7.20)
 事件のあらまし
 研修中に自宅に帰り、墓参りにでかけたところ墓の前で死亡していたのが発見された社員の遺族が、社員の急性心筋虚血で死亡したのは、会社が安全配慮義務に違反して時間外労働をさせ、宿泊をともなう研修に参加させることが原因だとして、不法行為又は債務不履行による損害賠償を請求した事件。
 一審は、原告らの請求を認容して、逸失利益3086万余円、慰謝料2800万円、葬儀費用141万円、弁護士費用600万円の支払いを命じたため、会社側が控訴した。
 二審の本判決では「Aの本件リストラ計画に伴う雇用形態・待遇体系の選択の際の精神的ストレス、本件研修参加に伴う精神的、身体的ストレスがAの冠状動脈の状態を自然の経過を超えて増悪させ、心筋梗塞などの冠状動脈疾患等が発症したことによる急性心筋虚血により死亡したとみるのが相当であり、このことは本件研修の約4カ月前からAが不整脈や体調の不良を医師や被控訴人に訴えており、研修期間中も睡眠不足等の不具合を訴えていたことなどの事情もあったことからも裏付けられる」として因果関係を認めた。
 さらに、健康管理医と職場の上長が「漫然と、Aが本件研修に耐えられる状態にあると判断し、Aの本件研修への参加を決定したのであるから…業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の健康を損なうことがないように注意する義務に違反した過失があるということができる」として過失を認め、逸失利益として3086万4211円と慰謝料2800万円、弁護士費用600万円などの支払いを命じた。
 なお、控訴人が、新たに過失相殺の主張をしたことに対しては「原審において、裁判所からの求釈明に応じて過失相殺の主張をしない旨答えていたことが認められるところ、当審において、控訴人が上記主張をすることは著しく信義に反する」として認めなかった。

 判決要旨
 Aの本件リストラ計画に伴う雇用形態・処遇体系の選択の際の精神的ストレス、本件研修参加に伴う精神的、身体的ストレスがAの冠状動脈の状態を自然の経過を超えて増悪させ、心筋梗塞などの冠状動脈疾患等が発症したことによる急性心筋虚血により死亡したとみるのが相当であり、このことは本件研修の約4か月前からAが不整脈や体調の不良を医師や被控訴人に対して具体的に訴えており、研修期間中も睡眠不足等の不具合を訴えていたなどの事情もあったことからも裏付けられる。したがって、Aの死亡の原因となった急性心筋虚血の発症と控訴人がAに対し、本件リストラ計画に伴って雇用形態・処遇体系の選択を迫り、60歳満了型を選択したAに本件研修に参加させたこととの間に相当因果関係が存在するというべきである。
 精神的ストレスは虚血性心疾患のリスクを増大させるものであり、このことは産業医が認識し、または認識し得たものであるところ、心疾患の症状が平成5年の手術後は比較的に安定したといはいえ、高脂血症を合併する陳旧性心筋梗塞で「要注意(C)」に指定されたAを本件研修(本件研修は、Aがこれまで担当してきた業務とは全く異なる内容のものであり、平成14年4月24日から同年6月30日までの2カ月以上にわたって、Aの自宅のある旭川から離れて、札幌及び東京で宿泊を伴うものであり、その際の宿泊場所として、そのほとんどを2人ないし4人部屋で過ごすことにあることは、当然被控訴人において予め分かっていた事柄である。)過度の精神的、身体的ストレスを与えることが十分予測できたというべきである。
 
 健康管理医と職場の上長であるB課長は協議のうえ、前年における医師との面談等で特別問題がなかったこと、毎月の保健師による職場巡回の際に、Aから症状の悪化体調不良等の訴えがなく、職場の上司との話し合いのなかでも特別な事情がでてこなかったことから、控訴人は、漫然と、Aが本件研修に耐えられる状態にあると判断し、Aの本件研修への参加を決定したのであって、その結果、Aが急性心筋虚血によって死亡するに至ったのであるから、控訴人の担当者には、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の健康を損なうことがないように注意する義務に違反した過失があるということができる。
 Aは、少なくとも被控訴人らが本件で請求している620万3288円の限度で年収があったものと推認するのが相当である。生活費控除割合については、Aが一家の支柱であったことから30%とし、67歳までの9年間就労可能であったと考えられるから、9年に相当する年5%の割合によるライプニッツ係数(7.1078)により中間利息を控除して逸失利益の減価を算出するのが相当である。
 そうするとAに生じた逸失利益の現価は、次ぎの計算式のとおり、3086万円4211円となる。
 (計算式)6203288×(1−0.3)×7.1078=30864211
 本件記録によれば、控訴人は、原審において、裁判所からの求釈明に応じて過失相殺の主張をしない旨答えていたことが認められるところ、当審において、控訴人が上記主張をすることは著しく信義に反するものであり、また、第一審の軽視にもつながるものである。したがって、当裁判所は、訴訟上の信義則に反するものとして、控訴人が上記主張をすることを許さない。また、上記経緯に照らすと、控訴人の主張がないのに過失相殺規定の類推適用をすることも相当ではないと判断する。
 

 林道で遠近感が上手く映った!

 もみじの紅葉 真下から

 

 飲酒に伴う会合に出席後の事故死でも通災
 中央労基署長事件(平19・3・28 東京地裁)
 事件のあらまし
 勤務時間外である午後5時以降に、社内で飲酒を伴う会合に出席し、午後10時15分頃退社した事務管理次長が、午後10時27分頃、地下鉄駅の階段から転落して後頭部を打撲して負傷。病院に搬送されたものの頭蓋骨損傷により死亡した。被災労働者の妻は、この死亡事故が通勤災害であるとして労基署長に療養給付及び遺族給付、葬祭給付を請求したが、労基署長は支給しない旨の決定をした。妻はこれを不満として、労災保険審査官に審査請求したが、これも棄却され、さらに労働保険審査会もこれを棄却したため、本件提訴に及んだもの。
 判決は、飲酒を伴う会合に関して「事務部次長として事務管理部を実質上統括していたものであり、部長から6階の本件会合で部員等から意見及び要望等を聴取して、これに対応することを命じられて毎回出席し、ほぼ開始時から終了時まで参加していたのであるから、一般には本会合への参加が任意であるとしても、少なくともAにとって、本件会合の出席は、これを主催する事務管理部の実質上の統括者としての職務に当たるというべきである」として職務と認め、「通勤に伴う危険により生じたものには当たらないということはできない」として不支給処分を取り消した。

 判決要旨
 本件会合は、月1回開かれる主任会議の終了後、事務管理部の主催により、東京支店の5階及び6階で開催され、6階の本件会合には事務管理部の部員を中心に毎回7ないし8人が出席し、その費用は一般管理会議費としてB社が負担していたもので、そこで懇談される内容も、業務上の問題点、不平不満、トラブルの対応策、業務の改善案、他部門に対する苦情等業務に関するものであって、このようなことからすると、本件会合は、業務の円滑な遂行を確保することを目的とするものというべきであり、これが相応の成果を挙げていたことは、伝票の書き方等の業務処理について重複する業務を廃止されたり整理されたりしたほか、C課長が月初めの各営業所のエリアミーティングに出席するようになった経緯を明らかにして苦情を解消するなどしたことなどの例からもあきらかである。また、本件会合が酒類の提供を伴うものであるにしても、それは、忌憚のない意見を交換するためであると解され、また、業務外の話題に及ぶことがあったとしても、それは短時間の私的会話の域をでないものと解されるから、これらの事情が、上記目的の妨げとなるものではない。

 Aは事務管理次長として事務管理部を実質上統括していたものであり、部長から6階の本件会合で部員等から意見及び要望等を聴取して、これに対応することを命じられて毎回出席し、ほぼ開始時から終了時まで参加していたのであるから、一般には本件会合への参加が任意であるとしても、少なくともAにとって、本件会合への出席は、これを主催する事務管理部の実質上の統括者としての職務に当たるというべきである。

 東京支店の従業員の中には、本件会合を「御苦労さん会」と称する者もいたことが認められるが、本件会合は酒類の提供を伴うものであって、慰労、懇親の趣旨も含まれていることは否定できないにしても、前述のような本件会合の趣旨に照らすと、これが主として懇親等のための会であるとはいえず、そのような呼称から直ちに本件会合への出席が業務に当たらないとすることはできない。
 また、本件会合への出席が労働時間に含まれていない場合であったとしても、Aを含めて副長以上の職員に対しては、時間外手当が支給されず、また、その他の職員に関しても、当時のB社の取り扱いでは30時間までの支給に制限されていたのであるから、そのまま申告する意義に乏しいものであった以上、そのようなことがあったからといって、これを理由に本件会合の業務性を否定することはできない。

 本件会合は、定期的に開催されているところ、これが業務としての性格を有するものと解されることは前記のとおりであって、本件事故当日に開催された本件会合においも、Aは、本件配置換えについて部員に不満及び不安があったのに対し、本件配置換えが決まった経緯等について資料を使用して説明するなどして説得に努め、これについて一応納得させるなど、本件会合の趣旨に従った業務に当たっていたことが明らかである。

 Aは、飲食後帰途についているが、その飲酒量や、飲酒後の経過時間にかんがみ、また、当日は降雨があったため足元が滑りやすい状態であったことからすると、飲酒の影響で本件事故が生じたとまで認めることはできないから、本件事故が通勤に伴う危険により生じたものには当たらないということはできない。
 以上によれば、本件事故が通勤災害であることを否定した本件処分は違法であるから、取消しを免れない。

 

    紅葉の七色変化

【2008年9月】
08.10.5. 読売新聞 悪性リンパ腫 原発労災 厚労省 被爆との因果関係認定へ
 原子力発電所で働いた後、悪性リンパ腫で死亡した男性について、厚生労働省の検討会は原発での被爆との因果関係を認める方針を固めた。これを受け、厚労省は近く、この男性の労災を認定する見通し。原発労働者の労災認定は、白血病や多発性骨髄腫で認められたケースはあるが、悪性リンパ腫では初めて。
 この男性は、2005年3月に悪性リンパ腫で亡くなった沖縄県うるま市の喜友名正さん(当時53歳)。
 喜友名さんは1997年から04年まで全国各地の原発で検査業務に従事していたことから、05年10月、遺族が大阪市の淀川労働基準監督署に労災申請した。しかし、労災認定基準の対象疾患に悪性リンパ腫が含まれていないことを理由に申請が認められなかったため、大阪労働局に不服を申し立てていた。
 これについて、厚労省は「慎重に検討する必要がある」と判断し、昨年秋から本省の検討会で協議を重ねていた。
 

 Fさんが釣ってきたアユの塩焼き 一人で2匹も食べた人がいた。

【2008年9月】
08.9.25. 読売新聞 教諭自殺「公務上の災害」

秋空、イワシ雲、澄みきってますねぇ〜!

 

 千葉市立中学校の男性教諭(当時50歳)が2006年9月に自殺した問題で、地方公務員災害補償基金千葉県支部が自殺を「公務上の災害」と認定していたことが24日、分かった。代理人の弁護士が明らかにした。
 教諭は06年9月6日、千葉市緑区の高架橋から飛び降り、死亡した。教諭の妻から自殺の原因調査を依頼された千葉市教委は06年12月、「当時の男性校長が恒常的な叱責をくりかえし、これが精神疾患発症の一要因となった」などとする調査結果をまとめた。

08.9.17. 下野新聞 救命中の事故死は労災 「運転業務上、当然の行為」 
                        名古屋地裁
 岐阜県大垣市の国道でトレーラーの運転中に交通事故の現場に出くわし、救命作業中に後続車に追突され死亡した古橋清弘さん=当時(33)=に労災が適用されないのは不当として、岐阜県各務原市の妻美穂さん(44)が遺族補償年金などの不支給処分の取り消しを国に求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は16日、労災と認定し、不支給処分を取り消した。
 判決理由で遠藤俊郎裁判官は「事故車の同乗者からの要請を受けての救助行為は、長時間の自動車運転を行う労働者が業務の上で当然なすことが予想される行為」として業務遂行中の災害であることを認定。国側は事故に遭ったのは救助行為の時ではなく、通行の邪魔になる事故車両を移動させていた時で、このような復旧行為は業務に付随すると評価できないと主張したが、判決は「復旧行為も救出に継続した行為だ」として退けた。
 

 美しい実ですね! 何の実ですかね!?

 08.9.14. 派遣の労災 3年で18倍 急増 70人、うち8割が製造業
       法改正で従事増 背景に

 山栗 イガがきれいです。

 

 県内の派遣労働者の労働災害が大幅に増えていることが13日までに栃木労働局の調査で明らかになった。2007年は過去最高の70人で、わずか3年で18倍に急増した。法改正で製造業の派遣労働者が増えたことが背景にあり、経験の浅い労働者が機械に挟まれたり、巻き込まれたりする事故が多発。慣れない職場で働く雇用形態の弊害が浮き彫りになった。(加藤覚)
 県内の派遣労働者の労働災害(休業4日以上のけが)の人数は04年は4人。05年は19人、06年は52人と右肩上がりに増え、昨年1年間は72人に上った。
 急増の要因は04年3月の改正労働者派遣法の施行。製造業への派遣が可能になり、これによって製造業に従事する派遣労働者が増加したとみられる。
 07年の状況を見ると、派遣労働者の労災のうち、製造業が全産業の約8割を占めた。特に金属製品製造、輸送用機械製造、化学工業の業種で目立った。
 勤務経験年数では「1カ月以上、3カ月未満」が20人と最多で、年齢は20〜30代が半数を占めた。
 災害の程度(休業日数)も「2週間以上」が約7割を占め、比較的長期の休業を要する重い災害が多かった。死亡者はなかった。
 正社員を含む07年の県内全体の労災人数は1909人で、ここ数年間は横ばい傾向。このうち製造業の労災は約3割だが、派遣は製造業が約8割を占め、極端な傾向を示した。
 また派遣元の人材派遣会社が、派遣先に迷惑を懸けないよう、労働者がけがをしても派遣先に報告しないケースもあり「労災隠しが起こりやすい実態がある」(同労働局)という。
 同労働局安全衛生課は「雇入れ時の安全衛生教育を徹底させるほか、派遣先においても機械設備の安全確保を重点的に指導していく」としている。

 

【2008年8月】
08.8.11 労働基準広報 自殺と上司の執拗な叱責との因果関係認める
      松山地裁・過労自殺で前田道路に3100万円の賠償命令
 大手道路工事会社「前田道路株式会社」(本社・東京都品川区/岡部正嗣代表取締役社長)に勤務していた男性管理職(当時43歳)が自殺したのは、上司の叱責などが原因だとして、遺族が同社に慰謝料など約1億4500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、松山地方裁判所は7月1日、上司の叱責等と男性の自殺との因果関係を認め、同社に約3100万円の支払いを命じた。
 判決によると、男性は、平成15年4月に東予営業所(愛媛県西条市)の営業所長に就任し、その1カ月後から、営業所の事業成績を四国支店(香川県高松市)に報告する際に現実の数値とは異なる数値を報告するよう部下に指示した。その後、この自らの営業成績を仮装するために行った不正経理の是正のため、男性は16年7月から、上司による度重なる叱責・注意などを受けていた。
 そして、同年9月13日、男性は、「おこられるのも、言い訳するのも、つかれました」などと書いた遺書を残して営業所内で首つり自殺をした。
 高橋正裁判長は、不正経理の責任を追及された業績検討会の3日後に自殺し、遅くともその直前に「うつ病」に罹患していたことなどから、上司による叱責・注意と男性の死亡との間の相当因果関係を認めた。そして、男性の上司が「会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが、辞めても楽にならない」などと何度も厳しく叱責したことなどは、「過剰なノルマ達成の強要あるいは執拗な叱責として違法」であり、「債務不履行」(安全配慮義務違反)も認められる」とした。また、男性の上司は、叱責等の時点で、男性が心理的負担から自殺に至ることを予見可能であったと認定した。
 しかし、その一方で、上司による叱責等は、男性の不正経理が原因になっていたことや、上司に隠匿していた不正経理が「うつ病」の発症に影響を及ぼしたことを推認できることなどから、男性の過失割合は6割を下回らないと判断している。
 遺族側代理人の水野幹男弁護士は、「不正経理とは言っても、売上高の過剰計上、原価の付け替えなどであり、被災者は何の利益も得ていないし、会社も何の損害も受けていない。むしろ『売上高の架空計上』が判明した以降の上司の対応こそが問題であり、「うつ病」を発症・増悪させ損害を拡大したと言える」と話している。
 遺族側は、過失相殺等の点から控訴する方針。一方、前田道路側も「控訴して争う」(広報課)としている。
 なお、男性の自殺は、17年10月27日、愛媛・新居浜労働基準監督署長に業務上災害と認定されている。
 

    急カーブ注意!!

【2008年7月】
 08.7.18 読売新聞 契約店長の過労死認定 すかいらーく 月80時間残業で年収200万

    山 百 合

 

 ファミリーレストラン大手「すかいらーく」の契約店長だった埼玉県加須市の前沢隆之さん(当時32歳)が昨年10月に脳出血で死亡したのは、長時間労働による過労が原因だったとして、埼玉・春日部労働基準監督署が6月に労災認定していたことが分かった。遺族が17日に記者会見して明らかにした。労働問題に詳しい弁護士は「非正社員の過労死は聞いたことがない」としている。
 会見した遺族と支援した労働組合スタッフによると、前沢さんは2006年3月すかいらーく栗橋店(埼玉県栗橋町)で1年ごとに契約を更新する契約店長となった。人手不足を補うため、店長になってから残業時間が増えたという。
 同労基署からは、「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業があったと認定した、との説明を受けたという。しかし年収は200万円程度。日本労働弁護団の棗一郎弁護士は「企業の労務管理任せでは限界があり、法律の罰則を強めるなど対策が必要」と語る。
 すかいらーく広報室は「労災認定された事実が確認できておらず、コメントできない」としている。

【2008年6月】
08.6.20 下野新聞 海外出張の自殺 労災認定 「過重労働でうつ発症」
 県南の日用品製造会社に勤務していた40代の男性会社員が2006年秋、出張先の米国で自殺したのは過重労働やストレスでうつ病を発症したのが原因だったなどとして、栃木労働基準監督署が3月に労災認定していたことが、19日までに分かった。厚生労働省や栃木労働局によると、海外出張中の自殺で労災認定が下されるケースは全国的に少なく、本県でも初めてとみられる。(茂木信幸)
              ◇
 県央の遺族や関係者によると、会社員は勤務先で新商品の開発や品質管理を担当していた。
 米国の工場新設や商品製造に伴い、06年夏に渡米し約1カ月半勤務。帰国して約1カ月後再び米国へ出張し、3日後にマンション自室で自殺した。
 遺族らによると、会社員は帰国後、連日のように午前1時、2時ごろ会社から帰宅。「昨晩、うなされてなかったか」と家人に尋ねることもあった。再出張の直後には「商品性能などをめぐり現地でトラブルになっている」と深夜に電話で家族に伝え、かなり落ち込んでいる様子だったという。
 遺族は07年5月、栃木労基署に労災申請。同労基署は遺族や会社の同僚らから聞き取り調査を進めた結果、2度目の米国出張時に過重労働や商品に関する深刻なトラブルなど業務上の負荷で急激にうつ病を発症、自殺に至ったと認定した。会社側も時差のある現地との対応について十分な支援や指導を行わなかった、とされる。
 会社員の妻は「労基署の調査に、会社側も積極的に協力してくれたことが今回の認定に結びついたと思う。過労自殺の労災認定が全国的に増えているが、企業は従業員が自殺することのない職場環境づくりやメンタルヘルスに取り組んでほしい」と訴えている。
 国内の自殺者が10年連続で30.000人を超える中、過労が原因でうつ病などの精神疾患にかかり自殺した会社員らの労災認定件数は07年度81人に上り、県内も5人と過去最多だった。
 過労自殺問題に詳しい川人博弁護士(東京弁護士会)は「自殺者の増加を反映したもので、10年前なら労基署が認定しなかったケースだろう。外国勤務は心理的な負荷が高い。企業の海外進出が急増する中、勤務者への十分な健康管理対策は雇用主の責務だ」とコメントしている。
 

キャンプ場から恒例のシーン

08.6.7  『ご注意・夏場の熱中症』 特別企画 熱中症予防対策の決め手
   作業計画を十分に検討しこまめな職場巡視を心がけよう

    山は緑!空は青!
 熱中症には気をつけよう!!

 

 昨年の夏は、国内の最高気温が70数年ぶりに塗り替えられるなど、連日の猛暑が話題になった。たとえ炎天下であっても屋外作業に従事しなければならない建設業では、夏の暑さは熱中症に直結し、貴重な生命が失われることにもなりかねない。そこで本稿では、現場でできる基本的な熱中症予防対策を紹介する。
 うだるような暑さが続いた平成19年8月、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で最高気温40.9度を記録し、最高気温の日本記録が70数年ぶりに塗り替えられた。連日の猛暑は熱中症の多発を招き、体力の弱い高齢者が就寝中に熱中症にかかったことが社会問題のように取り上げられたことを記憶している方もいるだろう。
 財団法人気象業務支援センターの村山貢司氏の報告によると、全国的に30度以上を記録した時間がだんだん増えており、たとえば東京では20年前には年間200時間程度だったものが、最近では年間400時間に達しようとしているとのことである。
 これも地球温暖化の影響だといえるかもしれないが、建設業では炎天下の屋外作業が避けられない場面も多く、夏の作業を一層危険なものにしている。効果的な熱中症対策が欠かせないといえよう。
 「熱中症」とは
 熱中症とは、高温・高湿の環境で起こる病気で、症状によって「熱虚脱」「熱疲はい」「熱けいれん」「熱射病(日射病)」に分けることができる。
 これらの共通した症状として、「めまい」「頭痛」「吐き気」などがある。真夏の炎天下での作業中に、このような症状が見られた場合には、たとえ症状が軽いと思われる場合であっても、まずは熱中症を疑ってみることが肝要だ。
 ○熱射病(日射病)
 熱中症の中では最も死に至る危険性が高く、緊急の治療が必要になる。発汗が止まり、熱く乾いた皮膚になり、体温は通常41℃をこえ、42℃以上に達することも少なくない。また、意識が乱れたり、昏睡状態に陥ったりする。
 ○熱けいれん
 手足や腹部の筋肉が痛みをともなって発作的にけいれんを起こす。大量に発汗したときに塩分を取らずに水やお茶しか飲まなかったことが原因とされている。
 ○熱虚脱
 皮膚から放熱を促すために血管が拡張して血流が多くなり、脳への血流が少なくなることが原因で起こる。典型的な症状としては、血圧の低下、めまい、頭痛、吐き気、だるさなどがある。
 ○熱疲はい
 大量に汗をかくことで血流が濃縮することによって起こる。典型的な症状としては、激しいのどの渇き、尿量の減少、めまい、手足のしびれ、歩行困難といった症状がある。
 死亡災害発生状況
 厚生労働省がまとめた「熱中症による死亡災害発生状況(平成19年分)」によると、平成19年の熱中症による死亡者数は18人(前年比1人増)であった。
 これを業種別にみると、建設業が18人中10人と5割以上を占めている。建設業が大半を占める傾向に過去10年間大きな変化はなく、熱中症の予防対策は建設業の安全衛生対策における重要な課題のひとつであることが分かる。
 さらに月別被災状況をみると、18件中11件が8月に発生している。しかし、梅雨の影響で湿度が高いことに加えて、暑さに体が馴れていない6月7月、残暑が厳しい9月にも熱中症発生の危険性は十分にあり、6月から9月にかけてが特に注意が必要な期間だ。
 また、時間帯別発生状況では、例年、午後2時から午後4時台に多発しているが、19年には午後5時台にも多発した。
 現場でできる予防対策
 熱中症は、学校のクラブ活動の際にも発生しており、職場の安全衛生対策のなかでは、とかく軽く見られがちな傾向もある。
 しかし、いったん、発症した場合、急激に症状が悪化することも珍しくなく、十分な治療をしなければ死に至ることもある。とは言え、熱中症は適切な対策をとれば、必ず防ぐことができる病気であり、事業者としては、未然防止のための有効な対策を講じる義務があるといって良いだろう。
 以下、現場でできる熱中症予防対策を紹介する。
 ○作業前の対策
 まずは、作業当日の天気予報によって、天候と予想最高気温を確認する。そして、作業所には温度や湿度の変化がわかるように、温度計や湿度計を備え付けておく。
 別掲のとおり、最近ではWBGTの測定が推奨されているが、環境省の「熱中症予防情報サイト」(http://www.nies.go.jp/health/HeatStroke/idex.html)では、全国のWBGTの予測値をまとめて掲載しているので、有効に活用したい。
 こうした情報をもとに、当日の作業内容を見直して、以下のような対応を検討してみてほしい。
 @ 他の季節に比べて十分な休憩時間を確保するとともに、直近の1週間程度の天候も勘案して、作業内容や休憩時間を見直す。
 A 人力による掘削作業等エネルギー消費量の多い作業や連続作業はできるだけ少なくする。
 B 万一、熱中症にかかった場合のことを考えて、一人作業をできる限り避けるような人員配置を検討する。
 休憩所などに備え付けておく水分については、「0.1%〜0.2%の食塩水が理想的だ」とされているが、作業所ごとにこうした食塩水を用意するのは手間がかかる。現実的な対応としては、必要な塩分(ナトリウム)が含まれている市販のスポーツドリンクを準備しておくということになるだろう。
 作業の内容によっては、休憩所から離れた場所で作業を行うこともあるが、こうした場合には、あらかじめクーラーボックスを用意して、スポーツドリンク等を準備しておくようにしたい。さらに高所作業時のように、クーラーボックスを持っていくことができないような場合には、携帯用のボトルが市販されているので、必要に応じて活用を検討してみてほしい。
 ○作業中の対策
 あらかじめ用意しておいた温度計、湿度計を活用して、定期的に温度と湿度(WBGTが理想的)の変化をチェックするとともに、管理監督者としてはこまめな職場巡視を心がけてほしい。特に数日に渡って猛暑が続くようであれば、こまめに声掛けをすることで作業員の変化を把握するようにしたい。
 また、水分の補給については「のどの渇き」を感じる前に補給するのが大切なので、「一定時間ごとに水分を補給する」というルールづくりも大切だろう。
 ○日常の健康管理
 管理監督者としては直近の健康診断結果に基づいた作業員の配置を心がけるのが大切だが、日常的な対策としては、始業時の健康状態の確認がある。特に注意が必要なのはアルコールの飲み過ぎだ。アルコールは体を脱水状態にする性質をもっているので、前日に飲みすぎたような場合には、始業時にすでに熱中症にかかりやすい体の状態になっていることにあるからである。
 ○熱中症が起きた場合には
 十分な対策を取っていても、不幸にして熱中症が発生してしまうこともあるので、万一の場合の備えも必要だ。
 特に迅速な対応が必要なのは熱射病で、体を冷やしながら、一刻も早く病院へ搬送する必要がある。現場での対応としては「いかに早く体温を下げるか」が大切で、体に水をかけたり、濡れタオルを当てて風を送ったり、首やわきの下、足の付け根など太い血管のある部分を冷やすと効果があるとされている。
 また、作業所には「緊急時連絡表」を必ず備え、最寄りの病院、消防署、労働基準監督署、警察の連絡先を把握しておく必要がある。
 ○熱中症の知識を伝える
 熱中症に対する正しい認識を持ってもらうためには、労働衛生教育の充実が欠かせない。労働衛生教育で取り上げる事項としては、「熱中症の症状」、「熱中症の予防方法」、「緊急時の救急措置」、「熱中症の事例」などがある。
 労働衛生教育に必要なデータや事例などは、厚生労働省(都道府県労働局)や前述の環境省などのホームページに掲載されているのでアクセスしてみてほしい。
 最後に、(財)日本体育協会では、熱中症を予防するための原則を「熱中症予防8か条」としてまとめているが、現場の状況に応じて改変することで、こうした標語も教育に活用できる。
 本当の「暑さ」を知るためにはWBGTの測定が必要
 気温はさほど高くないが、湿度はとても高い―――。
 梅雨明け間近の時期には、こうした天候の中で作業に従事することも珍しくないが、災害事例をみると、暑さに体がなれていない、こうした時期にも熱中症による死亡災害は起きている。
 熱中症は気温が上昇するにしたがって発症の可能性が高くなるが、発症するリスクを正しく評価するには、気温の高さに着目するだけでは不十分。湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮して、総合的に「暑さ」を評価する必要があるとされている。
 WBGT(湿球黒球温度)は、こうした温熱環境の諸要素を総合した指標であり、(財)日本体育協会がまとめた「熱中症予防のための運動指針」や厚生労働省の通達(平成17年7月29日、基安発第0729001号)でも、熱中症の予防のためにWBGTの積極的な活用を求めている。
 WBGTは、湿球温度、乾球温度、黒球温度を測定して、下記の計算式によって求めることができる。
 屋外のWBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
 屋内のWBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
 しかし、現場でWBGTをいちいち計算するのは手間がかかる。最近ではWBGTの値を自動的に計算することができる携帯用のWBGT計が市販され、広く使われるようになってきている。こうした最新の機器を活用してWBGTを測定することで、本当の「暑さ」を把握することができる。
 測定したWBGTの値が、作業内容に応じて設定されたWBGT基準値(℃)を超える場合には、熱中症が発生するリスクが高まると考えられる。
 建設業の場合WBGT基準値は26℃(気流を感じない場合は25℃)が目安になる。暑さに慣れていない場合は、この値よりも厳しく、23℃(気流を感じない場合は22℃)が基準値となる。なお、基準値は、健康な成年男性を想定しているので、高年齢労働者の場合は更なる配慮が必要になる。

08.6.3 労働基準広報 原油高・円高が7割超の企業の収益を圧迫
    厚労省・緊急ヒアリング結果まとめる

 厚生労働省は、最近の原油等資源価格の高騰や円高等による事業活動や雇用面へのヒアリング結果をとりまとめた。これによると、原油等資源価格高騰、円高等の影響が、「収益をやや圧迫している」あるいは「収益を大きく圧迫している」とする事業所は74.1%で、業種別では運輸業の88.0%が収益を圧迫していると回答している。
 緊急ヒアリングは、今年4月初旬から中旬にかけ、全国の公共職業安定所において、製造業、運輸業及び卸売・小売業の中小企業(従業員数300人未満)4424社を対象に実施されたもの。
 これによると、3か月前と比較した現在の業況については、全体の49.3%が「多少悪い」あるいは「悪い」と回答している。
 企業規模別では、従業員数29人以下で52.3%、30〜99人以下で48.0%、100〜299人以下で46.4%が「多少悪い」あるいは「悪い」と回答しており、規模が小さくなるにつれ、業況が厳しくなる傾向となっている。
 業種別では、運輸業で62.7%の事業所が「多少悪い」あるいは「悪い」と回答しており、全体の49.3%を大きく上回っている。
 次に、原油等資源価格の高騰や円高等が事業活動に与える影響については、全体で、「収益を大きく圧迫している」が26.1%、「収益をやや圧迫している」が48.0%となっており、計74.1%が収益を圧迫していると回答している。
 業種別では、運輸業でその割合が特に高く、「収益を大きく圧迫している」が45.3%、「収益をやや圧迫している」が42.7%で、合計88.0%が収益を圧迫していると回答している。
 原油等資源価格の高騰や円高等への対応策については、最も多いのが、「経費削減(人件費以外)」(59.4%)で次いで、「商品、サービスへの価格転嫁」(31.2%)、「賃金調整または雇用調整」(14.4%)、「内部留保の取り崩し」(10.6%)などとなった。
 業種別では、卸売・小売業で「商品、サービスへの価格転嫁」が41.2%と他業種を大きく上回っている一方で、運輸業では「商品、サービスへの価格転嫁」は21.3%と低く、他の業種と比べ価格転嫁が困難となっており、経営圧迫の大きな要因となっている。
 「賃金調整または雇用調整」を実施している事業所(全体の10.7%)の具体的な方法は、「賃金調整(ボーナスの切り下げ等)」が49.6%、「残業規制」が37.3%、「中途採用の削減または停止」が24.2%、「派遣、パート・アルバイト、契約社員等の再契約停止」が18.0%、「業務日数の短縮」が13.8%などとなっている。
 業種別では、製造業の42.8%が「残業規制」、運輸業では68.2%が「賃金調整(ボーナスの切り下げ等)」を実施しており、他業種と比べそれぞれ高くなっている。卸売・小売業では30.1%が「中途採用の削減又は停止」を実施しており、製造業及び運輸業と比べ、その割合が高くなっている。
 

岩魚の里 奥深く一本道の最後にあった!

 労働基準広報 睡眠時間に配慮し時間管理・走行管理を強化
 交通労災防止のガイドラインが改正

岩魚の池 沢山の池で飼っている。

 

 厚生労働省はこのほど、平成6年に作成した「交通労働災害防止のためのガイドライン」を全面的に改正し、各都道府県労働局に通達するとともに、関係業界団体に対して会員企業への周知を要請した。
 改正ガイドラインの主な項目は、(1)睡眠時間の確保に配慮した適性など労働時間等の管理及び走行管理等の実施(2)交通労働災害防止のための教育内容の充実(3)荷主・元請事業者による配慮等(4)安全管理体制の充実――など。
 (1)については、@新たに運転者の十分な睡眠時間等の確保に配慮して、適正な労働時間等の管理・走行管理を行うことA走行開始地点・終了地点と運転業務従事者の自宅の間の移動時間などを考慮し、十分な睡眠時間を確保する必要がある場合は、より短い拘束時間の設定、宿泊施設の確保などの措置を講ずること―――を提示している。
 また、運転者を乗務させる前には、点呼等を実施して、@運転者に疾病、疲労、飲酒などのため安全運転に支障があるか否か報告させるとともに、その結果を記録することA乗務開始前24時間における拘束時間の合計が13時間を超える運転者の場合については、睡眠時間の状況を確認すること―――を事業者に求めている。
 そして、点呼等を実施して、@睡眠不足が著しい運転手や体調が不調である者に対しては、運転業務に就かせないことA1週間連続して1日当たりの拘束時間が13時間を超える等による睡眠不足の累積などのため安全運転に支障があると認められる運転者に対しては、走行途中に十分な休憩時間を設定する―――などの必要な措置を講じることを事業者に求めている。
 (3)については、荷主、元請事業者に対して、@過積載運行にならないように協力することA到着時間の遅延が見込まれる場合、改善基準等を遵守した安全運行が確保されるよう到着時間の再設定などを行い、到着時間が遅延した場合は不当に不利益な取り扱いを行わないことB高速道路の利用が交通労災防止に効果があることを踏まえて高速道路の利用について配慮すること―――などに取り組むことを求めている。
 同省が同ガイドラインの見直しを行った背景には、6年にガイドラインを作成して以降、交通労働災害による死亡者数は約半数に減少しているものの、休業4日以上の死傷災害が増加傾向にあり、また、重大災害(一時に3人以上が被災する災害)は6年に比べ18年は約50%増加している状況がある。

【2008年5月】
 労働基準広報 労災給付に不服あれば処分庁に再調査も
 政府・行政不服審査法案などを国会に提出
 政府は、4月11日、「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」などを国会に提出した。行政不服審査制度とは、国や地方自治体の課税処分や労災認定、情報公開の非開示などの行政処分に対して国民が不服を申し立てを行うもの。法案には、労働者や遺族などが労災保険給付の決定に不服があれば、処分庁に対して再調査を請求できるなど盛り込まれている。
              ※
 今国会に提出されている行政不服審査制度の関係法案は、
 @ 「行政不服審査法案」
 A 「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」
 @の法案は、現在二審制となっている行政不服審査を一審制にすることなどが主な柱。これに伴い、行政不服審査の前に行政処分を決定した行政庁(処分庁)に再審査請求を行う制度の導入なども提案されている。
 Aは、行政不服審査制度の仕組みの改正に併せて、労災保険などの不服審査制度を見直すこととしたもの。
 例えば、労災保険給付の決定に係る不服申立ての場合は、現行の各都道府県労働局に置かれた「労災保険審査官」(いわば一審)による審査と国に置かれた「労災保険審査会」(同二審)による再審査という二審制の構成から、労災保険審査官による審査制度を廃止し、一審制に改めることなどが提案された。そして、その代わりに処分庁に対する再調査を請求するという制度を導入することも提案されている。
 新たに設けられる再調査制度では、保険給付に関する決定に不服がある場合は、処分庁(労災保険給付の場合はその決定を行った労働基準監督署)に対して再調査請求をすることができるもの。もちろん、再調査請求を経た上で、なお決定に不服がある場合は、労働保険審査会に対して審査請求をすることができる。
 また、再調査請求が可能な期間は、原処分があったことを知った日の翌日から3カ月間、審査請求が可能な期間は再調査請求についての決定があったことを知った翌日から2カ月間とされている。
 現行制度では、例えば、労災保険給付に関する審査請求の場合、支給・不支給の決定から60日以内に労災保険審査官に対して審査請求を行い、さらに、不服がある場合は、その決定の通知を受け取った日から60日以内に労働保険審査会に対して再審査請求をすることになる。
 なお、この改正により、各都道府県労働局に置かれている労災保険審査官はなくなり、各処分庁に再調査担当者が配置される予定。
 Aの法案では、施行期日は改正行政不服調査法の施行日(公布日から起算して2年を超えない範囲で政令で定める)とされている。
 

心の森 モミジの新緑始まったばかり 柔らかい緑

 労働基準広報 青山商事・店長、課長などに残業代支給を決定
 936人に約12億円の遡及支給も実施

心の森キャンプ場 恒例のポイント

 

  紳士服チェーン「洋服の青山」などを全国展開する「青山商事株式会社」(本社・広島県福山市/青山理代表取締役兼執行役員社長)は、4月8日、同月21日から、これまで時間外・休日労働の割増賃金を支給していなかった店長、マネージャー及び同社の本社に勤務する課長に対して、時間外勤務手当を支払うことを発表した。
 支払対象となるのは、紳士服販売店「洋服の青山」の店長701人、同「ザ・スーツカンパニー」などのマネージャー51人、同社本社の課長61人の合計813人(いずれも今年3月末日現在の対象者数)。
 同社によると、これまで、これらの対象者については、労働基準法第41条第2号の「管理監督者」として取り扱っていたため、残業代を支給していなかった。
 同社では、これらの者を管理監督者には該当しない者と判断して、4月21日付けで、これまでの取扱いを改め、役職手当を一定額減額する代わりに、時間外勤務に対する割増賃金を支払うこととしたもの。
 同社によると、この改正により、トータルでは賃金支給額が、軒並み増額することになるが店長やマネージャーなどの職務内容や権限は変更しないとしている。
 また、この改正に伴って、同社では、今年4月20日以前2年分の時間外勤務手当を遡及支給する方針も打ち出している。
 この遡及支給の対象者には、現役の店長や、マネージャー、課長に加えて、退職者や対象期間内の店長経験者なども含まれる。
 対象者の合計は936人に上り、社会保険料の増加分を含む支払総額は12億円程度になる見通し。

過労死認定 東京高裁判決
08.5.23 読売新聞 海外出張続き 過労死認定 東京高裁判決 年183日「疲労が相当蓄積」
 約1年間に計10回、183日間の海外出張をした後、くも膜下出血で死亡した「セイコーエプソン」(長野県)の社員の妻が、松本労働基準監督署長を相手取り、労災と認めるよう求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は22日、請求を棄却した1審・長野地裁判決を取り消し、男性の労災を認める判決を言い渡した。青柳馨裁判長は「残業や休日出勤は少なかったが、多数回の海外出張で疲労が蓄積し、病気を発症した」と述べた。
 亡くなったのは、長野県松本市の犬飼敏彦さん(当時41歳)。判決によると、犬飼さんは2000年11月〜01年9月、アジアや南米などに計183日間出張し、人材育成などの業務に当たっていたが、最後のインドネシア出張から帰国した6日後、国内の出張先のホテルで死亡した。
 犬飼さんの発症前の半年間の時間外労働は月30時間未満だった。厚生労働省は月45時間未満の場合、病気の発症と業務の関連性は弱いとしており、1審も「過重な業務だったとは言えない」と判断していた。
 これに対し、控訴審判決は「海外出張は生活が不規則。言葉や生活慣習も違い、相当の疲労を蓄積させる」と指摘、業務と死亡との因果関係を認めた。
 原告代理人は「労働時間や仕事量ではなく、海外出張自体の負担の大きさを認めた意義は大きい」としている。
 長野労働局労災補償課の話「主張が理解されなかったことは残念。上告については関係機関と協議し、対応したい」
 

 おだまき 結構 種が飛び散り増えます!

【2008年2月】
08.2.14 読売新聞 発注元にも賠償判決 請負会社従業員の労災巡り

  一輪草  可憐な花

 

 製缶会社から工場での検査業務を請け負っていた会社の男性従業員(当時22歳)が作業中に死亡した事故を巡り、両親が、男性の勤務先と発注元の両社などに損害賠償を求めた訴訟の判決が13日、東京地裁であった。山田俊雄裁判長は「男性は実質的には発注元の指示のもとに作業をしていた」と発注元の責任を認め、両社に計約5170万円の賠償を命じた。原告代理人の弁護士は「請負の形を取っているが、偽装請負を認めた判決。派遣先の企業の責任逃れを許さないという点でも画期的」と語った。
 判決によると、男性は神奈川県相模原市の製造業務請負会社「テクノアシスト相模」に雇用されていたが、2003年8月に「大和製罐」(東京都)の工場での缶のふたの検査業務を命じられ、高さ約90aの作業台での作業中に転落、約3か月後に死亡した。
 訴訟では、発注元にも賠償責任があるかが争点となり、判決は、発注元が製造ラインを管理していたことなどから、「男性と発注元には実質的に使用従属の関係があり、発注元も安全配慮義務を負っていた」と認定。請負会社と発注元の双方に安全管理責任があったと結論づけた。
 大和製罐の話「判決は偽装請負とは認定していない。判決文を慎重に分析したい」
 テクノアシスト相模の親会社トラストワークスの話「真摯に受け止め、誠意を持って対応する」

特集 労災W
              ケース20
 Q パートと契約社員しかいないが均衡どう図る
 当社は、数店舗を展開する小売業です。各店舗の店長に社員を配置し、店舗の従業員はパートと契約社員としています。契約社員数名はパートと同じ仕事ですが、社員にはパートと同じ仕事の者はおりません。この場合改正パート法に基づく社員との待遇の均衡を図ることが必要でしょうか。
 同一店舗・同一業務の契約社員と比較することに
  ご指摘のとおり、「短時間労働者の雇用管理改善等に関する法律」(「パート労働法」)が改正され平成20年4月1日から施行されます。
 改正法は、パートについて、同一の事業所の通常労働者と比較し、@職務の内容が同一か否か、A@を満たした以降の全雇用期間を通じて人材活用の仕組みと運用等が通常の労働者と同一の範囲内で変更すると見込まれるか否か、B労働契約に期間の定めがないまたは実質的に機関の定めのない労働契約と同視し得る状態にあるか否か―――の3要件により、4つに分類し、それぞれ義務・努力義務事項を定めています。
 具体的には、@〜Bを全部満たすパートは、通常の労働者と同視すべきパートとされ、通常の労働者との待遇差別が禁止されます(法第8条)。また、@とAを満たすパートには、職務関連賃金を通常の労働者と同一の方法で決定する努力義務などが課されます(法第9条第2項等)。@の要件のみ満たすパートや@〜Bの要件を1つも満たせないパートに関しても、それぞれ義務事項や努力義務事項があります。
 このため、各企業では、自社の雇用するパート(所定労働時間が通常の労働者より短い者をいいます。)がどの要件を満たすかを確認する必要がありましょう。
 この際に、問題となるのは、パートとの職務内容などを比較する「通常の労働者」の範囲です。
 この点については、「法第2条の「通常の労働者」とは当該事業所において、社会通念上にしたがい「通常」と判断される労働者をいう」とされています。(平19・10・1 基発第1001016号、職発第1001002号、能発第1001001号、雇児発第1001002号)。
 つまり、正社員だけが「通常の労働者」に該当するわけではなく、(イ)パートと同種の業務に従事する正社員などの正規型労働者がいる場合はその者、(ロ)こうした労働者がいない場合は同種の業務に基幹的に従事しているフルタイム労働者(フルタイムの基幹的労働者)―――と比較するとされています(前掲行政解釈)。
 ここでいう「フルタイムの基幹的労働者」とは、「当該業務に恒常的に従事する1週間の所定労働時間が最長の、正規型の労働者でない者を指す」とされ、一時的な業務のために臨時に採用されている者は含まれないほか、異なる業務に従事する正規型労働者の最長の1週間の所定労働時間が短い者も含まれません(前掲行政解釈)。
 また、その事業所にパートと同種の業務に従事する正社員もフルタイムの基幹的労働者もいない場合は、(1)その事業所での他の業務に従事する正社員がいる場合はその1週間の所定労働時間が最長の者と比較、(2)その事業所での他の業務に従事するフルタイムの基幹的労働者がいる場合はその1週間の所定労働時間が最長の者と比較―――することになります。
 御社の場合、店舗に社員は店長だけということです。仮に、店舗ごとに法上の「事業所」とみなされる場合は、社員と同じ時間勤務している契約社員が数名おり、契約社員はパートと同じ業務に従事しているということですから、契約社員が御社の店舗における「通常の労働者」となりますので、この方々とパートを比較し、前記3つの要件を満たすか否かをみていくことになりましょう。
 

 宇都宮文化会館玄関口

            ケース19
 Q 派遣社員を派遣先が面接してから決めたいが
 当社では、初めて派遣労働者を受け入れることを検討しております。業務遂行能力はもちろんですが、他の従業員と協力・調和して業務を遂行できるかといった点も気になるところです。そこで、派遣労働者の候補者を事前に面接したいと考えているのですが、法的に問題はないでしょうか。
 紹介予定派遣か本人希望なければ面接は出来ない
 A お尋ねは、派遣労働者を受け入れる場合に、派遣先が事前に派遣労働者を面接することができるかということです。
 結論から申し上げますと、派遣先が派遣労働者を事前に面接するなどの行為は紹介予定派遣など一部の例外を除き、認められていません。
 労働者派遣法第26条第7項では、「労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。」と定めているからです。
 同条を受けて、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第138号。以下「派遣先指針」といいます。)では、派遣先に対し、受け入れを行なう派遣労働者を特定することを目的とする行為(以下「特定目的行為」といいます)を禁止しています。(派遣先指針第2の3)
 また、派遣元に対しても、「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成11年労働省告示第137号。以下「派遣元指針」といいます。)において、派遣先による特定目的行為に協力することが禁止されています(派遣元指針第2の11)。
 ここでいう「派遣先による特定目的行為」には、@派遣先が労働者派遣に先立って派遣労働者を面接すること、A当該労働者の履歴書を送付させること、B若年者に限るとすること―――などが該当します。
 では、通常の労働者派遣では、派遣先による面接などが一切認められないのかというと、そうともいえません。
 派遣労働者(派遣労働者となろうとする者を含みます)自身が自らの判断で派遣就業開始前に派遣先の事業所を訪問したり、派遣先への履歴書送付を行うことや、派遣就業期間中の履歴書の送付を行うことは、派遣先による特定目的行為に該当しないとされているからです。(派遣元指針の第2の11(1)、派遣先指針第2の3)。
 このため、派遣労働者本人が自主的に希望した場合には、派遣元は、労働者派遣に先立って、派遣先の事業所を訪問させたり、履歴書を派遣先に送付することが可能ですが、派遣先又は派遣元は、派遣労働者などに対してこれらの行為を求めないことが必要です(前掲各指針)。
 なお、法第35条により、派遣元には、派遣先に対し、派遣労働者の氏名や労働・社会保険の被保険者資格の確認の有無に関する事項などを書面で通知することが義務づけられているため、これらの事項を知らせることは、派遣先による派遣労働者の特定目的行為には該当しません。
 また、派遣元指針では、「労働者派遣事業制度の性質上、派遣元事業主が派遣先に提供することができる派遣労働者の個人情報は、労働者派遣法第35条の規定により派遣先に通知すべき事項のほか、当該派遣労働者の業務遂行能力に関する情報に限られるものであること」としています(第2の10(1)ニ)。
 したがって、業務遂行能力に関する情報を派遣先に提供することも問題ありません(特定目的行為に当たりません)。
 

    猫やなぎ

     節分草

 

           ケース18
 Q 代表取締役で出向する者に労災保険の適用は
 現在、当社の管理職の地位にある者(仮にA)が、子会社に代表取締役として出向することになりました。出向元で労働者であった者が、出向先で役員となった場合、労災保険の適用は可能なのでしょうか。また、可能な場合、その取り扱いは、出向元、出向先のどちらになるのでしょうか。
 労働者性認められず労災保険の保護の対象でない
 A 出向労働者に対する労災保険の適用について、行政解釈では、「出向労働者に係る保険関係が、出向元事業と出向先事業とのいずれにあるかは、出向の目的及び出向元事業主と出向先事業主とが当該出向労働者の出向につき行った契約ならびに出向先事業における出向労働者の実態等に基づき、当該労働者の労働関係の所在を判断して、決定すること」とされています(昭35・11・2 基発第932号)。
 ここでいう「労働関係の所在」とは、一般に、出向元、出向先のどちらが労働者の賃金を負担しているかではなく、出向労働者がどちらの事業で労務を提供しているかで判断することとされています。
 したがって、出向労働者は、出向先で労務を提供するのが通常ですから、労災保険は、出向先で適用することが原則となります。
 それでは、お尋ねのケースのように、出向先で役員になる者の労災保険の適用についてはどのように扱うことになるのでしょうか。
 そもそも、労災保険制度の保護の対象となるのは、職業の種類を問わず、労災保険法の適用を受ける事業に使用される者で、賃金を支払われる者となります。つまり、労働基準法第9条に規定されている労働者と同義であって、使用従属関係にある者を指すわけです。
 したがって、法人、団体、組合などの代表者または執行機関たる者など、事業主との関係において使用従属関係がない者は、「労働者」に該当しません(昭23・1・9 基発第14号、昭63・3・14 基発第150号 平11・3・31 基発第168号)。
 つまり、これらの者には、原則として、労災保険制度の適用はないことになります。
 お尋ねのAさんについては、出向元である御社と雇用関係が継続している場合であっても、勤務の実態は出向先にあり、出向先では代表取締役となるということです。
 そうしますと、一般には、代表権あるいは業務執行権を有することになると思われ、事業主と使用従属関係にない者になると考えられますので、労災保険制度の適用を受ける「労働者」には該当しないことになりましょう。
 なお、代表取締役ではなく、法人の重役の労災保険の取り扱いについて、行政解釈では、「法人の取締役、理事、無限責任社員等の地位にある者であっても、法令、定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる者以外の者で、事実上業務執行権を有する取締役、理事、代表社員等の指揮、監督を受けて労働に従事し、その対償として賃金を得ている者は、原則として労働者として取り扱う」とされています(昭34・1・26 基発第48号)。
 ただし、Aさんは、代表取締役になるということですから、このケースには該当しないといえます。

              ケース16
  Q ヘルパーが訪問先で蜂に刺されて負傷したが
 当社のホームヘルパーが、訪問先の利用者宅で介護サービスを行っていたところ、開いていた窓から数匹の蜂が入って来て、その蜂に刺されてしまいました。事情を聞くと、その利用者宅の軒下に蜂が巣を作り、多数飛んでいたということでした。この災害は、業務上災害と認められるのでしょうか。
 故意に巣を刺激する行為なければ業務上の災害に
 A ある災害が業務上災害と認められるためには、その災害に業務遂行性と業務起因性が認められることが必要です。
 業務遂行性とは、「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること」をいいます。
 したがって、通常、労働契約に基づき、労働者が本来の担当業務を行っている最中は、業務遂行性が認められることになります。
 業務遂行性については、事業場内で業務に従事している場合はもちろん、事業場外で業務に従事している場合も認められますから、お尋ねのケースのように、介護サービスの利用者宅での業務についても、特別な事情がない限り、業務遂行性に関しては特に問題ないと考えられます。
 一方、業務起因性とは、「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること」に伴う危険が現実化したものと経験則上認められることをいいます。
 つまり、業務と災害との間に、一定の因果関係がなければならないわけです。
 この「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること」とは、業務遂行性のことですから、業務遂行に伴う危険が現実化したものと認められれば、業務起因性があるということになります。
 一方、労働者が私的行為や恣意的行為によって災害が発生が発生した場合は、業務起因性は認められず、その災害は業務外とされます。
 お尋ねのケースは、ホームヘルパーが、訪問先の利用者宅での介護業務中に、窓から入って来た蜂に刺されたというものです。
 業務中に蜂などに刺されたケースについて、過去の認定事例では、河川護岸工事現場での作業中に土蜂に刺されたケース(昭25・10・27 基収第2693号)について、本件災害は、当該作業に起因するものとして、業務上災害と認められています。このケースは、作業当日、数匹の蜂が作業場付近を飛び回っており、作業者などもどこかに巣があるのだろうと思っていたという事案でした。
 また、配管工が草むらでの作業中に、その地に多く生息するハブにかまれたケース(昭27・9・6 基災収第3026号)でも、危険な職場環境に起因したものとして、業務上災害と認められています。
 そこで、改めてお尋ねのケースを見てみますと、ホームヘルパーが負傷された利用者宅の軒下には、蜂が巣を作っていたということで、被災時には、蜂が多くみられたということです。
 そうしますと、そのホームヘルパーの負傷については、利用者宅での介護業務に内在する危険が現実化したものとみることができましょう。
 ただし、前述しましたように、労働者の私的行為や恣意的行為によって発生した災害には、業務起因性は認められず、その災害は業務外とされます。
 したがって、例えば、ホームヘルパーの方がふざけて蜂の巣を刺激して蜂に刺された場合や、会社から介護保険の適用外となる用務などは、行わないよう指示が徹底されていたにもかかわらず、単なる個人的な善意で蜂の巣を駆除しようとして蜂に刺されたような場合は、業務外と判断される可能性が高いといえましょう。
 

     雪割草

  梅 一輪

 

          ケース14
 Q 労災申請に添付する診断書の費用はどうなる
 当社に、業務上災害による右腕のケガで通院している者がいるのですが、先日、労働基準監督署から治ゆの認定を受けました。若干の障害が残ったために、障害補償給付の申請を行う予定ですが、申請の際に添付する診断書の費用も労災保険から支給されるのでしょうか。
 障害補償給付を請求する場合の診断書料は支給に
 A 労働者が被った業務上災害による負傷または疾病が治ゆしたときに、身体に一定の機能障害が残った場合には、障害補償給付が支給されます。
 障害補償給付には、障害等級第1級から第7級までの者に対する障害補償年金と障害等級第8級から第14級の者への 障害補償一時金があります(その他特別支給金なども支給されます)。
 この障害補償給付を受ける場合には、「障害補償給付支給請求書」(様式第10号)に、必要事項を記入し、所轄労働基準監督署長に提出することになります。
 この請求書には、次のような資料を添付しなければなりません(労災保険法施行規則第14条の2第3項)。
(1) 負傷又は疾病が治ったこと及び治った日並びに治ったときにおける障害の状態に関する医師または歯科医師の診断書
(2) 必要があるときは、障害の状態を証明し得るようなエックス線写真などの資料
 そして、この請求を受けた労働基準監督署長は、障害補償給付を支給するか否かの判断を行います。
 お尋ねは、この請求書に添付する医師の診断書の作成にかかる費用も労災保険から支給されるかというものです。
 労災保険における診断書料の取り扱いについて行政解釈は、保険給付を受けようとする者及び現に保険給付を受給中の者が規則の規定に基づいて提出した診断書については、診断書に要する費用を支給することとしたうえで、その支給対象となる具体的な診断書を示しています(昭56・9・2 基発第555号、昭60・4・11 基発第209号、昭61・4・30 基発第261号)。
 そして、解釈で示されている診断書の1つに、障害補償給付の支給を受けようとする受給権者が、障害補償給付請求書に添付して提出した「障害の部位及び状態に関する診断書」があります。
 したがって、お尋ねのケースの診断書料については、労災保険から支給が受けられるわけです。
 お尋ねの場合の診断書に要する費用の支給額は前掲行政解釈により3000円となっています。
 なお、療養補償給付などの受給者が、残存する障害について障害補償給付を請求する場合の、障害補償給付請求書に添付して提出した診断書の費用については、障害補償給付の支給決定の結果に関係なく、労災保険から支給されることとされています。
 余談ですが、その他に診断書の費用が支給されるものには、例えば、障害補償年金の受給者が、障害の程度に変更があったとして、障害補償給付変更請求書に添付して提出した診断書などがあります。
 ただし、労災請求にかかる診断書料のすべてについて、労災保険から支給がされるわけではありません。
 例えば、業務上と思われる災害について、労災請求を行い、その災害が業務外と判断された場合は、請求書に添付した診断書の費用は、労災保険から支給されません。

              ケース13
  Q 1ヵ月変形で勤務割特定した後の変更可能か
 1ヵ月単位の変形労働時間制の適用を検討しております。具体的には、毎月28日までに翌月分の勤務割表を作成し、労働日・労働時間を特定したいのですが、変形期間開始後に勤務割表を変更する必要が生じた場合、いったん特定した勤務割を変更できるのでしょうか。
 就業規則に変更事由定めた変更条項があれば可能
 A 1ヵ月単位の変形労働時間制は、1ヵ月以内の一定期間(変形期間)を平均して週40時間を達成することを認める制度です。この制度を実施するためには、労使協定または就業規則その他これに準ずるものに、@変形期間、A変形期間の起算日、B変形期間内の所定労働日、C各所定労働日ごとの所定労働時間―を定めなければなりません。B及びCの定め方については、「変形期間における各日、各週の労働時間を具体的に定めることを要し、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものであること」とされています。(昭63・1・1 基発第1号、平9・3・25 基発第195号、平11・3・31 基発第168号)。
 また、就業規則には、各日の労働時間の長さだけでなく、各日の始業・終業の時刻を記載しなければなりません。(前掲行政解釈)。
 しかし、就業規則などで所定労働日と各日の所定労働時間を特定しておくことが困難な場合もあることから、行政解釈は、「業務の実態から月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業終業時刻、各直勤務の組み合わせの考え方、勤務割表の作成手続き及びその周知方法等を定めておき、それにしたがって各日ごとの勤務割は、変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる」としています(昭63・3・14 基発第150号)。
 お尋ねでは、御社は、この方法をとり、具体的な勤務シフトの特定は月ごとに作成する勤務割で指定しているということです。では、勤務割により所定労働日と所定労働日ごとの所定労働時間を特定した後、変形期間の途中で、勤務シフトを変更することは可能なのでしょうか。
 この点については、「就業規則上、労働者の生活に対して大きな不利益を及ぼすことのないような内容の変更条項を定めることは同条が特定を要求した趣旨に反しないものというべきであるし、他面、就業規則に具体的変更事由を記載した変更条項を置き、当該変更条項に基づいて労働時間を変更するのは就業規則の「定め」によって労働時間を特定することを求める労基法32条の2の文理面にも反しないものというべきである」としています(JR東日本事件 平12・4・27 東京地判、同旨JR西日本事件 平13・5・30 大阪地判・平14・6・25 大阪高判)・
 ただし、変形期間の途中で勤務シフトの変更を行う場合は、就業規則に、@勤務割による勤務指定後の勤務シフトを変更する場合がある旨を定めること(変更条項)、Aどのような場合に勤務シフトの変更が行われるかを労働者が予見することが可能な程度に具体的な変更事由を定めること―――が必要とされています。
 この場合、「業務上の必要がある場合」などの包括的な変更事由のみを定める変更条項は無効とされます。
 以上の点から、お尋ねの場合には、就業規則に具体的な変更事由を規定した変更条項があり、かつ、変更事由に該当する事情が生じたということであれば、勤務シフトを変形期間の途中で変更することが可能といえます。
 

 さつき プロの作品

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               ケース12
 Q 36協定の届出を本社が一括で行いたいが
 当社では、毎月4月1日が36協定の更新日のため、3月中に、本社支社がそれぞれ労働者代表を選出して36協定を締結し、所轄の労基署に届け出ています。 先日取引先で本社が一括して届け出る方法があると聞きました。当社もこの方法を採用したいのですが、何か条件があるのでしょうか。
 過半数労組との協定なら一定の要件満たせば可能
 A 労働基準法第36条により、労働者に時間外労働や休日労働をさせる場合は、事前に当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数代表者)との書面による労使協定(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ることが使用者に義務づけられています。
 労働基準法の各規定は、事業場単位(原則として場所が異なれば別の事業場とされます)で適用されますから、36協定の締結・届け出も、事業場ごとに行うことが原則です。
 このため、多くの企業が本社、支社、営業所など複数の事業場を有していますが、36協定の締結・届出の手続きは、本社は本社の分を、支社は支社の分を営業所は営業所の分をというように、事業場ごとに行うことが原則となるわけです。
 では、本社が支社や営業所の分も一括して36協定を締結し、届け出を行うことはできないのでしょうか。
 この点については、@労働者側の締結当事者が過半数労働組合であること、A@の過半数労働組合が本社で一括して手続きを行なおうとする事業場の労働者の過半数を組織していること―――の2つを満たす場合に限り、本社と当該過半数労働組合の執行部とが36協定を締結し、その他の事業場(Aの要件を満たす事業場に限ります)では、その36協定の内容に基づき、所定事項を届け出様式に記載して所轄労働基準監督署長に届け出ることが認められています(昭24・2・9 基収第4234号)。
 さらに、上記の2つの条件を満たす場合であって、かつ、本社とAの条件を満たす事業場の36協定の内容が同一である場合には、本社がAの条件を満たす事業場の36協定を一括して本社の所轄労働基準監督署長に届け出ることが認められています(平11・3・31 基発第169号)。
 この方法をとる場合、本社では、本社とAの条件を満たす事業場の数を合わせた部数の36協定届(様式第9号)を所轄労働基準監督署長に届け出ることになります。
 また、ここでいう「36協定の内容が同一である場合」とは、様式第9号の記載事項のうち、(イ)事業の種類、(ロ)事業の名称、(ハ)事業の所在地(電話番号)、(ニ)労働者数―――以外の事項が同一であることをいうとされています(前掲通達)。
 すなわち、時間外労働をさせる必要のある具体的事由、業務の種類、所定労働時間、延長することが出来る時間(1日・1日を越える一定の期間・1年間)、休日労働をさせる必要がある具体的事由、業務の種類、所定休日、労働させることができる休日並びに始業及び終業の時刻、協定の有効期間、協定の当事者である労働組合の名称や使用者の職名・氏名などはすべて同一でなければなりません。
 したがって、労働組合がない企業や、労働組合がいずれの事業場においても過半数労働組合に該当しない企業では、本社一括の36協定の締結も、本社一括の届け出もできません。また、過半数労働組合がある企業でも、一部の事業場でその労働組合が過半数労働組合に該当しない場合は、その一部の事業場に関しては、本社一括の締結・届け出はできず、事業場ごとに36協定の締結・届出を行わなければなりません。

              ケース11
  Q 退職予定者の年休取得で計画付与分どう扱う
 当社では、毎月12月個人別に3日間の年次有給休暇の計画付与を実施しています。3月末で退職予定の社員から計画付与前に残余の全年休の請求がありましたが、拒否できないのでしょうか。また、計画付与日決定後に介護休業を開始した社員の取り扱いはどうすればよいのでしょうか。
 計画付与日前に退職する者の請求は拒否できない
 A 年次有給休暇は原則として労働者の請求する時季に与えなければなりません。
 ただし、請求された時季に年休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、他の時季に年休を与えることができます。
 この時季変更権を行使するに当たっては、会社は、変更権を行使する前に、まず代替要員の配置など事業の正常な運営を妨げないための措置をとらなければならず、このような措置をとらずに時季変更件を行使するような方法は認められません。
 まず、お尋ねの1点目の退職予定者からの計画的付与の日数分も含めた年休の請求についてですが、原則として年休の計画的付与の場合、労働者の時季決定権及び使用者の時季変更権は共に行使できないこととされています(昭63・3・14 基発第150号)。
 つまり、労使協定により計画的付与の対象とされた年休については、労働者が取得する時季を指定することはできず、仮に別の日に取得することを申し出ても、使用者はこれを拒否することができます。
 しかし、そもそも、年休とは、労働日の労働義務を免除するというもので、その付与日は労働日でなければなりません。
 すなわち、労働関係がなくなる退職後を付与日とする計画的付与はできないということになります。
 行政解釈でも、「計画的付与は、当該付与日が労働日であることを前提に行われるものであり、その前に退職することが予定されている者については、退職後を付与日とする計画的付与はできない。したがって、そのような場合には、計画的付与前の請求を拒否できない」としています(前掲通達)。
 次に、計画的付与日決定後に介護休業の申し出を行い休業した者の取り扱いについてみてみましょう。
 行政解釈では、育児休業中の取り扱いについて、「育児休業申出前に育児休業期間中の日について時季指定や労使協定に基づく計画付与が行われた場合には、当該日には年次有給休暇を取得したものと解され、当該日に係る賃金支払日については、使用者に所要の賃金支払義務が生じるものであること」とされています(平3・12・20 基発第712号)。
 介護休業についても同様に考えることができます。
 つまり、年休の計画的付与の場合、前述のように、労働者の時季指定権や使用者の時季変更権の行使はできないため、介護休業の申出より前に計画的付与日が決まっていた場合には、その後に介護休業に入ったとしても、当該計画的付与日については、年休の取得として取り扱わなければならないわけです。
 お尋ねのケースについては、介護休業の申出時点で、すでに計画的付与日が決定していたということですから、介護休養中の社員を計画的付与の対象から除外することはできません。
 したがって、計画付与の3日間については、介護休業中の社員についても、年休を取得したものとして取り扱い、所定の賃金を支払わなければなりません。
 

 節分草が咲き出した。

内陸最大の清原工業団地のメインロード

 

                 ケース10
 Q 1年単位の変形制を期間途中で廃止したいが
 当社では、今年の1月1日から対象期間が1年の変形労働時間制を導入していますが、諸事情から3月末をもって1年単位の変形労働時間制を廃止したいと考えております。その際、対象者全員に対して、割増賃金の精算を行い、不足分の賃金を支払えば問題はないでしょうか。
 割増賃金精算しても対象期間途中で廃止できない
 A 労働基準法第32条の4に定められている1年単位の変形労働時間制は、1ヵ月を超えて1年以内の一定期間(対象期間)を通じて、適正かつ計画的な労働時間管理を行い、休日の増加・労働時間短縮を図る制度です。
 したがって、使用者が業務の都合で任意に労働時間を変更するような場合は、そもそも同制度を実施することはできません(平6・3・11 基発第132号)。
 1年単位の変形労働時間制では、対象期間内の所定労働時間を週平均40時間以内に収めることなどを条件に、特定の日・週に法定労働時間を超える所定労働時間の設定が認められています。
 同制度を導入する場合には、労使協定で、@対象労働者の範囲、A対象期間及びその起算日、B特定期間の有無、C対象期間中の所定労働日及び各日との所定労働時間(区分期間を設ける場合は初回の区分期間のみ。その他の区分期間は総所定朗度時間数)、D労使協定の有効期間―――の5項目について定めなければなりません。
 @対象労働者には、(イ)対象期間の途中で採用した者、(ロ)対象期間の途中で退職した者、(ハ)対象期間の途中で他の事業場から配転してきた者―――などを含めることができます。
 ただし、その場合は、使用者は、同法上時間外労働時間となる時間及び休日労働となる時間を除いた当該労働者の実労働時間が、実勤務期間の法定労働時間の総枠を超える場合には、その超えた時間について割増賃金を支払うことが義務づけられます(同法第32条の4の2)。これを割増賃金の精算といいます。
 それでは、お尋ねのように1年単位の変形労働時間制を導入後に、対象者全員に割増賃金の精算を行えば、同制度を対象期間の途中で廃止して、原則的な労働時間制度に戻すことができるのでしょうか。
 この点については、1年単位の変形労働時間制は協定された対象期間を単位として適用されるものですので、労使の合意によって対象期間の途中でその適用を廃止することはできないと解されています。(「労働基準法(上)厚生労働省令労働基準局編」)。
 1年単位の変形労働時間制の対象期間は、1ヵ月を超えて1年以内の期間内であれば、3ヶ月、6か月、9ヶ月などでも差し支えありません。つまり、一年間を通じて変形労働時間制を採用することもできれば、1年間の一定期間の時期についてのみ適用することもできるわけです。
 したがって、お尋ねのような事態を回避するためには、当初から対象期間を3ヶ月など比較的短い期間しておくことなどが考えられます。
 なお、いったん労使協定を締結して、それを所轄労働基準監督署長に届け出た場合には、労使協定の中に「労使双方が合意すれば、協定期間中であっても変形制の一部を変更することがある」などと定めていても、対象期間開始後に1年単位の変形労働時間制の内容を変更することはできません(昭63・3・14 基発第150号、平6.3.31 基発第181号)。
 以上、1年単位の変形労働時間制については、対象期間の途中で、制度を廃止することも、制度の内容の一部を変更することもできません。

              ケース9
  Q 時給が作業内容や曜日で違う割賃の計算は
 当社では、アルバイトの梱包・組立作業印の時給を梱包は平日1000円、土・日1100円、組立平日1300円、土・日1400円支払っています。通常は、1日については、どちらか一方の作業ですが、例えば、平日に梱包を6時間行い、その後組立を3時間行った場合の割増賃金はどう計算するのでしょうか。
 法定労働時間を超えた部分の作業の時間額で算定
  A お尋ねは、梱包作業(時給額1000円)を6時間、その後、組立作業(時給1300円)を3時間、合計9時間作業を行わせた場合、割増賃金はどのように計算すればよいのかとういうものです。
 労働基準法第37条第1項では、「使用者が、・・・労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日のちんちん雄計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で起算した割増賃金を支払わなければならない」と規定しています。
 ここでいう「通常の労働時間又は労働日の賃金」とは、割増賃金を払うべき労働が深夜でない所定労働時間中に行われた場合に支払われた賃金をいいます。
 例えば、A作業とB作業の2つの作業に従事している労働者が、所定労働時間中にA作業に従事し、時間外にB作業に従事した場合には、その時間外労働についての「通常の労働時間又は労働日の賃金」とは、B作業について定められている賃金となります。
 行政解釈でも、危険作業を行う場合に危険作業手当を支給している作業場で、危険作業が時間外、休日または深夜に行われた場合には、「危険作業手当を法第37条の割増賃金の基礎となる賃金に算入して計算した割増賃金を支払わなければならない」とされています。(昭23・11・22 基収第1681号)。
 お尋ねのケースでは、割増賃金を支払うべき労働つまり、1日8時間を超える労働が行われたのは、組立作業(時給額1300円)を行った1時間となります。
 したがって、他に諸手当などが支払われていない場合には、割増賃金の算定基礎となる時間単価は平日の組立作業の時間給である1300円となりますから、割増賃金単価は少なくとも、その2割5分(以上)増し、すなわち、1時間当たり1625円(以上)となります。
 つまり、お尋ねのケースについては、梱包作業6時間について、1000円×6時間=6000円、組立作業3時間のうち、法定労働時間内である2時間について、1300円×2時間=2600円、時間外労働となる組立作業1時間について、1300×1.25(以上)×1時間=1625円(以上)の賃金を支払うことになります。
 御社のアルバイトの場合、精皆勤手当などの諸手当がなく、時間給のみの場合には、法定労働時間を超えて労働したときに従事していた作業に対する賃金(時給額)が割増賃金算定の際の時間単価となります。
 したがって、平日に時間外労働として梱包作業を行った場合は、時間単価1000円の2割5分(以上)増しの1250円(以上)土曜・日曜日に時間外労働として、梱包作業を行った場合の割増賃金は、1375円(以上)、土曜・日曜日に時間外労働として、組立作業に従事した場合の割増賃金は、1750円(以上)となります。
 

 梅の木 そろそろ開花?

  冬の柿の木

 

              ケース8
 Q 夫が失業中の女性社員に家族手当払うひつようは
 当社では、賃金規定で家族手当の支給基準を「扶養家族を有するとき」と定めています。ある女性社員(仮にA)が、夫の失業を理由に家族手当の支給を求めてきました。妻が働いていない男性社員には、家族手当を支給しているのですが、Aの求めに応じなければならないのでしょうか。
 同じ条件の男性社員に支給していれば同様に支給
 A 家族手当とは、一般的に従業員の生活費への配慮を目的に家族構成などに応じて会社が従業員に支給するものです。
 この家族手当については、定義や支給の是非、支給基準などは法定されていないため、その決定も労使に委ねられています。
 ただし、家族手当も賃金ですから、どのような支給基準でもよいわけではありません。なぜなら、労働基準法第4条では「労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱をしてはならない」として、女性であることを理由とする賃金の差別的取扱を禁止しているからです。
 上記の「女性であることを理由として」とは、「労働者が女性であることをのみ理由として、あるいは社会通念上として又は当該事業場において女性労働者が一般的又は平均的に能率が悪いこと、勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者でないこと等を理由とすること」とされています(昭22・9・13 発基第17号、平9・9・25 基発第648号)。
 また、職務、能率、技能、年齢、勤続年数などによって、賃金に個人的な差異があることは、差別的な取扱には当たりませんが、例えば、これらの条件が同じである場合に、男性はすべて月給制、女性はすべて日給制として、男性はその労働日数にかかわらず一定額の月給を支給されるのに対して、女性は労働日数の多寡によって月によって賃金が異なるなど女性と弾性の賃金額に差を付けたり、女性の昇進を遅らせることは、女性であることを理由とする差別的取扱に当たるとされています(昭22・9・13 基発第17号、昭25・11・22 婦発第311号、昭63・3・14 基発第150号、平9・9・25 基発第648号)。
 なお、同条に違反して、女性であることを理由に賃金について男性と差別的な取扱をした使用者は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます(同法第119条第1号)。
 お尋ねに似た事例で、扶養親族を有し、主として生計を維持する者に支給されていた家族手当・世帯手当について、共働きの女性従業員には支給制限するという賃金規定の効力が争われたものがあります。
 判例では、「男子行員に対しては、妻に収入(所得税法上の扶養控除対象限度額を超える所得)があっても、本件手当等を支給してきたが、被控訴人のような共働きの女子行員に対しては、生計維持者であるかどうかにかかわらず、実際に子を扶養するなどしていえも夫に収入(右限度額を超える所得)がある本件手当等の支給をしていないというのだから、このような取扱は男女の性別のみによる賃金の差別扱いであると認めざるを得ない」として、同法第4条に違反すると判断しています(岩手銀行事件 平4・1・10 仙台高判)。
 したがって、御社において妻が無収入である男性社員に家族手当が支給されている場合には、夫が無収入であるAさんについても、家族手当を支給しなければなりません。
 なお、家族手当の支給基準は、@所得税法上の控除対象配偶者を有する者を対象とする、A年間収入が130万円以内の配偶者を有する者を対象とする―――などまったくの男女同一の基準としたうえで、基準を満たした者には、男女の分け隔てなく必ず支給しなければなりません。

              ケース7
  Q 資格ごとの定額住宅手当は割賃基礎に算入か
 当社では、住宅手当について、賃貸住宅・持ち家に区分し、従業員の資格等級に応じ、各資格等級ごとの一定額を住宅手当として支給しています。そして、この住宅手当は、時間外の割増賃金の算定基礎に含めていません。当社のような取扱は、労働基準法上、問題があるでしょうか。
  A 住宅に要する費用に応じたものではないため算入
 割増賃金の算定基礎賃金から除外できる賃金は法定されており、具体的には、@家族手当、A通勤手当、B別居手当、C子女教育手当、D住宅手当、E臨時地に支払われた賃金、F1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金―――に限られています。(労働基準法第37条第4項、同法施行規則第21条)。
 御社では、賃貸住宅・持ち家に分け、各資格等級(ランク)ごとの一定額を住宅手当としているということです。そして、住宅手当という名称で手当を支給していることから、割増賃金の算定基礎賃金から除外できるとお考えのようです。
 しかし、ここで注意しなければならないのは、住宅手当という名称で支給しているからといって、当然に割増賃金の算定基礎賃金から除外できるわけではなちという点です。
 といいますのは、割増賃金の算定基礎賃金から除外できる住宅手当について、行政解釈では、「割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱う」としているからです。(平11・3・31 基発第170号)。
 それでは、ここでいう「住宅に要する費用に応じて算定される手当」とは具体的にどのようなものをいうのでしょうか。
 「住宅に要する費用」について、前掲行政解釈は、「賃貸住宅については、居住に要する必要な住宅(これに付随する設備等を含む。以下同じ)。の貸借のために必要な費用、持家については、居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用をいう」としています。
 つまり、「住宅に要する費用」とは、一般には、賃貸住宅であれば家賃、持家であれば月々のローンなどが該当することになりましょう。
 こうした費用に応じて支給額が決定されるものが、割増賃金の算定基礎賃金から除外できる「住宅手当」に該当することになるわけです。
 例えば、賃貸住宅居住者には家賃(月額)の○%、持家居住者にはローン月額の○%など、住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給することとしている場合は、ここでいう住宅手当に該当することになります。
 また、例えば、家賃(月額)5〜10万円の者は2万円、家賃(月額)10万円を超える者は3万円など、住宅に要する費用をランク分けして、各ランクごとに支給額を決定している場合も住宅手当に該当します。
 一方、@単体住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円など、住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの、A扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には定額で1万円など、住宅以外の要素に応じて定率または定額で支給することとされているもの、B全員に一律で定額を支給することとされているもの―――については、ここでいう住宅手当には該当しません。
 御社の住宅手当は、資格等級別に定めた一定額を住宅手当として支給しているということですから、上記Aの「住宅以外の要素に応じて定率または定額で支給することとされているもの」に該当することになり、割増賃金の算定基礎賃金から除外できません。
 

 小田原駅近くの富士山

  キヤンプ場の巨大氷柱

 

             ケース6
 Q 振込みと現金との併用による賃金支払は
 当社では、社員の毎月の給与及びボーナスの支払については、希望者を対象に銀行振り込み制を採用しています。その中の1人から、月給のうち毎月5万円だけ給料日に現金で支払って欲しいという要望が出されました。法的にはこうした併用方式も可能でしょうか。
 振り込まれる額を明らかにした同意書あればよい
 A 労働基準法第24条では、労働者に賃金を支払う際の5原則として、@通貨払い、A直接払い、B全額払い、C毎月(1回以上)払い、D一定期日払い―――を使用者に対して義務付けています。
 ただし、その中で、通貨払いによる方法以外のものとして「労働者の同意を得た場合」には、労働者の指定する労働者の預貯金口座などへの振込みを認めています。(労働基準法施行規則第7条の2第1項)。
 さて、お尋ねについてですが、賃金の支払い方法に、前述のとおり現金若しくは振り込み制の2つがあるわけですが、1つの企業・事業場で、どちらが一報した採用できないというものではありません。
 また、労働者各人についても、支払い方法はどちらか一方に限定しなければならないということはありません。例えば、毎月の給与については現金で支払い、年2回の賞与については振り込み制にするということも労働者の同意があれば可能です。さらに、支払日における支払額のうち、一部を現金で支払い、残余の部分を振り込み制にすることも労働者の同意があれば可能となります。
 それでは、お尋ねのように、1回の賃金支払額のうち、5万円を現金で支払い、残りを振り込みにする場合、どのような手続きが必要になるか考えて見ましょう。
 まず、賃金の口座振込みが可能とされる要件は、「労働者の同意」です。この「同意」は、労働者の意思に基づくものであれば、その形式は問われていません(昭63・1・1 基発第1号)。したがって、書面による「同意書」のようなものが絶対に必要というわけではありません。
 また、振込みは、「当該労働者が指定する」当該労働者の預貯金などへの振込みとされています。そして、労働者から振込先金融機関の口座指定があれば、「同意」が得られたと解されます(前掲行政解釈)。こうしたことから、一般的には、振込先金融機関名、口座番号を記した書面を作成することになります。
 行政解釈もまた、口座振込み実施に関して、書面による個々の労働者の申出または同意により開始し、その書面には、@振込みを希望する賃金の範囲及びその金額、A指定金融機関の店舗名、預貯金などの種類・口座番号、B開始希望時期―――を記載するように指導するとしています(平10・9・10 基発第530号 平13・2・2 基発第54号)。
 すなわち、振込みによる賃金支払いの内容について、賃金の種類(月給、賞与などの種別)や振り込まれる額(支払額の全額なのか一部なのか)が明確に合意されていれば、支払われる賃金の一部を現金で支払い、他の部分を振り込みとする方法も可能です。
 その場合、例えば、「毎月○日に支払われる給与のうち、○○円を振込み、残余の部分は現金による受領とする」とする方法、また、「毎月○日に支払われる給与のうち、○○円を現金による受領とし、残余の部分は振込みとする」とする方法でも構いません。要するに労働者に支払われる賃金の中で、振り込み制となる部分が明確となっていて、その内容に労働者が同意していれば、お尋ねのような併用方式も可能ということです。

              ケース5
 Q 試用期間中に本採用告げず試用延長は可能か
 当社では、1月1日に1ヵ月の試用期間で3人を採用しました。2人には、試用期間満了の前日に本採用の辞令を交付しましたが、1人(仮にA)には、業務適正が判断できなかったため、本採用の辞令を交付していません。Aに対しては試用期間を延長したものと取り扱って問題ないでしょうか。
 試用期間中に意思表示をしていなければ本採用に
 A お尋ねは、具体的な意思表示をせず試用期間が経過した場合、試用期間を延長したものと扱えるかというものです。
 会社が試用期間の満了までに労働者の適格性や能力を判断することが難しいとして、試用期間が延長されることもあります。この点について判例では、就業規則などに、試用期間の延長に係る根拠となる規定や合意があったかどうかを問題としています。
 具体的には、就業規則または労働契約に「試用期間中または試用期間満了時に社員としての適格性を判断し難い特別な事情がある場合は、○ヶ月を超えない範囲で試用期間を延長する」などの定めがあることが前提条件となりましょう。
 判例では、「会社は、試用期間が満了した者については、これを不適格と認める場合のほかは原則として社員に登用しなければならない義務あるものと解され、従って前期試用規則4条但書の試用期間の延長規定は右原則に対する唯一の例外である」と、就業規則に試用期間を延長する旨の規定がある場合に限って試用期間の延長を認めることとしたものがあります(大阪読売新聞社事件 昭45・7・10 大阪高判)。
 したがって、試用期間を延長するためには、原則として、@就業規則などに試用期間を延長することがある旨の規定があること、A試用期間の延長が権利の乱用や公序良俗違反、信義則違反に当たらないこと、B試用期間の長さが本人雄的確性を判断するために必要な合理的な範囲内であること―――が必要となります。
 また、労働者に対し、労働契約の締結時に@試用期間を延長することがあること、A試用期間を延長する場合の理由とその長さ(し羽陽期間の満了の時期)―――を明示しておく必要もあります。
 それでは、具体的な意思表示をせずに試用期間が経過した場合、試用期間を延長できるのでしょうか。
 試用期間は、従業員として不適格と認められる行為があった場合は、労働契約を解除できるという解約権が留保された期間とされ、本採用の拒否は、解約権の行使、すなわち解雇に当たりますが、通常の解雇よりは広い範囲の理由が認められているとされています(三菱樹脂事件 昭48・12・12 最大判)。
 しかし、試用期間中に会社が何ら本採用の拒否や試用期間延長などの意思表示をしなければ、解雇権が留保された期間の経過後は、自動的に本採用されたことになります。
 判例では、「就業規則中には『3ヶ月間の試用期間は人物判定の都合上延長することがある。』旨の規定が存することを認めることが出来るが、・・・当初の試用期間を満了するにあたり、右期間を延長する旨の意思表示はもとより解雇する旨の意思表示も受けなかったことは明らかであるから、右期間を満了した翌日・・・本採用の従業員の地位を取得したと解すべき」としたものがあります(上原製作所事件 昭48・5・31 長野地諏訪市判)。
 したがって、試用期間を延長する場合も、本採用を拒否する場合も、会社は試用期間の満了日終了までにその旨の意思表示をしなければなりません。そのため、「1ヵ月の試用期間は人物判定の都合上延長することがある」旨の規定があったとしても使用期間満了日終了までに何の意思表示もしなければ、Aさんは2月1日に本採用されたことになります。
 

 白一色に気の陰が!

  心の森キャンプ場も白一色

 

        ケース4
 Q 有紀契約の中に途中退職の賠償規定できるか
 当社ではこのたび、広告デザインの業務を担当する者を5年契約で採用することになりました。できるだけ長く勤めてもらいたいので、契約内容の中に、途中退職の場合は損害賠償を請求することを含めたいと考えております。このような契約は違法でしょうか。
 1年以内の退職による実損害の賠償なら請求可能
 A 労働基準法は、期間の定めある労働契約の上限を原則3年と定めています。ただし、高度な専門的知識・技術・経験を有する者や満60歳以上の者との契約については、最長5年とされていています(法第14条第1項)。
 お尋ねの広告デザインの業務に従事する者は、年収(1075万円以上)及び学歴・職務経験年数(大卒5年以上、高卒5年以上)などの要件を満たしている者に限り、5年までの有期労働契約が可能です(平成15年厚生労働省告示第356号)。そこで、お尋ねのケースもこれに該当するとして、見ていくことにします。
 有期の労働契約は、期間を限定した労働契約であり、契約期間中は、原則として契約の解約はできません。これは、使用者側からの解約(解雇)、労働者側からの解約(退職)とも同じです。ただし、民法は、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は直ちに契約の解除をすることができる」と定めています(同法第628条)。
 そして、同条は、「この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う」としています。
 また、労働基準法第137条により、契約期間が1年を超える有期労働契約については、勤続1年経過日以後は、労働者は、民法第628条の規定にかかわらず、いつでも退職することができると定められています。
 ロ道基準法第137条の規定は、民法第628条の例外規定ですから、有期契約労働者が勤続1年経過日以後に退職した場合は、その退職理由を問わず、使用者の損害賠償請求権は認められないことになります。
 したがって、労働契約にそうした損害賠償の項目を盛り込むことは、労働基準法違反となります。
 では、1年以内の退職に係る損害賠償についてはどうでしょうか。
 労働基準法第16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償を予定する契約をしてはならない」と規定しています。これは、労働契約の期間の途中において、労働者の退職などによる債務不履行の場合に、一定額の違約金を定めたり、実害の如何にかかわらず賠償すべき損害賠償額を一定の金額として定めておくことを禁止したものです。
 しかし、ここで禁止しているのは金額を予定する賠償であり、「・・・現実に生じた損害について賠償を請求することを禁止する趣旨ではない」と解されています(昭22・9・13 発基第17号)。
 したがって、一般論としては、労働者の退職によって、現実に生じた損害であって、かつ、退職とその損害とに間に相当因果関係がある場合は民法第628条に基づく損害賠償請求権が認められることとなります。
 しかし、採用経費や業務に関連した研修の費用など事業を運営する上で同然に発生するものは会社が負担すべきものですから、この分を労働者の債務不履行により生じた損害として請求することはできないと考えられます。

              ケース3
 Q 有期契約者雇う際に更新の有無の明示必要か
 当社では、パートタイマーやアルバイトなどは6か月の有期契約で雇用しています。その際、賃金や労働時間などの労働事件については、書面で明示しているのですが、契約を更新するかしないかに関しては特段明示していません。この点について、法的に何か問題となることがあるでしょうか。
 契約更新の有無のほかに更新の判断基準明らかに
 A 労働基準法第15条により、使用者が労働者を雇入れる場合には、所定の労働条件を労働者本人に明示することが義務づけられています。
 労働者に明示すべき労働条件は、@労働契約期間、A終業の場所、従事すべき業務、B始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換、C賃金の決定、D退職(解雇の事由を含む)、E昇給、F退職手当、G臨時に支払われる賃金、賞与など、H労働者に労働者に負担させる食費など、I安全・衛星、J職業訓練、M休職―の14の事項とされています。
 このうち、@〜Dの5つの事項については、書面による明示が必要となります(E〜Mの事項は口頭で明示しても差し支えありません)。
 このほか、労働者と有期労働契約を締結する場合には、労使間のトラブル防止のため、法第14条第2項に基づき、使用者が講ずべき事項に関する基準(「炉有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号。以下「基準」といいます。))において、(イ)有期労働契約の締結に際して明示すべき事項、(ロ)雇止めの予告、(ハ)雇止めの理由の明示、(ニ)契約期間雄配慮―――の4つが定められています。
 したがって、有期労働契約を締結する場合は、法第15条により明示すべき労働条件(前記(イ))が
あるということです。
 基準により明示が必要となるのは、(1)契約更新の有無、(2)契約を更新する場合またはしない場合の判断の基準―――の2つで契約途中にこれらの内容を変更する場合も、遅滞なく、その旨を明示することとされています。
 (1)については、「有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであること」とされ、明示の例として、「自動的に更新する」、「更新する場合があり得る」、「契約の更新はしない」があげられています(平15・10・22 基発第1022001号)。
 したがって、更新の可能性が無い場合は、「契約の更新はしない」旨を明示することになりますが、更新の可能性がゼロではない場合には、「自動的に更新する」あるいは「更新する場合があり得る」旨を明示した上で、更新する場合の判断基準か、更新しないの場合判断基準かのどちらかを明示することになります。
 この判断基準については、前掲行政解釈において、@契約期間満了時の業務量により判断する、A労働者の勤務成績、態度により判断する、A労働者の勤務成績、態度により判断する、B労働者の能力により判断する、C会社の経営状況により判断する、D従事している業務の進捗条項により判断する―――が明示されています。
 この基準による事項については、書面明示が望ましいとされています。
 以上、有期労働契約を締結する場合には、労働基準法第15条による事項だけでなく、基準による事項の明示も必要です。
 
 

 キヤンプ場への雪道

   雪がやんで青空

 

         ケース2
 Q 予告と手当併用する解雇は手当をいつ払うか
 先月1日に雇入れた試用期間中の社員(仮にA)がいます。その者を今月末日で解雇することになり、この20日に通告することに決めました。この場合、解雇予告の日数が不足する分については、その日数分の解雇予告手当を今月の給料とともに、給料日(月の末日)に支払えば問題ないでしょうか。
 予告日数と手当分明示すれば解雇日払いでもよい
 A お尋ねは、労働者の解雇予告に関する件です。労働基準法第20条は、労働者を解雇しようとする場合の手続きとして、少なくとも30日前に予告をするか、30日前に予告をしないときは、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払うことを使用者に義務づけています(第1項)。
 お尋ねによれば、雇入れ後2ヶ月足らずのAさんを解雇するということです。Aさんは、現在はまだ試用期間中ということです。いわゆる試用期間中の者については、労働基準法第20条の解雇予告の規定は、原則として適用されません(同法第21条)。ただし、試用期間中の者であっても、試用期間が14日を超え、引き続き試用されている場合には、法第20条が適用されます(法第21条ただし書き)。
 したがって、Aさんについては、解雇予告の手続きが必要ということになります。
 次に、解雇予告の具体的な方法についてみてみましょう。
 お尋ねによれば、今月末日付で解雇することを今月20に通告するということです。このように、予告日数が30日未満の解雇を行う場合、「・・・予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合のいては、その日数を短縮することができる」との規定による(法第20条第2項)、解雇予告と解雇予告手当を併用することが可能とされています。
 そこで、これをお尋ねのケースにあてはめてみますと、今月20日に今月末日をもって雇用契約を終了するという解雇予告をするとすれば、予告期間の日数は10日(仮に今月が30日の月としておきます)となり、必要な解雇予告手当は平均賃金の20日分以上ということになります。
 さて、その場合の解雇予告手当はいつ支払えばよいのでしょうか。
 解雇予告手当の支払い時期について行政解釈は、平均賃金の30日分以上を支払う「即時解雇」については、「解雇の申し渡しと同時に支払うべきものである」としています(昭23・3・17 基発第464号)。
 それでは、解雇予告手当は、解雇予告手当の併用方式の場合はどうすればよいのでしょうか。この点に関しては、法文上必ずしも明確ではなく、また、即時解雇に係る前掲行政解釈のようなものも示されていません。
 そもそも。解雇予告手当は、解雇予告除外事由のない場合における即時解雇の効力発生要件として定められている性質のものと考えられています。そうすると、解雇予告と解雇予告手当を併用する場合には、予告期間が満了するまでの間は、労働契約が存続しているわけですから、予告の時点で予告手当も同時に支払う必要はなく、解雇日までに支払えばよいものと考えられます。
 ただし、こうした併用方式をとる場合には、予告に当たり、予告日数と予告手当の併用について明確に労働者に通知する必要があります。
 したがって、お尋ねのケースでは、今月20日に解雇を通告する際に、@解雇予告が解雇の10日前であること、A法定の解雇予告期間に不足する日数については、解雇予告手当を支払うこと、Bその支払いは今月末日であること―――を明示すればよいことになります。

       ケース1
 Q 兼業先で労災にあった社員に解雇制限あるか
 他社でアルバイトをしていた当社の社員(仮にA)が、アルバイト先で業務中に負傷し、療養のため3ヶ月ほど休業することになりました。この場合、当社にも、労働基準法の解雇制限が適用されるのでようか。また、待期期間の休業補償は、当社が行わなければならないのでしょうか。
 解雇制限は災害発生した事業場の使用者に定期洋画
 A 解雇制限について、労働基準法第19条では、使用者は、労働者が、@業務上災害、A産前産後休業―――により休業する期間及びその後30日間については、解雇してはならないと定めています。
 Aさんは、兼業先であるアルバイト先で業務中に負傷し、そのため休業を余儀なくされるということです。このように、2つの事業場に勤務する労働者が、一方の事業場で業務上災害により休業する場合、もう一方の事業場の使用者にも解雇制限の義務が適用されるのでしょうか。
 御社は、Aさんの使用者ではありますが、Aさんが負傷されたのは、あくまで、他の使用者の支配管理下でのことです。
 前述のように、労働者が、業務上災害により休業する期間及びその後30日間については、解雇が制限されています。しかし、これは、業務上災害で休業している者の使用者すべてに解雇制限義務が課されるという意味ではなく、自社の支配管理下で業務上災害に被災させてしまった使用者について、当該労働者に対する解雇が制限されると解されています。
 この点については、「本条の「業務上」とは、当該企業の業務により負傷し、又は疾病にかかった場合を意味するものであり、他の企業の業務により負傷し、又は疾病に掛かった場合は、本条の業務上とはいえない」とされています(「労働基準法」(上)厚生労働省労働基準局編)。
 したがって、Aさんのケースについては、兼業先の使用者についてのみ解雇制限義務が課され、御社には、解雇制限の適用はないということになります。
 なお、ここで注意しなければならないのは、お尋ねの場合、同条の解雇制限が適用されないといだけですので、これをもって解雇の効力が常に認められるというわけではありません。したがって、御社に私傷病休職制度があり、Aさんがその対象となる場合は、まず、Aさんに休職制度を適用することになりましょう。
 次に、労働基準法に基づく待期期間の休業補償についてです。同法では、労働者が業務上の傷病により療養のため、労働することができず、賃金を受けられない場合に、使用者に対し、その労働者の平均賃金の6割以上による休業補償を行うことを義務づけています(第76条)。
 ただし、休業4日目以降については、使用者の災害補償義務を労災保険制度が肩代わりする形になっており(労災保険法第14条)、実際は、休業開始から3日間の待期期間について、使用者が労働基準法に基づく休業補償を行うことになるわけです。
 お尋ねのケースについて、御社に休業補償の義務があるかについても、Aさんが負傷されたのは、あくまで、他の使用者の支配管理下ですから、解雇制限の適用と同様、御社には休業補償の義務はないと解するのが法の趣旨に合致するものといえます。
 この場合の休業補償の額についてですが、労働者が2つの事業場でそれぞれパートタイマーとして使用され、両事業場の使用者からそれぞれ賃金を支払われている者の平均賃金の算定について、行政解釈では、平均賃金の算定の際の「賃金の総額」は、両使用者から支払われた賃金の合算額ではなく、算定事由の発生した事業場で支払われた賃金のみをいうとしたものがあります(昭28・10・2 基収第3048号)。
 

 雪崩注意! ボタ雪

特集 労災V
              ケース20
 Q パートと契約社員しかいないが均衡どう図る
 当社は、数店舗を展開する小売業です。各店舗の店長に社員を配置し、店舗の従業員はパートと契約社員としています。契約社員数名はパートと同じ仕事ですが、社員にはパートと同じ仕事の者はおりません。この場合改正パート法に基づく社員との待遇の均衡を図ることが必要でしょうか。
 同一店舗・同一業務の契約社員と比較することに
  ご指摘のとおり、「短時間労働者の雇用管理改善等に関する法律」(「パート労働法」)が改正され平成20年4月1日から施行されます。
 改正法は、パートについて、同一の事業所の通常労働者と比較し、@職務の内容が同一か否か、A@を満たした以降の全雇用期間を通じて人材活用の仕組みと運用等が通常の労働者と同一の範囲内で変更すると見込まれるか否か、B労働契約に期間の定めがないまたは実質的に機関の定めのない労働契約と同視し得る状態にあるか否か―――の3要件により、4つに分類し、それぞれ義務・努力義務事項を定めています。
 具体的には、@〜Bを全部満たすパートは、通常の労働者と同視すべきパートとされ、通常の労働者との待遇差別が禁止されます(法第8条)。また、@とAを満たすパートには、職務関連賃金を通常の労働者と同一の方法で決定する努力義務などが課されます(法第9条第2項等)。@の要件のみ満たすパートや@〜Bの要件を1つも満たせないパートに関しても、それぞれ義務事項や努力義務事項があります。
 このため、各企業では、自社の雇用するパート(所定労働時間が通常の労働者より短い者をいいます。)がどの要件を満たすかを確認する必要がありましょう。
 この際に、問題となるのは、パートとの職務内容などを比較する「通常の労働者」の範囲です。
 この点については、「法第2条の「通常の労働者」とは当該事業所において、社会通念上にしたがい「通常」と判断される労働者をいう」とされています。(平19・10・1 基発第1001016号、職発第1001002号、能発第1001001号、雇児発第1001002号)。
 つまり、正社員だけが「通常の労働者」に該当するわけではなく、(イ)パートと同種の業務に従事する正社員などの正規型労働者がいる場合はその者、(ロ)こうした労働者がいない場合は同種の業務に基幹的に従事しているフルタイム労働者(フルタイムの基幹的労働者)―――と比較するとされています(前掲行政解釈)。
 ここでいう「フルタイムの基幹的労働者」とは、「当該業務に恒常的に従事する1週間の所定労働時間が最長の、正規型の労働者でない者を指す」とされ、一時的な業務のために臨時に採用されている者は含まれないほか、異なる業務に従事する正規型労働者の最長の1週間の所定労働時間が短い者も含まれません(前掲行政解釈)。
 また、その事業所にパートと同種の業務に従事する正社員もフルタイムの基幹的労働者もいない場合は、(1)その事業所での他の業務に従事する正社員がいる場合はその1週間の所定労働時間が最長の者と比較、(2)その事業所での他の業務に従事するフルタイムの基幹的労働者がいる場合はその1週間の所定労働時間が最長の者と比較―――することになります。
 御社の場合、店舗に社員は店長だけということです。仮に、店舗ごとに法上の「事業所」とみなされる場合は、社員と同じ時間勤務している契約社員が数名おり、契約社員はパートと同じ業務に従事しているということですから、契約社員が御社の店舗における「通常の労働者」となりますので、この方々とパートを比較し、前記3つの要件を満たすか否かをみていくことになりましょう。
 

 宇都宮文化会館玄関口

              ケース21
 Q 営業成績が1年以上不良の者を解雇できるか
 当社では、営業社員については、月間の売上成績が一定金額に達しない月が1年間以上続いた場合には、解雇する旨を定めています。この度営業社員の1人がこの条項に該当することになりました。当社としては、この者を成績不良を理由に解雇したいのですが、問題はないでしょうか。
 会社が矯正のための努力を尽くさなければ解雇困難
  お尋ねのケースのように、勤務成績不良を理由に解雇する場合、労働者には、労働契約上の債務不履行はあっても、企業秩序違反はないのが一般的ですから、普通解雇に該当すると考えられます。
 職務成績不良を理由として解雇する場合、@就業規則、労働協約など解雇事由に該当しているか、A会社は、勤務成績不良の者を教育し、強制する努力をしているか、Bその者より勤務成績が悪い者を不問にしていないか―――などが問題となります。
 @について、判例では、勤務成績不良を理由とする解雇の合理性の判断に当たり、就業規則や労働協約などに解雇に関する規定があり、当該規定において勤務成績の不良が解雇事由になっていることを求める傾向があります。
 Aについては、会社には、勤務成績が悪い者に対し、教育の実施など矯正するための努力を行う義務があり、このような措置を実施していない場合には、解雇は無効とされます。
 判例では、(イ)解雇に至るまでの間に解雇事由とされる数々の行為に対して1度も処分をしていない、(ロ)その者を叱責し、あるいは教育すべく具体的にどのような手段を講じたか不明確である―――などとして、勤務態度不良を理由とする普通解雇を無効としたものがあります。(コスモ油化事件 平3・3・26大阪地判)
 Bについては、解雇する者よりも勤務成績が悪い者や同程度の勤務成績の者を不問にしている場合は、その者を解雇することに合理性が認められず、解雇は無効とされます。
 勤務成績不良を理由とする解雇については、以上のような点に注意する必要がありますが、解雇の合理性は、あくまで個別の事案によって判断されることになります。
 例えば、御社が、一般常識に照らし著しく高い営業成績を社員に求め、そのため、それほど能力が低くないにもかかわらず、成績不良となっている場合や、たまたまある一定期間の成績が悪くても、過去に実績を残しているような場合は、解雇が無効となる可能性が高いでしょう。
 判例では、入社から解雇までの1年2か月間に新規契約を2件しかとれず、そのうち7か月間は営業成績が営業部員中最低だった者について、解雇1か月前からは営業成績が向上しており、解雇に値するほどの営業成績の低さと言うことはできないとしたものがあります。(ジャパン・エクスポートプロモーション事件 昭61・7・16 東京地決)。
 一方、解雇に至るまで1年11か月の間全く売り上げがなく、しかも、その間、無断欠勤や外出先の報告をせずそのまま帰宅してしまう、注意する上司にも反抗的な態度を取り続けるなど、勤務態度も不良で改善意欲もみられなかったことなどから(他部署への配置転換命令も拒否)、普通解雇を有効としたものがあります(住友不動産ホーム事件 平9・5・19 東京地判)。
 このように、他に能力が低い、成績が悪いという理由だけで解雇はできず、会社がその者の能力向上を図る努力をすることが求められるわけです。
 

 文化会館の噴水

忍の特別料理 里芋とイカの煮付け 美味しいよ!

 

              ケース22
 Q 欠勤多い社員の退職金を減額すること可能か?
 当社の従業員Aが自己都合退職することになりました。Aは欠勤が多く、毎月の給与及び賞与は、欠勤日数に応じて減額支給していました。Aの退職金について、通常の退職金よりも減額したいのですが可能でしょうか。なお、退職金規定には、欠勤日数に係る減額の規定はありません。

 退職金規定に減額の規定なければ減額はできない。
  退職金制度を設けることを義務付ける法令はありませんから、退職金制度を設けなくても、法律上、問題となるものではありません。ただし、就業規則や労働協約などによって、退職金の支給条件などが明確に定められている場合には、退職金は、労働基準法上の賃金に該当することになります。(昭22・9・13発基第17号)
 お尋ねによりますと、御社では、退職金規定に従い退職金を支給しているということですので、御社の退職金も同法上賃金に該当することになります。
 退職金制度の就業規則への記載については、同法第89条第1項第3号の2により、「退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項」を記載しなければならないとされています。
 そして、退職金の不支給又は減額事由を設ける場合、これは、前記の「退職手当の決定、計算及び支払の方法」に関する事項に該当しますので、就業規則に記載しなければなりません(昭63・1・1基発第1号、平11・3・31 基発第168号)。
 したがって、退職金規定の支給条件を満たす者に退職金を支給しなかったり、減額規定がないにもかかわらず、退職金を減額支給することは、同法第24条違反となります。
 判例でも、懲戒解雇した労働者への退職金を不支給としたケースで、懲戒解雇における退職金の不支給規定がなく、さらに、そのような場合には退職金を支給しないという事実たる習慣が成立していなかったとして、退職金の支払いが命じられています(東北ツアーズ協同組合事件 平11・2・23 東京地判)。
 同事件では、東京地裁は、「退職金の支給については労基法15条1項、89条1項、同法施行規則5条1項が、退職金の定めをするときは、それに関する事項が労働契約の締結の際に明示し、所定の手続きによって就業規則に規定しておかなければならないとしているので、被告による退職金の支給について支払条件として懲戒解雇された従業員には退職金を支給しないという内容の付款を設けるのであれば、そのような内容の付款をあらかじめ就業規則において定めておくべきである」と判示しました。
 このように退職金規定に不支給・減額条項を定めることは可能ですが、不支給・減額条項があるからといって、必ずしも退職金の不支給・減額が認められるわけではありません。
 判例では、「本件退職金規定9条、10条には、懲戒解雇された者には退職金を支給しない旨の規定がある。しかしながら、退職金は功労報償的性格とともに、賃金の後払的性格をも併せ持つものであることからすると、退職金の全額を失わせるような懲戒解雇事由とは、労働者の過去の労働に対する評価を全て抹消してしまう程の著しい不信行為があった場合でなければならないと解するのが相当である」とされているからです。(トヨタ工業事件 平6・6・28 東京地判)
 なお、退職金の減額については、一部は退職金が支給されることから、全額不支給の場合ほど背信性は求められませんが、その行為の程度と減額の程度から、その合理性が判断されることになりましょう。
 いずれにせよ、御社の退職金規定には、減額規定がないということですから、退職金を減額して支払うことは許されません。
 なお、退職金の計算方法は、原則として、労使間で自由に決定することができますから、例えば、退職金規定において、在籍中の出勤率などによって、退職金額の支給率などに差を設けることは、原則として問題はありません。

特集U 〜労災保険給付のポイント〜〜

    雑 木 林

 

 1 労災保険給付
 労災保険による保険給付には、大きく分けて、@業務災害に関する給付、A通勤災害に関する給付、B二次健康診断等給付―があります。業務災害及び通勤災害に関する給付は、労働者が災害を被った場合に行われるもので、二次健康診断等給付は、予防的見地から行われるものです。
 (1)業務災害に関する給付
 業務災害に関する給付は、労働者の業務上の負傷、疾病、障害または死亡に対するものです。その保険給付には、@療養補償給付、A休業補償給付、B障害補償給付、C遺族補償給付、D葬祭料、E傷病補償年金、F介護補償給付、―――の7種類があります。
 このうち、療養補償給付については、治療の現物支給である「療養の給付」と、労災指定医療機関以外で治療を受けた場合などに、治療にかかった費用を現金で支給する「療養の費用の給付」があります。
 また、傷病補償年金は、他の保険給付とは異なり、被災労働者や遺族などの請求によって保険給付の決定が行われるのではなく、支給事由を満たす場合に、政府が職権で支給決定を行います。
 (2)通勤災害に関する給付
 通勤災害に関する給付は、労働者の通勤による負傷、疾病、障害または死亡に対するものです。その保険給付には、@療養給付、A休業給付、B障害給付、C遺族給付、D葬祭給付、E傷病年金、F介護給付―――の7種類があります。
 療養給付には、業務災害における療養補償給付と同様に、現物による「療養の給付」と現金による「療養の費用の給付」があります。また、傷病年金の支給決定の仕組みも、傷病補償年金の場合と同様です。
 このように、業務災害に関する給付と通勤災害に関する給付は、給付の名称は異なりますが、給付の内容は同じものとなっています。(ただし、通勤災害の療養給付には、一部負担金(200円)の制度があります)。そこで、以下、各種給付の詳しい内容については、業務災害のケースとして説明していくこととします。(給付内容は平成17年4月1日現在)。
 (3)二次健康診断等給付
 労働安全衛生法に基づく健康診断において、血圧検査、血中脂質検査、血糖検査、肥満度の検査のいずれにも異常があると診断された場合、労働者の請求に基づいて必要な検査及び特定保健指導を現物給付します。
 ●労災保険給付の概要
 療養のため休業する場合
 療養(補償)給付…療養費の全額
 休業(補償)給付…休業4日目から休業1日につき休業給付基礎日額の60%
 傷病(補償)年金…療養開始後1年6か月経過しても治らずその傷病が重い場合:年金給付基礎日額の313日分(1級)〜245日分(3級)の年金
 障害が残った場合その程度に応じ
 障害(補償)年金…年金給付基礎日額の313日分(1級)〜131日分(7級)の年金
 障害(補償)一時金…年金給付基礎日額の503日分(8級)〜56日分(14級)の一時金
 被災労働者が死亡した場合
 遺族(補償)年金…遺族数に応じ年金給付基礎日額の153日分〜245日分の年金
 遺族(補償)一時金…遺族補償年金受給資格者がいない場合、その他の遺族に対し年金給付基礎日額の1000日分の一時金
 葬祭料(葬祭給付)…31万5000円+給付基礎日額の30日分(最低補償額は給付基礎日額の60日分)
 常時または随時介護を要する場合
 介護(補償)給付…1カ月当たり、常時介護は10万4970円、随時介護は5万2490円を上限
 脳・心臓疾患に関連する異常所見
 二次健康診断等給付…脳血管及び心臓の状態を把握するための二次健康診断及び医師等による特定保健指導
  ※ 上記の他に労働福祉事業による特別支給金があります。

 2 療養(補償)給付
 療養補償給付には、被災労働者に対して労災指定医療機関において診察や薬剤の支給などの療養を無料で受けさせる現物給付の「療養の給付」と労災指定医療機関以外で療養した場合に、その療養に要した費用を現金で支給する「療養の費用の給付」があります。
 (1)支給要件 労働者が業務上の事由により負傷したり、または疾病にかかり、療養を必要とする場合には、療養補償給付が行われます。療養補償給付は、被災労働者に対して、労災病院または労災指定医療機関において、診察、薬剤の支給、手術などを無料で受けさせる現物支給による「療養の給付」を原則としています。
 ただし、緊急に診察を受ける必要があったり、地域事情により近くに労災指定医療機関がない場合などで、労災指定医療機関以外の病院などで療養した場合には、その療養に要した費用を現金で支給する「療養の費用の給付」が行われます。
(2)給付内容
 療養の給付は、次のもののうち、政府が必要と認めるものとなっています。
 @ 診察
 A 薬剤または治療材料の支給
 B 処置、手術その他の治療
 C 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
 D 医院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
 E 移送
 療養の給付は、原則として「治ゆ」するまで、つまり、その傷病が療養を必要としなくなるまで行われます。この場合の「治ゆ」とは、具体的には、@負傷にあっては創面の治ゆした場合、A疾病にあっては急性症状が消退し、慢性症状は持続しても医療効果を期待し得ない状態となった場合―――をいいます。
 (3)請求手続き
 療養の給付を受ける場合には、「療養の給付たる療養の給付請求書」(様式第5号)に所要の事項を記載し、事業主の証明を受け、療養を受けようとする労災病院または労災指定医療機関を経由して所轄労働基準監督署長へ提出することになります。(通勤災害の場合は様式第16号の3を使用)
 療養の費用の給付を請求する場合には、「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号(1))に所要の事項を記載し、所轄労働基準監督署長に提出します(通勤災害の場合は様式第16号の5(1)を使用)。
 なお、療養の給付を受ける場合においても、通院や移送の費用については、その性質上現物給付が困難なため、療養の費用の給付を請求することになります。また、柔道整復師やはり灸師などにかかった場合には、特別の請求書を使用します。
 

    雑 木 林

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 3 休業(補償)給付
 業務災害を被った労働者が、療養のために労働することができず、賃金を受けない場合、その休業4日目からは、給付基礎日額(平均賃金相当額)の60%の休業補償給付が支給されます。実際は、休業特別支給金として給付基礎日額の20%がプラスされ、合計80%が支給されます。
(1)支給要件
 休業補償給付は、療養中の労働者が次の@〜Bに掲げるすべての条件を備えている場合に、休業4日目から支給されます。
 @ 業務災害により療養していること
 A その療養のために労働することができないこと
 B 労働することができないために賃金を受けていないこと
「労働することができないこと」というのは、一般的に労働することができない場合のことをいい、軽作業なら就労し得る場合は、労働することができない場合に該当しないこととされます。
(2)給付内容
 休業補償給付の額は、休業1日について給付基礎日額の60%(1日の一部分について休業し、一部分にについて就労した日については、給付基礎日額から実際に労働した部分についての賃金額を差し引いた額の60%に相当する額)が支給されます。
 また、長期休業の場合には、全産業における平均給与額が当該労働者の傷病発生時に比較して10%を超えて上昇しまたは低下した場合には、その変動率に応じて給付基礎日額が変更されて支給されることになります。
(3)請求手続き
 休業補償給付を請求する場合には、「休業補償給付支給請求書」(様式第8号)に所要事項を記載して、事業主及び診療担当者の証明を受けて、所轄労働基準監督署長に提出することになります(通勤災害の場合は様式第16号の6を使用)。
(4)給付基礎日額
 給付基礎日額は、労災保険の各種給付の額の算定基礎となるもので、原則として、労働基準法上の平均賃金相当額とされています。しかし、平均賃金相当額を給付基礎日額とすることが適当でないと認められる場合は、政府が定める額とされます。
 また、平均賃金相当額が4160円に満たない場合は、給付基礎日額は4160円になります。なお、療養開始後1年6か月を経過した者の休業補償給付の給付基礎日額には、年齢階層別の最高・最低限度額の適用があります。

 4 障害(補償)給付
 業務災害による傷病が治ゆして、労災保険法で定める障害等級に該当する障害が残った場合には、障害補償給付が支給されます。その給付内容は、残った障害が障害等級1〜7級に該当する場合は、年金、また、8〜14級に該当する場合は一時金となります。
(1)支給要件
 業務上の傷病が治った後に、身体に一定の障害が残った場合に、その障害の程度に応じて障害補償年金または障害補償一時金の支給が行われます。この場合、障害の程度については、労災保険法施行規則別表第1に定める「障害等級表」(下記参照)に掲げられている障害に該当する障害が残った場合とされています。
(2)障害等級の決定
 障害補償給付の決定の基礎となる障害等級は、原則として「障害等級表」によって判断されます。ただし、障害等級表に該当する障害以外の障害の等級については、その程度に応じて「障害等級表」に掲げる障害に準じて定めることとなります。
 また、同一の傷病による障害が2つ以上ある場合には、原則として重い方の等級を全体の等級とします。ただし、次のような障害等級がある場合には、重い方の等級を繰り上げて全体の等級とします。
 @ 第13級以上に該当する身体障害が2つ以上あるとき…1級繰り上げ
 A 第8級以上に該当する身体障害が2つ以上あるとき…2級繰り上げ
 B 第5級以上に該当する身体障害が2つ以上あるとき…3級繰り上げ
 このように障害等級の繰上げが行われた場合で、8級以下の場合、それぞれの等級の合算額が、繰り上げられた等級の給付の額に満たないときは、合算額をもって給付の額とすることとされています。例えば、第9級と第13級の障害が残った場合には、第8級の給付額である給付基礎日額の503日分ではなく、492日分(第9級の391日分+第13級の101日分)となります。
 なお、第7級以上の等級に繰り上げられた場合には、それぞれの等級の合計額にかかわらず7級以上の年金額が支給されます。
(3)障害補償年金
 「障害等級表」の第1級から第7級までの障害が身体に残った場合は、障害の程度に応じ、給付基礎日額の313日分から131日分までの年金が支給されます。ただし、同一の事由に基づいて厚生年金などの障害年金が支給された場合には、これらの年金との調整が行われます。
 障害補償年金の額
 障害等級
  第1級…給付基礎日額の313日分
  第2級…給付基礎日額の277日分
  第3級…給付基礎日額の245日分
  第4級…給付基礎日額の213日分
  第5級…給付基礎日額の184日分
  第6級…給付基礎日額の156日分
  第7級…給付基礎日額の131日分
(4)障害補償一時金
 障害補償一時金は、「障害等級表」の第8級から第14級までの障害が身体に残った場合に、給付基礎日額の503日分から56日分までが等級に応じて一時金として支給されます。
 障害補償一時金
 障害等級  第8級…給付基礎日額の503日分
       第9級…給付基礎日額の391日分
      第10級…給付基礎日額の302日分
      第11級…給付基礎日額の223日分
      第12級…給付基礎日額の156日分
      第13級…給付基礎日額の101日分
      第14級…給付基礎日額の56日分
(5)障害補償年金差額一時金
 障害補償年金の受給権者が死亡した場合に、すでに支給された障害補償年金(前払一時金を含む)の合計額が、障害等級に応じて定められた一定の額に満たないときは、その差額を遺族に対して請求に基づき支給します。その一定の額は次の通りとなります。
 障害補償年金差額一時金の基礎額
  障害等級
  第1級…給付基礎日額の1340日分
      第2級…給付基礎日額の1190日分
      第3級…給付基礎日額の1050日分
      第4級…給付基礎日額の920日分
      第5級…給付基礎日額の790日分
      第6級…給付基礎日額の670日分
      第7級…給付基礎日額の560日分
 障害補償年金差額一時金を受給する遺族は、次に掲げる(イ)または(ロ)の者で、受給順位は、(イ)、(ロ)の順となります。
(イ)労働者の死亡当時その者と生計を同じくしていた配偶者(婚姻の届け出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の状態にあったものを含む。(ロ)において同じ)、子、父母、祖父母、及び兄弟姉妹
(ロ)上記(イ)に該当しない配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹
(6)障害補償年金前払一時金
 障害が残った被災労働者が社会復帰するための一時的な出費に対処するために、障害補償年金については、前払一時金制度が設けられています。前払一時金の額は、障害等級に応じて、次に掲げる額から受給権者が選択した額が支給されます。
 前払一時金が支給されると、障害補償年金は毎月分の額の合計額が前払一時金の額に達するまでの間支給停止されます。なお、一年たってからの分の額は、支払うべき障害補償年金の額を年5分の単利で割引いた額で計算した額の合計額が障害補償年金前払一時金の額に達するまでの期間とされます。
 

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 障害補償年金前払一時金の額
 障害等級 第1級…給付基礎日額の200日分400日分600日分800日分1000日分1200日分または1340日分
     第2級…200日分400日分600日分800日分1000日分または1190日分
     第3級…200日分400日分600日分800日分1000日分または1050日分
     第4級…200日分400日分600日分800日分または920日分
     第5級…200日分400日分600日分または790日分
     第6級…200日分400日分600日分または670日分
     第7級…200日分400日分または560日分
(7)請求手続き
 障害補償給付を請求する場合には、「障害補償給付支給請求書」(様式第10号)に所要事項を記載して、所轄労働基準監督署長に提出することになります。(通勤災害の場合は様式第16号の7を使用)。
 この請求書には、次の資料を添付しなければなりません。
 @ 負傷または疾病が治ったこと及び治ったときにおける障害の状態に関する医師または歯科医師の診断書
 A 障害の状態を証明し得るようなレントゲン写真などの資料
 障害補償年金差額一時金を請求する場合には、「障害補償年金差額一時金請求書」(様式第37号の2)に戸籍謄本など必要な書類を添えて、所轄労働基準監督署長に提出することになります。(通勤災害の場合も様式第37号の2を使用)。なお、受給権者が2人以上あるときは、請求及び受領についての代表者を選任することになります。
 障害補償年金前払一時金を請求する場合には、「障害補償年金前払一時金請求書」(年金申請様式第10号)に請求する前払一時金の額を記入して、原則として障害補償年金の請求と同時に所轄労働基準監督署長に対して請求することになります。(通勤災害の場合も年金申請様式第10号を使用)。
 ただし、障害補償年金の支給の決定の通知のあった日の翌日から起算して1年を経過する日までの間は、障害補償年金の請求と同時でなくても障害補償年金前払一時金を請求することができます。この場合の前払限度額は、前払最高限度額からすでに支払われた障害補償年金の額の合計額を減じた額の範囲内で選択することになります。
      障害等級表
 第1級  給付基礎日額 313日分
 身体障害 1 両眼が失明したもの
      2 そしゃく及び言語の機能を廃したもの
      3 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
      4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
      5 削除
      6 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
      7 両上肢の用を全廃したもの
      8 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
      9 両下肢の用を全廃したもの
 第2級  給付基礎日額 277日分
 身体障害 1  1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
      2  両眼の視力が0.02以下になったもの
      2の2 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
      2の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
      3  両上肢を手関節以上で失ったもの
      4  両下肢を足関節以上で失ったもの
 第3級  給付基礎日額 245日分
 身体障害 1 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
      2 そしゃくまたは言語の機能を廃したもの
      3 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
      4 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
      5 両手の手指の全部を失ったもの
 第4級  給付基礎日額 213日分
 身体障害 1 両眼の視力が0.06以下になったもの
      2 そしゃく及び言語の機能に著しい障害を残すもの
      3 両耳の聴力を全く失ったもの
      4 1上肢をひざ関節以上で失ったもの
      5 1下肢をひざ関節以上で失ったもの
      6 両手の手指の全部の用を廃したもの
      7 両手をリスフラン関節以上で失ったもの
 第5級  給付基礎日額 184日分
 身体障害 1  1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
      1の2 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
      1の3 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
      2 1上肢を手関節以上で失ったもの
      3 1下肢を足関節以上で失ったもの
      4 1上肢の用を全廃したもの
      5 1下肢の用を全廃したもの
      6 両足の足指の全部を失ったもの
 第6級  給付基礎日額156日分
 身体障害 1  両眼の視力が0.1以下になったもの
      2  そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの
      3  両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
      3の2 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40p以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
      4 せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
      5 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
      6 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
      7 1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの
 第7級  給付基礎日額 131日分
 身体障害 1  1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
      2  両耳の聴力が40p以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
      2の2 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
      3  神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
      4  削除
      5  胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
      6  1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの
      7  1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの
      8  1足をリスフラン関節以上で失ったもの
      9  1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
     10  1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
     11  両足の足指の全部の用を廃したもの
     12  女性の外貌に著しい醜状を残すもの
     13  両側のこう丸を失ったもの

   キャンプ場 管理棟

 

 第8級  給付基礎日額503日分
 身体障害 1 1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの
      2 せき柱に運動障害を残すもの
      3 1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの
      4 1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの
      5 1下肢を5p以上短縮したもの
      6 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
      7 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
      8 1上肢に偽関節を残すもの
      9 1下肢に偽関節を残すもの
     10 1足の足指の全部を失ったもの
     11 ひ臓又は1側のじん臓を失ったもの
 第9級  給付基礎日額391日分
 身体障害 1 両眼の視力が0.6以下になったもの
      2 1眼の視力が0.06以下になったもの
      3 両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの
      4 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
      5 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
      6 そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの
    6の2 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解する事ができない程度になったもの
    6の3 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
      7 1耳の聴力を全く失ったもの
    7の2 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
    7の3 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
      8 1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの
      9 1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの
     10 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
     11 1足の足指の全部の用を廃したもの
     12 生殖器に著しい障害を残すもの
 第10級 給付基礎日額 302日分
 身体障害 1 1眼の視力が0.1以下になったもの
      1の2 正面視で複視を残すもの
      2  そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの
      3  14歯以上に対して歯科補てつを加えたもの
      3の2 両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
      4  1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
      5  削除
      6  1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの
      7 1下肢を3p以上短縮したもの
      8 1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの
      9 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
     10 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
 第11級  給付基礎日額 223日分
 身体障害 1 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
      2 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
      3 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
    3の2 10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
    3の3 両耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
      4 1耳の聴力が40p以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
      5 せき柱に変形を残すもの
      6 1手の示指、中指又は環指を失ったもの
      7 削除
      8 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
      9 胸腹部臓器に障害を残すもの
 第12級 給付基礎日額 156日分
 身体障害 1 1眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
      2 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
      3 7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
      4 1耳の耳かくの大部分を欠損したもの
      5 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
      6 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
      7 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
      8 長管骨に変形を残すもの
    8の2 1手の小指を失ったもの
      9 1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの
     10 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは第3の足指以下の3の足指を失ったもの
     11 1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
     12 局部に頑固な神経症状を残すもの
     13 男性の外貌に著しい醜状を残すもの
     14 女性の外貌に醜状を残すもの
 第13級 給付基礎日額 101日分
 身体障害 1 1眼の視力が0.6以下になったもの
      2 1眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの
    2の2 正面視以外で複視を残すもの
      3 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
    3の2 5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
      4 1手の小指の用を廃したもの
      5 1手の母指の指骨の一部を失ったもの
      6 削除
      7 削除
      8 1下肢を1p以上短縮したもの
      9 1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの
     10 1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
 第14級 給付基礎日額 56日分
 身体障害 1 1眼のまぶたの一部に欠損を残し、またはまつげはげを残すもの
      2 3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
    2の2 1耳の聴力が1m以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
      3 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
      4 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
      5 削除
      6 1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
      7 1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの
      8 1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの
      9 局部に神経症状を残すもの
     10 男性の外貌に醜状を残すもの

5 遺族(補償)給付
 業務災害で労働者が死亡した場合には、その遺族に対して、遺族補償給付が支給されます。遺族補償給付は、年金による支給を原則としていますが、年金を受給することができる権利を有する遺族がいない場合には、一時金が支給されることになります。
(1)支給要件
 労働者が業務災害で死亡した場合、その労働者の遺族に対して、遺族補償給付が支給されることになります。遺族補償給付は原則として、年金で支給されます。しかし、年金を受給することができる権利を有する遺族がいない場合には、一時金で支給されることになります。一時金が支給されるのは、次の場合となっています。
 @ 労働者の死亡の当時、遺族補償年金を受けることができる遺族がいない場合
 A 遺族補償年金を受ける権利を有する者が失権した場合において、他に当該遺族補償年金を受けることができる遺族がなく、かつ、当該労働者の死亡に関し支給された遺族補償年金の額及び遺族補償年金前払一時金の額の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たない場合
 (2)受給者の範囲
 @ 年金の受給資格者
 年金の受給資格者は、労働者の死亡の当時その者の収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっていますが、配偶者以外は労働者の死亡当時高齢であるか、年少であるか、一定の障害の状態にあることが必要とされています。
 年齢については、夫、父母、祖父母にあっては55歳以上であること、子、孫にあっては18歳未満であること、兄弟姉妹にあっては18歳未満か55歳以上であることが必要です。
 また、これら以外の年齢であっても、障害等級第5級以上の身体障害がある場合か、これと同程度に労働が制限されている場合は受給資格者となります。
 生計維持関係については、専らまたは主として労働者の収入によって生計の一部が維持されていただけでなく、労働者の収入によって生計の一部が維持されていれば生計維持関係は認められることになります。したがって、いわゆる夫婦共働きの場合も生計が互いに維持されていたものとされ、生計維持関係は認められることになります。
 また、配偶者については、婚姻の届け出をしていなくても事実上婚姻関係と同様の事情にあった者も含まれます。さらに、労働者の死亡当時胎児であった子については、出生のときから将来に向かって受給資格者となります。
 A 年金の受給権者
 遺族補償年金は、受給資格者のすべての者に対して支給されるのではなく、受給資格者のうち、次に示す順位の優先順位の遺族に支給されることになります。最先順位の遺族が2人以上いる場合には、そのすべてが受給権者となります。
 @ 妻、60歳以上または一定の障害の夫
 A 18歳未満または一定の障害の子
 B 60歳以上または一定の障害の父母
 C 18歳未満または一定の障害の孫
 D 60歳以上または一定の障害の祖父母
 E 18歳未満、60歳以上または一定の障害の兄弟姉妹
 F 55歳以上60歳未満の夫
 G 55歳以上60歳未満の父母
 H 55歳以上60歳未満の祖父母
 I 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
 なお、受給資格者のうち最先順位の者が失権すると、次順位の受給資格者が新たに受給権者となります。これを転給といいます。またF〜Iまでの者は、60歳になるまで支給が停止されます。
 B 一時金の受給権者
 遺族補償一時金の受給権者は、次のうち最先順位にある者(A、Bについては記載順)となります。
 @ 配偶者
 A 労働者の死亡当時その収入によって生計を維持されていた子、父母、孫、祖父母、
 B その他の子、父母、孫、祖父母
 C 兄弟姉妹
 (3)遺族補償年金
 遺族補償年金の額は、遺族の数に応じて次のとおりとされています。年金の計算の基礎となる遺族とは、受給権者及び受給権者と生計を同じくする受給資格者をいいます。
 @ 1人…給付基礎日額の153日分。ただし、55歳以上の妻または一定の障害の状態にある妻にあっては175日分
 A 2人…給付基礎日額の201日分
 B 3人…給付基礎日額の223日分
 C 4人以上…給付基礎日額の245日分
 ここで一定の障害の状態にあるというのは「障害等級表」の第5級以上の身体障害があるか、またはこれと同程度に労働が制限される状態にある場合をいいます。年金の額は、遺族の数が増減したとき、妻が一の障害になったとき、もしくはその事情がなくなったときなどは、そのような事実が発生した月の翌月から年金の額が改定されます。
 (4)遺族補償一時金
 遺族補償一時金の額は、労働者死亡の当時に年金を受け得る遺族がいない場合は給付基礎日額の1000日分、また年金支給開始後に遺族が失権し、他に年金を受け得る遺族がいない場合は給付基礎日額の1000日分の額から既支給年金の支給額の合計額を差し引いた額―――となります。
(5)受給権の消滅
 遺族補償年金の受給権者が、次のいずれかに該当した場合には、その者は受給権を失います。この場合、同順位の受給権者がいない場合には、次順位の受給資格者が受給権者となります。
 @ 死亡したとき
 A 婚姻(内縁関係を含む)をしたとき
 B 直系血族または直系姻族以外の者の養子(事実上の養子縁組関係を含む)となったとき
 C 離縁(養子縁組関係の解消)によって死亡労働者との親族関係が終わったとき
 D 子、孫、兄弟姉妹については、18歳に達した以後の最初の3月31日が終了したとき。ただし、労働者の死亡のときから障害状態のままであるときは失権、失格しない
 E 障害状態にあるために受給資格者となった遺族については、その障害状態がなくなったとき
   なお、受給資格者が同様の事情に該当したときも受給資格を失います。
(6)遺族補償年金前払一時金
 労働者の死亡によって、遺族には一時的な出費が必要となる場合が多いことから、受給権者の希望により、年金を前払する遺族補償年金前払一時金制度が設けられています。前払一時金の額は、給付基礎日額の200日分、400日分、600日分、800日分、1000日分、の中から選択することになります。
 前払一時金が支給された場合、年金は一定の期間支給停止されます。支給停止期間は、年金の毎月分の額(1年たってからの分は年5分の単利で割引いた分)の合計額が、前払一時金の額に達するまでの期間とされます。

(7)請求手続き
 遺族補償年金を請求する場合には「遺族補償年金支給請求書」(様式第12号)に死亡労働者の死亡診断書、死体検案書などの書類、戸籍謄本または妙本、請求人及び受給資格者が死亡労働者の収入によって生計を維持していたことを証明する書類など必要な書類を添付して、所轄労働基準監督署長に提出することになります(通勤災害の場合は様式第16号の8を使用)。なお、受給権者が2人以上いる場合には、原則として1人を代表者に選出します。
 また、転給による請求の場合は、「遺族補償年金転給等請求書」(様式第13号)に所定の書類を添付して、所轄労働基準監督署長に提出することになります。(通勤災害の場合は様式第13号を使用)。
 遺族補償一時金を請求する場合には、「遺族補償一時金支給請求書」(様式第15号)を所轄労働基準監督署長に提出することになります。(通勤災害の場合は様式第16号の9を使用)。そのほかの添付書類は遺族補償年金を請求する場合と同様です。
 遺族補償年金前払一時金を請求する場合には、「遺族補償年金前払一時金請求書」(年金申請様式第1号)に請求する前払一時金の額を記入して、所轄労働基準監督署長に提出することになります(通勤災害の場合も年金申請様式第1号を使用)。
 遺族補償年金前払一時金の請求は、遺族補償年金の請求と同時に行いますが、支給決定のあった日から1年以内であれば、請求が認められます。前払一時金の請求は、同一の死亡労働者に関して1回しか認められませんが、失権した先順位者が前払一時金を請求していなければ、転給者も請求することができます。
 

    満開の桜

    ブナの新緑

 

6 葬祭料(葬祭給付)
 業務災害で労働者が死亡した場合、葬祭を行う遺族などに対して、葬祭料が支給されます。葬祭料は、通常は葬祭を行う遺族に支給されますが、遺族が葬祭を行わない場合で、事業主や友人などが葬祭行ったときには、その事業主などに支給されます。
(1)支給要件
 葬祭料は、業務上の事由により死亡した労働者の葬祭の費用についての補てんを目的とするものです。葬祭料の受給者は、通常は死亡した労働者の遺族で、遺族補償給付の受給権者と同一人となります。
 しかしながら、遺族が葬祭を行わないことが明らかな場合において、事業主、友人などが葬祭を行ったときは、その事業主または友人などに支給されることになります。
 また、会社が労働者の葬祭を社葬として行った場合に、その後、その労働者の遺族が郷里に帰って再び葬祭を行った場合、葬祭料の支給はどうなるかという問題については、その社葬の性質によって決定されることとされています。具体的には、社葬を行うことが会社の恩恵的あるいは厚意的性質に基づくときは、葬祭料は遺族に支給すべきであり、葬祭を行う遺族がいない場合には、葬祭料は会社に支給されるべきとされる行政解釈が示されています(昭23・11・29基災収第2965号)。
(2)給付内容
 葬祭料の額は、31万5000円に給付基礎日額の30日分を加えた額となります。ただし、その額が給付基礎日額の60日分に満たない場合は、給付基礎日額の60日分の額となります。
(3)請求手続き
 葬祭料を請求する場合には、「葬祭料請求書」(様式第16号)に所要の事項を記載して、所轄労働基準監督署長に提出することになります(通勤災害の場合は様式第16号の10を使用)。
 なお、請求書には、死亡診断書や死体検案書など当該労働者が死亡した事実を証明できる書類を添付しなければなりませんが、それらが遺族補償給付の請求書に添付されて提出されている場合は必要ありません。

7 傷病(補償)年金
 業務上の傷病にかかった労働者が、療養開始後1年6か月を経過してもその傷病が治っていない場合で、その傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合には、その等級に応じて給付基礎日額の245日分〜313日分の傷病補償年金が支給されます。
 (1)支給要件
 業務災害による療養中の労働者が、療養の開始後1年6か月を経過した日において、次のいずれにも該当することになった場合に、その翌月から支給されることになります。
 @ その負傷または疾病が治っていないこと
 A その負傷または疾病による障害の程度が労災保険法施行規則別表第2に定める「傷病等級」(下記参照)に該当すること
 傷病補償年金の受給者には、療養補償給付が行われますが、休業補償給付は支給されません。療養開始後1年6か月経過した日に傷病が治ゆしておらず、傷病等級に該当しない場合には、引き続き休業補償給付が支給されます。しかし、その後、傷病の程度が重くなり傷病等級に該当するに至った場合には、その時点から傷病補償年金が支給されることになります。
 (2)給付内容
 傷病補償年金の額は、傷病等級に応じて次のとおりの額となります。
 @ 傷病等級第1級……給付基礎日額の313日分
 A 傷病等級第2級……給付基礎日額の277日分
 B 傷病等級第3級……給付基礎日額の245日分
 傷病補償年金の受給者の障害の程度に変更があったために、他の傷病等級に該当することとなった場合には、新たな傷病等級による傷病補償年金が支給されます。
 (3)請求手続き
 傷病補償年金は、他の保険給付とは異なり、被災労働者や遺族などの請求によって保険給付の決定が行われるのではなく、支給要件を満たす場合に政府が支給決定します。そのため、休業補償給付の支給を受ける労働者のうち療養開始後1年6か月経過した長期療養者は、1年6か月経過日から1カ月以内に、「傷病の状態等に関する届書」(様式第16号の2)に医師の診断書を添えて、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません(通勤災害の場合も様式第16号の2を使用)。
 なお、療養開始後1年6か月経過した時点では傷病等級に該当せず、休業補償給付を受けている場合には、1年に1回の定期報告を行うとともに、所轄労働基準監督署長の求めに応じて、「傷病の状態等に関する届書」を提出する必要があります。
           傷病等級
 第1級 
 当該障害の状態が継続している期間1年につき給付基礎日額 313日分
 障害の状態
 @ 神経系統の機能または精神に著しい障害を有し、常に介護を要するもの
 A 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要するもの
 B 両眼が失明しているもの
 C そしゃく及び言語の機能を廃しているもの
 D 両上肢をひじ関節以上で失ったもの
 E 両上肢の用を全廃しているもの
 F 両下肢をひざ関節以上で失ったもの
 G 両下肢の用を全廃しているもの
 H 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの
 第2級
 当該障害の状態が継続している期間1年につき給付基礎日額 277日分
 障害の状態
 @ 神経系統の機能または精神に著しい障害を有し、随時介護を要するもの
 A 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、随時介護を要するもの
 B 両眼の視力が0.02以下になっているもの
 C 両上肢を腕関節以上で失ったもの
 D 両下肢を足関節以上で失ったもの
 E 前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの
 第3級
 当該障害の状態が継続している期間1年につき給付基礎日額 245日分
 障害の状態
 @ 神経系統の機能または精神に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの
 A 胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に労務に服することができないもの
 B 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になっているもの
 C そしゃく又は言語の機能を廃しているもの
 D 両手の手指の全部を失ったもの
 E 第1号及び第2号に定めるもののほか常に労務に服することができないものその他前各号に定めるものと同程度以上の障害の状態にあるもの 
 

   東国三葉つつじ

    白 つつじ

 

 8 介護(補償)給付
 業務災害により、障害補償年金や傷病補償年金の支給事由となる障害があり、その障害の程度が厚生労働省令で定める一定の者であって、常時または随時介護が必要な者が現に介護を受けている場合に、その介護を受けている間、月単位で支給されます。
 (1)支給要件
 業務災害により、障害補償年金又は傷病補償年金を受給している者のうち、その障害が労災保険法施行規則別表第3に定める「要介護障害程度区分表」(下記参照)に掲げられている一定の障害の状態にあり、現に介護を受けている場合に、月単位で支給されます。
 ただし、被災労働者が、@身体障害者療護施設、A老人保健施設、B特別養護老人ホーム、C原子爆弾被災者特別養護ホーム、D労災特別介護施設―――に入所している場合は支給されません。
 (2)給付内容
 常時介護の場合と随時介護の場合の2つの区分により、以下のとおりとされています。
  @ 常時介護を要する者
  その月において、介護の費用として支出した額(その額が10万4970円を超えるときは10万4970円)が支給されます。ただし、親族などの介護を受けている者で、介護の費用を支出していない場合または支出した額が5万6950円を下回る場合は、一律5万6950円が支給されます。
  A 随時介護を要する者
  その月において、介護の費用として支出した額(その額が5万2490円を超えるときは5万2490円)が支給されます。ただし、親族などの介護を受けている者で、介護の費用を支出していない場合または支出したが額が2万8480円を下回る場合は、一律2万8480円が支給されます。
(3)請求手続き
  介護補償給付を請求する場合には、「介護補償給付支給請求書」(様式第16号の2の2)に次の(イ)〜(ハ)の書類を添えて、所轄労働基準監督署長に提出することになります(通勤災害の場合も様式第16号の2の2を使用)。
 (イ) 障害の部位及び状態ならびに当該障害を有することに伴う日常生活の状態に関する医師または歯科医師の診断書
 (ロ) 介護に要する費用を支出して介護を受けた日がある場合にあっては、費用を支出して介護を受けた日数及び支出した費用の額を証する書類
 (ハ) 被災労働者がその親族などにより介護を受けた日がある場合にあっては、介護に従事した者の介護の事実についての申立書
  介護補償給付の初回請求は、障害補償年金を受ける権利を有する者については、障害補償年金の請求と同時かその請求後に行い、傷病補償年金を受ける権利を有する者については、傷病補償年金の支給決定を受けた後に行うことになります。
  なお、継続して2回目以降の介護補償給付を請求する者については、診断書の添付は不要です。そのうち障害補償年金の受給者にあっては、「年金たる保険給付の受給権者の定期報告書」(業務災害、通勤災害ともに様式第18号)に、障害を有することに伴う日常生活の状態を記した診断書を添付することが必要です。
  要介護程度区分表
 常時介護を要する状態
 障害の程度
 @ 神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を残し、常に介護を要する者(別表第1第1級の項身体障害の欄第3号に規定する身体障害をいう。)又は神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を有し、常に介護を要するもの(別表第2第1級の項障害の状態の欄第1号に規定する障害の状態をいう。)
 A 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの(別表第1第1級の項身体障害の欄第4号に規定する身体障害をいう。)または胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、常に介護を要するもの(別表第2第1級の項障害の状態の欄第2号に規定する障害の状態をいう。)
 B 別表第1に掲げる身体障害が2以上ある場合その他の場合であって障害等級が第1級であるときにおける当該身体障害又は別表第2第1級の項障害の状態の欄第3号から第9号までのいずれかに該当する障害の状態(前2号に定めるものと同程度の介護を要する状態にあるものに限る。)
 随時介護を要する状態
 障害の程度
 @ 神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(別表第1第2級の項身体障害の欄第2号の2に規定する身体障害をいう。)又は神経系統の機能若しくは精神に著しい障害を有し、随時介護を要するもの(別表第2第2級の項障害の状態の欄第1号に規定する障害の状態をいう。)
 A 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの(別表第1第2級の項身体障害の欄第2号の3に規定する身体障害をいう。)又は胸腹部臓器の機能に著しい障害を有し、随時介護を要するもの(別表第2第2級の項障害の状態の欄第2号に規定する障害の状態をいう。)
 B 障害等級が第1級である場合における身体障害又は別表第2第1級の項障害の状態の欄第3号から第9号までのいずれかに該当する障害の状態(前2号に定めるものと同程度の介護を要する状態にあるものに限る。)

 9 二次健康診断等給付
 労働安全衛生法の規定による健康診断において、血圧検査、血中脂質検査、血糖検査、肥満度の測定―――の4項目すべてにおいて異常が認められた場合、労働者本人の請求に基づいて、より精度の高い健康診断と保健指導が現物給付されます。
 (1)支給要件
 労働安全衛生法第66条第1項の規定による健康診断または同条第5項ただし書の規程による健康診断のうち直近のもの(一次健康診断)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって厚生労働省令で定めるものが行われた場合において、労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに(一次健診の結果その他事情によりすでに脳・心臓疾患の症状を有すると認められる場合を除く)、その請求に基づいて給付されます。
 具体的には、次の(イ)〜(ニ)に掲げる検査のすべての項目において医師による異常の所見(以下「給付対象所見」)が認められた場合に給付されます。
 (イ) 血圧の測定
 (ロ) 血中脂質の検査
  次の検査のいずれか1つ以上とする
  ・血清総コレステロール
  ・高比重リボ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)
  ・血清トリグリセライド(中性脂肪)
 (ハ) 血糖検査
 (ニ) BMI(肥満度)の測定
  なお、肥満度は次の計算式により算出された値をいいます。
  BMI=身長(m)2/体重(kg)
  この場合、「異常の所見」とは、検査の数値が高い場合(高比重リボ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)にあっては低い場合)であって、「異常なし」以外の所見をいいます。
  ただし、一次健康診断の担当医が上記(イ)〜(ニ)の検査については異常なしの所見を診断した場合であっても、労働安全衛生法第13条第1項に基づき当該労働者が所属する事業場に選任されている産業医や同法第13条の2に規定する労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師(地域産業保健センターの医師、小規模事業場が共同選任した産業医の要件を備えた医師等)が一次健康診断の担当医が異常なしの所見と診断した検査の項目について、労働者の就業環境等を総合的に勘案し異常の所見が認められると判断した場合は、産業医等の意見を優先して、異常の所見があるものとされます。
 (2)給付内容
 @ 二次健康診断
 二次健康診断は、脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査(一次健康診断において行われる検査を除く)であって、厚生労働省令で定めるものを行う医師による健康診断をいいます。
 具体的には、次のすべての検査項目を実施します。
 (イ)空腹時の血清総コレステロール、高比重リボ蛋白コレステロール(HDLコレステロール)及び血清トリグリセライド(中性脂肪)の量の検査(空腹時血中脂質検査)
 (ロ)空腹時の血中グルコース(ブドウ糖)の量の検査(空腹時血糖数値検査)
 (ハ)ヘモグロビンAlc検査(一次健康診断において当該検査を行った場合を除く)
 (ニ)負荷心電図検査または胸部超音波検査(心エコー検査)
 (ホ)頸部超音波検査(頸部エコー検査)
 (ヘ)微量アルブミン尿検査(一次健康診断における尿中の蛋白の有無の検査において、疑陽性(±)または弱陽性(+)の所見があると診断された場合に限る)
 A 特定保健指導
 特定保健指導は、二次健康診断の結果に基づき、脳及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる医師、保健師による保健指導をいいます。
 具体的には、(イ)栄養指導、(ロ)運動指導、(ハ)生活指導―――が行われます。
 二次健康診断は、1年度につき1回限り、特定保健指導は、二次健康診断ごとに1回に限ることとされています。同一年度内に一人の労働者に対して2回以上の定期健康診断を実施している事業場であっても、一次健康診断において給付対象所見が認められる場合に当該年度内に1回限りの支給となります。
 なお、二次健康診断等給付は、労災病院または都道府県労働局長が指定する病院もしくは診療所において、直接、二次健康診断及び特定保健指導を給付(現物給付)することにより行われます。
(3)請求手続き
 二次健康診断等給付を請求する場合には、「二次健康診断等給付請求書」(様式第16号の10の2)に所要事項を記載し、二次健康診断等給付を受けようとする病院などを経由して、請求労働者の所属する事業場の所轄労働局長あてに提出することになります。
 なお、請求は一次健康診断を受けた日から3カ月以内に行わなければなりません。
 

お囃子会 泉福寺ライブの前座

ふるさと 宮 まつり

 

 10 特別支給金
 労災保険では、業務災害及び通勤災害による傷病などに対して各種給付を行うほか、労働福祉事業として、被災労働者やその遺族の援護を図るため、各種の特別支給金を支給しています。特別支給金は、労災保険の本給付とは異なる位置づけですが、本給付と一体的なものとなっています。
 (1)特別支給金の種類
 特別支給金には、@休業特別支給金、A障害特別支給金、B遺族特別支給金、C傷病特別支給金、D障害特別年金、E障害特別一時金、F遺族特別年金、G遺族特別一時金、H傷病特別年金―――があります。
 このうち、@〜Cは「特別支給一時金」といわれるもので、D〜Hはボーナスなどの特別給与を算定基礎とする「ボーナス特別支給金」といわれるものです。特別支給金の請求は、原則として各々の保険給付の請求と同時に行うことになります。
 (2)休業特別支給金
 業務災害または通勤災害により、療養のため労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給されます。支給額は1日について給付基礎日額の20%となっています。
 (3)障害特別支給金
 障害等級に応じて、次に掲げる一時金が支給されます。
  障害等級第1級・・・342万円
 障害等級第2級・・・320万円
 障害等級第3級・・・300万円
 障害等級第4級・・・264万円
 障害等級第5級・・・225万円
 障害等級第6級・・・195万円
 障害等級第7級・・・159万円
 障害等級第8級・・・・65万円
 障害等級第9級・・・・50万円
 障害等級第10級・・・39万円
 障害等級第11級・・・29万円
 障害等級第12級・・・20万円
 障害等級第13級・・・14万円
 障害等級第14級・・・・8万円
 (4)遺族特別支給金
 被災労働者の遺族(遺族(補償)年金または遺族(補償)一時金を受ける権利を有する者)に対して、一時金として300万円が支給されます。その遺族が2人以上いるときは、300万円をその人数で除して得た額が支給されます。
 (5)傷病特別支給金
 療養の開始後1年6か月を経過した日においても傷病が治ゆせず、傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合に支給されます。支給額は、傷病等級に応じて次に掲げる額となります。
  第1級・・・114万円
 第2級・・・107万円
 第3級・・・100万円
 この場合、傷病特別支給金を受給した労働者が、傷病が治ゆし、障害特別支給金の支給事由が生じたとき、障害特別支給金の額がすでに受けた傷病特別支給金の額を超えるときに限り、その差額に相当する額の障害特別支給金が支給されるなど調整が行われることになっています。
 (6)算定基礎年額と算定基礎日額
 いわゆるボーナス特別支給金の算定の基礎となる特別給与は、給付基礎日額を算定するに当たって、その基礎から除外されているボーナスなど3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金をいいます。臨時に支払われる賃金は含まれません。
 算定基礎日額は、原則として被災日以前1年間に被災労働者が受けた特別給与の総額(算定基礎年額)を365で除した額をいいます。特別給与の総額が、給与基礎年額(給付基礎日額の365倍に相当する額)の20%に相当する額または150万円のいずれか低い方の額を上回る場合には、給付基礎年額の20%に相当する額または150万円のいずれか低い方の額が算定基礎年額とされます。これを365で除した額が算定基礎日額となります。
 (7)障害特別年金
 障害特別年金は、障害(補償)年金の受給権者に対して支給され、支給額は障害等級に応じて次に掲げる額となります。
  ・障害等級第1級・・・算定基礎日額の313日分
 ・障害等級第2級・・・算定基礎日額の277日分
 ・障害等級第3級・・・算定基礎日額の245日分
 ・障害等級第4級・・・算定基礎日額の213日分
 ・障害等級第5級・・・算定基礎日額の184日分
 ・障害等級第6級・・・算定基礎日額の156日分
 ・障害等級第7級・・・算定基礎日額の131日分
 (8)障害特別年金差額一時金
 障害(補償)年金の受給権者が死亡した場合に支給される障害(補償)年金差額一時金の受給権者には、障害特別年金差額一時金が支給されます。支給額は、障害等級に応じて定められた次の額からすでに支給された障害特別年金を引いた額です。
  ・障害等級第1級・・・算定基礎日額の1340日分
 ・障害等級第2級・・・算定基礎日額の1190日分
 ・障害等級第3級・・・算定基礎日額の1050日分
 ・障害等級第4級・・・算定基礎日額の920日分
 ・障害等級第5級・・・算定基礎日額の790日分
 ・障害等級第6級・・・算定基礎日額の670日分
 ・障害等級第7級・・・算定基礎日額の560日分
 (9)障害特別一時金
 障害特別一時金は、障害(補償)一時金の受給権者に支給されます。支給額は、障害等級に応じて次に掲げる額となります。
  ・障害等級第8級・・・算定基礎日額の503日分
 ・障害等級第9級・・・算定基礎日額の391日分
 ・障害等級第10級・・算定基礎日額の302日分
 ・障害等級第11級・・算定基礎日額の223日分
 ・障害等級第12級・・算定基礎日額の156日分
 ・障害等級第13級・・算定基礎日額の101日分
 ・障害等級第14級・・・算定基礎日額の56日分
 (10)遺族特別年金
 遺族特別年金は、遺族(補償)年金の受給権者に支給されます。支給額は、遺族(補償)年金の受給権者とその者と生計を同じくしている遺族(補償)年金を受け取ることができる遺族の数によって、次のとおりとなります。
  ・1人・・・算定基礎日額の153日分。ただし、55歳以上の妻又は厚生労働省令で定める障害の状態にある妻の場合は算定基礎日額の175日分
 ・2人・・・算定基礎日額の201日分
 ・3人・・・算定基礎日額の223日分
 ・4人以上・算定基礎日額の245日分
 (11)遺族特別一時金
 遺族特別一時金は、遺族(補償)一時金の受給権者に支給されます。支給額は、次のとおりとなります。
 (イ)労働者の死亡当時、遺族(補償)年金の受給資格者がいない場合…算定基礎日額の1000日分
 (ロ)遺族(補償)年金の受給権者がすべて失権した場合で、すでに支給された遺族特別年金の合計額(スライドが行われた場合は、スライドが行われなかったとした場合の額)が算定基礎日額の1000日分に満たない場合…算定基礎日額の1000日分からすでに支給された遺族特別年金の合計額を差し引いた額
 (12)傷病特別年金
 傷病特別年金は、傷病(補償)年金の受給権者に対して支給されます。支給額は傷病等級に応じて次に掲げる額となります。
  ・傷病等級第1級・・・算定基礎日額の313日分
 ・傷病等級第2級・・・算定基礎日額の277日分
 ・傷病等級第3級・・・算定基礎日額の245日分

07.11.9 特集 〜状況別・業務上災害認定のポイント〜
 業務中も私怨による暴行でのケガは業務外
 業務上災害と認められるか否かについては、各状況ごとに業務上災害と認定されるための一定の条件がある。例えば、他人の暴行による災害であっても、暴行の原因が業務にあり、業務と暴行との間に相当因果関係が認められる場合は、その負傷は業務上災害と認められることになる。
 労働基準法では、労働者の業務上の事由による負傷、疾病、障害、死亡などに対して、使用者に災害補償を行う義務を課している。
 そして、この使用者の災害補償義務を肩代わりする制度として、労災保険制度があるわけだ。
 労働者が業務によりケガをしたり、病気になったり、あるいは死亡した場合、その傷病などが業務上災害と認められれば、被災した労働者や遺族に対し、労災保険から各種の保険給付が行われる。
 このように、業務が原因と思われる災害にあった場合、その災害が業務上災害と認められるかどうかは、被災した労働者にとって大きな問題となる。
 それでは、労働者の被った災害が、業務上災害と認められるには、どのような要件が必要なのだろうか。ここでは、業務上災害の認定に関する基本的な考え方と、各状況ごとの認定のポイントについてみてみる。

 災害に業務起因性認められれば業務上に
 1.業務上災害認定の基本的考え方
 業務との間に相当因果関係が必要
 ある災害が業務上災害と認められるためには、業務と災害との間に、一定の因果関係がなければならない。
 すなわち、その災害に業務遂行性と業務起因性が認められることが必要とされる。
 業務遂行性とは、「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること」という。
 したがって、事業場内での業務に従事している場合はもちろん、出張中など事業場外で業務に従事している場合も業務遂行性は認められる。
 また、業務に従事していなくても、例えば、休憩時間中に事業場内にいる場合には、事業主の支配下にあるとはいえ、業務遂行性が認められることになる。
 一方、業務起因性とは、「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること」に伴う危険が現実化したものと経験則上認められることをいう。
 この「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にあること」とは、業務遂行性のことであるから、業務遂行性がない場合は、業務起因性もないことになる。
 例えば、スーパーのレジ係が、業務中に近所付き合いでトラブルになっている隣人から、そのトラブルを理由に暴行を受けてけがをした場合、その災害には業務遂行性は認められるが、業務起因性は認められないため(災害の原因が業務ではない)、業務上災害とは認められない。
 このように、業務上災害と認められるためには、その災害に業務遂行性と業務起因性が認められなければならない。
 そこで、以下からは、業務遂行性と業務起因性の有無の判断など、業務上災害の認定のポイントについて、災害発生の状況別にみてみることにしよう。
 状況別・業務上災害認定のポイント
 2.就業時間中の災害
 作業の中断中も業務遂行性が認められるケースも
 就業時間中の災害といっても、災害は自分が担当する作業を行っている最中にのみ発生するとは限らない。
 例えば、就業時間中にトイレに行く途中でケガをするケースなども考えられる。
 そこで、ここでは、就業時間中の災害を(1)作業中(2)作業の中断中(3)作業に伴う必要行為中(4)作業に伴う準備行為または後始末行為中(5)緊急業務中―――の5つの状況に分け、業務上外の判断についてみてみる。
 

     菊の花

     曲り家の秋

 

 1.作業中
 私的行為なければ原則業務上に
 労働者の作業中に発生する災害は、私的行為や恣意的行為などに起因するものでない限り、ほとんどが業務上災害と認められるといってよいだろう。
 それでは、労働者が、本来受け持っている業務ではない作業をしている間に災害にあった場合はどうなるのだろうか。
 この場合には、その作業に従事することについて、事業主などの業務命令があったかどうかが、一般的には判断のポイントとなろう。
 例えば、製造工場の事務の担当者が、たまたま、製造ラインの人員が不足したため、上司から製造ラインへの応援を命じられ、製造ラインでの作業中にケガをした場合は、本来担当している業務ではないが、製造ラインの応援をする旨の業務命令により仕事をしている際の災害であり、業務上災害と認められることになる。
              <参考1>
 業務災害と認定されるための条件
 業務上災害と認められるためには
 業務遂行性と業務起因性が認められることが条件
 業務遂行性
 労働契約に基づき、事業主の支配下にある状態を指す
 業務起因性
 労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が
 具体化したとみとめられるもの
 業務遂行性、業務起因性が認められるケース(太字)
 業務遂行性、業務起因性が認められないケース(細字)
 通常の作業中の負傷
 泥酔してトラックから転落した助手の死亡
 作業中ハブにかまれた配管工の負傷
 休憩中工場内でキャッチボール中に取り損ねたボールが顔に当たって負傷
 事業場施設の道路の 不備により転倒し負傷
 出張中、映画館で映画を見た帰りに転倒し負傷
 出張中の宿泊先の火災で負傷
 私的な怨恨がもとで、たまたま業務中にけんかになり負傷
 業務態度が悪い部下を注意した上司が、逆上した部下にその場で殴られ負傷

 2.作業の中断中
 トイレも業務に付随する行為
 就業時間中でも、例えば、トイレに行くとか、水を飲みに行くなど、作業を中断し、少しの間、仕事から離れることもある。
 このような行為は、業務行為そのものではないが、それが生理的必要によるものである限り、業務行為に付随している行為として、業務行為と同様に取り扱われる。
 しかし、一見生理的行為と思われるようなものでも、それが私的な目的による行為や恣意的な行動とみられるものであれば、その間の災害には、業務起因性は認められない。
 この点については、作業の内容、作業場の状況、作業管理の状況などを考慮して判断されることになる。
 例えば、事業場のビルが断水したため、事業場近くの売店などに飲料水を買いに行く場合は、生理的必要によるものとみることができるので、業務に付随する行為とみなされることになろう。
 一方、事業場内に水道や飲み物の販売機など設備があるにもかかわらず、事業場外のコーヒー専門店にテイクアウトのコーヒーを買いに出掛け、その途中で負傷したような場合は、私的行為あるいは恣意的な行動とみなされることになろう。
 3.作業に伴う必要行為中
 担当業務遂行上必要な行為か
 就業中の行為は、そのすべてが本来担当している作業ばかりとは限らない。担当業務以外で、また、業務命令がない場合であっても、それが仕事を行う上で必要または合理的な行為であると認められれば、それは業務行為に含まれることになる。
 この場合の「必要・合理的な行為」か否かの判断ついては、おおまかにいえば「普通の人ならばそうしたであろう」と認められるか否かということになろう。
 例えば、トラックで配送作業中に、狭い一本道で前方に他人の車が故障して停止していたため、トラック運転者が故障車を端へ寄せる作業を手伝っていて、けがをした場合について考えてみよう。
 故障車を排除する行為は、運転者の担当業務とはいえないが、配送作業の担当者として、故障車を排除しなければトラックが通過できず、作業が行えないという判断から、故障車の排除を行いけがをしたと考えることができる。
 そうすると、その運転者の行為は、担当業務の遂行上必要な行為とみることができ、その際のけがは業務上災害と認定されることになろう。
 一方労働者が、直接自分の業務とは関係のない他者の業務を善意で手伝う場合には、事業主の特別の業務命令があったとか、または、手伝うことに業務上必要性があったなどの事情がない限り、単なる善意行為とされ、その間の災害は業務上災害とは認められない。
 過去の事例では、電気修理工が他社の顔見知りの労働者の作業を手伝っている際に被災して死亡したケース(昭23・6・24 基収第2008号)や、トラックの車体検査のため検査場に行き同所のストーブの煙突外し作業を手伝って転落死したケース(昭32・9・17 基収第4722号)はいずれも業務外とされている。
 

    残り少ない紅葉

   白樺 一本で淋しそう

 

 <参考2>
 就業時間中の災害の業務上外の判断のポイント
 作業中
(1)その災害が作業中に発生したものなのか
(2)その災害が業務に起因するものか(私的行為、恣意的行為、業務逸脱行為などの間に発生したものかどうか)
 作業の中断中
(1)生理的必要による業務行為に付随する行為としてみることができる行為中の災害か
(2)労働者として避けられない反射的な行為中の災害か
 作業に伴う必要行為中
(1)その作業を担当する労働者として必要な行為中の災害か
(2)客観的にみて「普通の人ならばそうしたであろう」と認められる行為中の災害か
 作業に伴う準備行為または後始末行為中
(1)業務行為に通常又は当然に付随する準備行為または後始末行為中の災害  
  か
(2)単なる事業場施設の利用行為中あるいは単なる自由行動中の災害でない    
  か

 4.作業に伴う準備行為又は後始末行為中
 業務の延長と見られれば業務上
 業務を行うに当たり、始業前に着替え、機械器具の整備などの準備行為、終業後に機械器具の整備、洗面、手洗い、着替えなどの後始末行為を行っているケースもある。また、体が著しく汚れるような業務を行っている場合は、終業後に入浴するケースもあるだろう。
 これら準備・後始末行為についても、業務に付随する行為として、業務行為の延長とみることができる。
 ただし、始業前や終業後に行われる行為がすべて業務の延長となるわけではない。始業前・終業後に接続して行われる行為でも、業務行為に通常または当然に付随するもの以外はむしろ単なる事業場施設の利用行為か、単なる自由行動とみなされることになるからだ。
 この点については、作業の内容、作業場の状況、事業場の慣行などを考慮して判断されることになる。
 例えば、事業場内での入浴については、その浴場が労働者の専用のものかどうか、その作業に従事する労働者がおおむね全体として常時利用しているかどうかによって、後始末行為か、または単なる福利施設の利用行為かが判断されることになる。
 5.緊急業務中
 緊急業務中については、事業主の命令があった場合はもちろん、事業主の命令がない場合も、その業務が当該事業の労働者として行うべきものである限り、業務行為とみなされ、その間の災害は業務上災害となる。
 例えば、業務中に事業場が火事になり、その消火に当たる行為は業務行為とされる。
 ただし、特に必要がないにもかかわらず、労働者が善意で行った行為は、業務行為とはみなされない。
 過去の事例では、木材伐採作業現場主任が豪雨下での木材の流出をおそれて作業場に赴き行方不明となったケース(昭29・3・16 基収第120号)や、重油タンクに落ちた船主を救出しようとしてタンク内に落下して死亡したケース(昭34・12・26 基収第9335号)が、業務上災害とされている。
 一方、自らが居住している社宅の類焼防止作業中に感電死したケース(昭24・12・15 基収第4028号)は、事業場の緊急事態によるものではないとして業務外とされている。
 

    林道の木漏れ日

    上三依駅前の紅葉

 

 事業場施設の欠陥に起因する災害は業務上
 3 就業時間外の災害
 就業時間外であっても、労働者が事業場内にいる場合には、いまだ事業主の支配下にあるといえる。
 しかし、就業時間外である以上、労働者の個々の行為は私的行為であり、労働者の私的行為が原因の場合は業務起因性が認められない。しかし、事業場施設の管理や欠陥が原因であれば、業務起因性が認められ、業務災害となる。
 そこで、ここでは、就業時間外の災害を(1)休憩時間中(2)事業場施設の利用中――の2つの状況に分け、業務上外の判断についてみてみる。

 1 休憩時間中
 特別の場合以外は原則業務に
 休憩時間中も、労働者が、事業場内で行動している限り「事業主の支配下にある」こととなるため、業務遂行性は認められる。
 しかし、休憩時間中の労働者の行為は原則として私的行為とみなされるため、休憩時間中の災害には一般に業務起因性は認められない。
 なぜなら、休憩時間については、労働基準法第34条により、労働者に自由に利用させることが義務づけられているからだ。
 一方、休憩時間中の災害でも、事業場施設の管理あるいは欠陥に起因すると認められれば、業務上災害と認められることになる。
 例えば、休憩時間に事業場敷地内でキャッチボールをしていて、ボールを取り損ねてケガをしたような場合は、事業場施設の管理や欠陥に起因するものではないから業務起因性は認められない。
 一方、同様にキャッチボールをしていてケガをした場合でも、その場所のマンホールが会社の管理責任者のミスで開き放しになっており、そのため、マンホールに落ちてケガをしたような場合は業務上災害と認定されるといえよう。

 2 事業場施設の利用中
 食堂や娯楽施設などの利用中も
 就業時間外に、社員食堂で食事をするとか、社員用の風呂に入るなど、事業場施設を利用する行為には、いまだ事業主の支配下にあるといえ業務遂行性が認められる。しかし、就業時間外に災害が発生した場合は、それが、事業場施設の管理や欠陥に起因する場合、あるいはこれらと相まって災害が発生した場合に限り、業務起因性が認められる。
 例えば、就業時間外に社員用の風呂に入っているときに、ボイラーの火災によりケガをしたような場合には、事業場施設(ボイラー)の欠陥に起因する災害と認められ、業務上災害と認められることになるだろう。
 それでは、社員食堂の食事で食中毒になった場合はどうだろうか。
 この場合、社員食堂における調理について、会社が衛生管理上の責任を負っている場合には、その食事による食中毒は、会社の食事施設の欠陥や調理過程による衛生管理の不徹底によるものと考えられ、事業主の支配管理下による災害として業務上災害と認定されると考えられる。
 一方、社員食堂の運営を外部業者に委託し、衛生管理などもすべて業者に任せている場合は、その食事を原因とする食中毒は、業務上災害と認定される可能性は低いといえよう。

  <参考3> 就業時間外の災害の業務上?の判断のポイント
 休憩時間中
 (1) 食事のため事業場の外へ出ている間など事業主の管理下を離れている間の災害には業務起因性は認められない。
 (2) 休憩時間中であっても、事業場施設内での生理的必要行為、作業と関連がある各種の必要行為・合理的行為には業務遂行性が認められる。
 (3) 私的行為中の災害であっても、事業場施設またはその管理に起因する災害であれば、業務起因性が認められる。
 事業場施設の利用中
 (1) 事業場の建物、機械器具のほか、食堂、浴場、娯楽室や通勤用バスなどの事業場施設またはその管理に起因していることが証明されれば業務起因性が認められるが、この証明がなければ、原則として業務起因性は認められない。
 (2) 事業主の行う健康診断などの診断方法、治療処置などに起因して発生した場合は、業務起因性が認められる場合もある。
 

  只見地方の銀杏の黄葉

      只見湖

 

 出張先での通常の宿泊中の災害は業務上に
 4 その他の災害
 1 出張中
 出張過程全般に業務遂行性ある
 出張中は、業務の成否や遂行方法については、包括的に事業主に対する責任を負っていると考えられることから、原則として、出張過程全般について、事業主の支配下にあるものとして業務遂行性が認められることになる。
 自宅から出張先へ直行直帰するケースがあるが、このような場合も、一般にその過程全般に業務遂行性が認められると解されている。
 また、出張中は、出張業務そのものだけでなく、宿泊行為など出張に当然付随する行為も含め業務遂行性が認められるとされている。
 したがって、出張先の旅館などで通常の宿泊中に被災した場合、例えば、就寝中に火災で焼死したとか、旅館の食事で食中毒になった場合は、特別の事情がない限り、出張業務に起因する災害ということになる。
 一方、酒に酔っ払ってけんかをしてケガをしたとか、泥酔して旅館の階段から転落してケガをした場合は、積極的な私的行為・恣意的行為によるものとされ、業務起因性は認められない。

                 <参考4>
 出張中に発生した災害の業務上外の判断のポイント
 出張に発生した災害
(1)出張中は、その業務の成否や遂行方法などについて包括的に事業主に対する責任を負っているといえるため、特別の事情のない限り、出張過程全般に業務遂行性が認められる。
(2)出張中の個々の行為に際して発生した災害については、積極的な私的、恣意的行為などに基づくものでない限り、一般に業務起因性が認められる。
(3)宿泊地での滞在が長期間に及び、宿泊場所が居所としての性格を持つようになるなどその宿泊施設が住居というにふさわしいと認める場合は、その宿泊場所にいる間は業務遂行性は失われる。

 出張先で殺害されたケースも
 出張については、治安がよくない外国に出張に行き、現地で犯罪に巻き込まれるケースがある。
 判例では、中国(大連)へ出張中に宿泊先ホテルで強盗殺人で死亡したケースについて、業務上災害は出したものがある(鳴門労基署長事件 平14・1・25 徳島地判)。
 この事件では、@以前から北京や大連で日本人が被災者となる同様の事件が起きていたことA加害者の私怨など私的関係に基づくものでないことBホテル側の安全対策が不十分であったこと―――などから、このような強盗殺人などの被害に遇う危険性が高かったと判断されている。
 このほか、最近では、海外でテロに遇う危険性も高まっている。
 海外出張中にテロに巻き込まれた場合も、業務に内在する危険が現実化したものと認められる場合は、業務上災害と認定されることになる。
 この危険性が内在していたかどうかは、国内、国外を問わず、個別具体的に判断されることになる。

 事業場専用バスの通勤中の事故は業務上
 労働者の通勤途上の災害については、一般に事業主の支配下にあるとはいえないので、業務上災害ではなく、通勤災害となる。
 ただし、通勤途上であっても、@事業場専用の交通機関で出退勤を行う場合A出退勤の途中で業務を行う場合B突発事故などによる緊急用務のため予定外の緊急出勤をする場合―――については、一般にその間の災害は業務上災害となる。
 例えば、@については、具体的には、労働者を事業場専用のバスで駅から工場まで送迎しているような場合をいう。この場合、バスに乗車している間に交通事故でケガをした場合は、通勤災害ではなく業務上災害となる。

 2.運動競技会や宴会など会社行事に出席中
 一定の条件満たせば遂行性ある
 運動競技会に出場中に負傷したケースについては、一定の条件を満たせば、業務遂行性が認められる。
 具体的な判断基準については、@事業を代表して参加する対外的な運動競技会A同一企業に属する各事業相互の運動競技会B事業場内の運動競技会C運動競技会出場のための準備練習中―――の4つに分け、それぞれ業務遂行性を認めるための基準が示されている(<参考5>参照)
 例えば、都市対抗野球の全国大会に出場する場合は、一般に参考5の「1.事業を代表する対外的な運動競技会」の条件を満たすことができることになるので、業務遂行性が認められることになる。
 一方、休日に会社内の有志が集まって野球の試合を行い、その試合でケガをした場合、会社が特に参加の強制も行っておらず、また、賃金も支払われていないような状況であれば、業務外と判断されるだろう。

              <参考5>
 運動競技会などでの災害の業務上外の判断のポイント
 1.事業を代表する対外的な運動競技会
 次の条件をすべて満たす場合に業務遂行性を認める
(1)当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業の運営に社会通念上必要とみとめられること
(2)当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業主の積極的特命によってなされたこと(次の@、Aの条件を満たすことが必要)
 @ 運動競技会出場につき、通常の出張の場合と同様に出張命令が出され、かつ、旅費、日当が支払われていること
 A 運動競技会出場当日は、通常の出勤と取り扱われていること
 2.同一企業に属する各事業場相互の運動競技会
 次の条件をすべて満たす場合に業務遂行性を認める
(1)当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業の運営に社会通念上必要と認められること
(2)当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業主の積極的特命によってなされたこと(前記1の(2)の条件を満たすことが必要)
 3.事業場内の運動競技会
 次の条件を満たす場合に業務遂行性を認める
(1)当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業の運営に社会通念上必要と認められること
(2)当該運動競技会に労働者を出場させることが、事業主より強制されていること(次の@、Aの条件を満たすことが必要)
 @ 当該運動競技会が事業所所属の全員の参加により行われていること
 A 運動競技会出場当日は、通常の出勤と同様に取り扱われ、出場しない者については、欠勤として取り扱われていること
 

     黄葉と紅葉

      緑を残している

 

 4.運動競技会出場のための準備練習中
 前記1、2により、運動競技会への出場のための準備練習については、その準備練習が事業主の積極的特命によって、通常の就業時間中に行われた場合に限り、業務遂行性が認められる(積極的特命があったと認められる条件は、前記1の(2)の条件を満たすことが必要

             幹事役などの災害は業務上に
 労働者が、宴会、慰安旅行などの社内の催しに参加する場合、その催しの企画、運営などが本来の職務になっている者(庶務係の社内行事の世話など)ならば、業務遂行性は認められるが、そうでない者については一般に業務遂行性は認められない。
 例えば、社員旅行の際に、世話係として同行していた庶務課員が体調が悪くなった者の介抱をしていて階段から落ちてケガをしたというような場合は、業務上災害と認められることになろう。
 一方、例えば、会社の忘年会で、幹事役でもない者が酔って転んでケガをした場合は、業務遂行性は認められず、業務外と判断されるだろう。

                    <参考6>
 宴会、社内旅行など行事出席中の災害の業務上外の判断のポイント
 宴会、社内旅行など行事出席中
(1)その催しの企画、運営などが本来の職務になっている者(営業部員の取引先との接待、庶務課員の社内行事の世話など)ならば、一般に業務遂行性が認められる
(2)(1)に該当しない労働者の場合、その催しの主催者、目的、内容、参加方法、運営方法、費用負担などから総合的に判断するが、特別の事情がない限り、一般に業務遂行性は認められない
(3)この種の催しに参加すること自体に業務遂行性が認められる場合でも、参加している間の個々の行為がすべて業務行為とみなされるものではなく、恣意的行為などによる災害は、業務起因性は認められない。

 3.他人の暴行による災害
 業務との相当因果関係が必要
 労働者が他人の暴行によって負傷した場合、暴行の原因が業務にあり、その業務と暴行による負傷との間に相当因果関係が認められる場合には、その負傷は業務上災害と認められる。
 ただし、一見、暴行が業務に起因しているようにみえても、実際は、当人同士あるいは加害者の一方的な私怨が原因である場合は、業務上災害とは認められない。
 また、労働者が職務上の限度を超えて加害者を刺激あるいは挑発したような場合は、恣意的に自ら危険を招いたものとして、業務上災害と認められない可能性が高い。
 暴行と業務との相当因果関係の有無の判断については、暴行の原因となる業務上の事実と暴行との間の時間的・場所的関連がどうだったかなどもポイントとなる。(<参考7>参照)
 事例では、警備員が寮に侵入してきた暴漢に襲われて死亡したケース(昭24・9・12 基収第5119号)勤労係長が勤務態度が悪い労働者を注意したところ、その場で殴打されたケース(昭23・9・28 基災基発第176号)は、いずれも業務上災害と認められている。
 なお、勤労係長のケースは、部下の上司に対する暴行だが、上司による部下への暴行についても、業務との相当因果関係が認められれば、業務上災害と認められることになろう。

                  <参考7>
 他人の暴力による災害の業務上外の判断のポイント
 他人の暴行により発生した災害
(1)災害(暴行)の業務にあって、当事者間に私怨がないなど、業務と災害との間に相当因果関係が認められる場合は、業務起因性が認められる
(2)業務起因性の有無については、主に次の@、Aの点を考慮して判断される
 @ 加害行為が明らかに業務と関連しているか、否か、私怨などがなかったか否か
 A 加害行為の原因となる業務上の行為と加害行為との時間的・場所的関連があるか否か
 

   茸狩りに歩く林道から

      冬支度の薪

 

     4.天災地変による災害
天災地変が原因なら業務外に
 労働者が、地震、土砂崩れ、火山の噴火などの天災地変によりケガをしたり、死亡した場合は、たとえそれが業務中であっても、一般的には業務災害とは認められない。
 というのは、天災地変は、不可抗力的に発生する自然災害であり、事業主の支配下・管理下にあるか否かに関係なく、等しくその危険があるといえ、事業主に災害発生の責任を課すのは困難だからだ。
 ただし、天災地変による災害でも、同時に災害に被りやすい業務上の事情(業務に伴う危険)があり、それが天災地変を契機として具現化したものと認められる場合は、その災害は業務上災害と認められることにある(昭49・10・25 基収第2950号)。
 平成7年に発生した阪神・淡路大震災の際にも、この通達の基準によって、業務上外が判断されている。
 例えば、山間地にあるゴルフ場で、豪雨の下で業務を行っていたキャディが落雷にあった場合などは、作業環境そのものに危険があったものと考えられ、業務上災害と認められる可能性が高いといえよう。
 一方、地震による大津波で事業場の周囲を含む町全体が水没し、そのため、事業場も水没してしまったような場合は、天災地変そのものが災害の原因であり、業務上災害とは認められないこととなろう。

                <参考8>
 天災地変に際して生じた災害の業務上外の判断のポイント
 天災地変に際して発生した災害
 (1)天災地変そのものは業務と無関係な現象であるため、業務中に発生したものであっても、一般に業務起因性は認められない。
 (2)ただし、天災地変に際して発生した災害も、同時に天災地変による災害を被りやすい業務上の事情があって、その事情とあいまって発生したものと認められる場合は、業務に伴う危険が現実化して発生したものして業務起因性が認められる
 (3)業務起因性が認められる例としては、土砂崩れ、落雷、噴火、雪害などの天災地変が発生する危険性の高い作業環境、作業条件、事業場施設などのもとで被災した場合などが挙げられる

 
 ※下記画像テーブルの説明

このテーブルの下にある画像テーブルはサイズ指定なしのテーブルです。
画像サイズそのままで表示を行います。
ホットニュースは横幅最大640ピクセルとなっておりますので、
横640ピクセルを超える画像は掲載しないで下さい。
縦はいくら長くなっても大丈夫です。

※この説明文章が不要になりましたら、削除して下さい。

 
 
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